医師が患者を診断してコロナウイルスの検査が必要であると判断したのだが、保健所から検査を断られたというケースが報道されている。国会の審議でも問題になった。
中国以外では日本・韓国・イタリアでコロナウイルスが拡散している。日本で学校の閉鎖やラグビー、サッカー、大規模な催しの中止などに躍起になっているさなか、気になる日韓比較をメディアが報じている。
韓国は3万人近い人のPCR検査を済ませたが、日本ではまだ2千人に届かないという。日本の医療体制の緊急対応能力の低さに唖然とする。
一方で、PCR検査で陽性と判断できても治療法が確立されておらず、対症療法しかないのだから、PCR検査に大きな意味があるわけではない。よく手を洗い、人ごみをさけ、熱が出たらしばらくの間は自宅で安静にして様子をみるしかない、という意見も流れてくる。
日本政府が25日に発表した新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の骨子は、国民に対して生活指導はするが、政府がいつまでに①PCR検査を韓国並みの能力に引き上げるのか②簡易検査キット開発発のメド③特効薬開発の時期④重症者用のベッド増床の目標など、政府のやるべきことについては、具体的な説明を避けている。
日本政府はコロナウイルス陽性者の数を巣やしたくないのであろう。オリンピック開催に影響が出るのを避けようとしている。政府は1日のPCR検査能力は3600人であるとしているが、実際に検査したのは1日900人に過ぎない。やればできるはずの検査態勢の強化に取り組んでいないのは、陽性者の数を増やしたくないからだ――と海外のメディアに書きたてられている。
たとえば、2月26日付の韓国『東亜日報』――。
「日本政府が新型コロナウイルス感染症の診断検査を制限的に実施し、感染者数が実際より大幅に縮小されているという指摘が出ている。医師であり医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは25日、東亜日報の電話取材に対して、『日本は大病院だけが重症患者に対する新型コロナの検査を行っている』とし、『医療保険で診療を受けることができる病院全てが検査を実施しなければならない』と強調した。また、『日本政府が開催を控えた東京五輪を意識して、日本国内で感染は蔓延していないと主張している』と指摘した」
いくら安倍政権だとはいえ、そこまではやるまい、と思うのだが、2013年9月、安倍首相にはオリンピック招致にあたって、フクシマは「アンダーコントロール」とブエノスアイレスで演説した過去がある。まだタンクからもれた汚染水が地下水にまじって海に流れている時期だった。
オリンピック開催のために二度目の「アンダーコントロール」のメッセージをなんとしても世界に伝えた気分なのだろうと、森友・加計・桜・検事長問題で増幅している安倍首相の人柄への疑いの目が、政権のコロナウイルス対策に対しても向けられている。
(2020.2.27 花崎泰雄)