もうすぐ12月だ。ウクライナ・ロシア戦争は冬の戦いに入った。ウクライナを支える米国のバイデン政権の足元はふらつき気味だ。米国からの武器援助の先行きを心配するウクライナにとってはつらい戦闘継続になる。
ガザではカタールの仲介でハマスとイスラエルが戦闘停止に入った。それぞれが拘束する人質と受刑者の解放が始まった。そのあと、平和のための交渉が始まるのか、イスラエルがガザ攻撃を再開するのか、正確な予想は専門家によってさまざまである。今回の武力衝突でイスラエル側の死者約1400人に対して、ガザの住民らの死者は約10倍の14,000人になる。パレスチナ人や周囲の国々のイスラム教徒のイスラエルに対する憎しみも増幅されたと考えられる。イスラエルはハマスの軍事部門の攻撃をイスラエルの存亡にかかわるものとみなして、ハマスの地下要塞への攻撃のために病院を襲撃した。このことがイスラエルに対する非難を高めた。
台湾で総統選挙が始まっている。来年1月13日が投票日だ。これを機に日本では、中国がいつ台湾に武力侵攻するのか、と専門家たちがあれこれ予想を口にしている。国際政治学者や戦略論のエキスパートが机上演習を滔滔と語ってくれるのだが、さて、台湾侵攻が北京にとってどんな利益があり、場合によってはどんな損失をもたらすのか、わかりやすく説明してくれる専門家は見当たらない。かつて日本帝国の海軍が真珠湾に奇襲攻撃をかけた時代と違って、台湾周辺に軍艦を終結させば、今ではその動きは手に取るようにわかる。そもそも中国軍が台湾侵攻の準備を始めたという情報はまだない。
アルゼンチンでは風変わりな右派経済学者が大統領選挙で勝利した。オランダでは反移民を唱える極右政党が下院選挙で躍進した。かつて中東やアフリカを植民費支配下に置いて甘い汁を吸った国がヨーロッパには少なくない。それが今や難民・移民の波に洗われている。
日本は安倍晋三氏が首相になっとき、ヨーロッパのメディアは安倍氏を右翼ナショナリストだと称した。その評判にたがわず、安倍氏は憲法の考え方に一風変わった解釈を加え、日本の防衛を増強し、米国の世界戦略に寄り添った。現在の岸田政権もそれと変わらぬ対米追従路線を走っている。安全保障環境が激変したと唱えて防衛予算を増やそうとするが、その金をどう工面するのか、はっきりと示すことができないでいる。北朝鮮は軍事偵察衛星の打ち上げに成功した。
世界はキナ臭くなっていると岸田政権は言うが、自らの政権基盤の劣化についてはのどかな認識しか示さない。メディアの世論調査では内閣支持率が底辺をさまよっている。政権が任命した副大臣などが次々にスキャンダルで辞任せざるを得なくなった。そのうえ、今度は自民党の派閥のパーティー券売り上げにまつわる不祥事である。政治資金規正法では政治資金パーティーで20万円以上を購入した個人・団体は報告書に記載が義務付けられている。11月25日の朝日新聞朝刊によると、不記載は清和会の約1900万円、志帥会の約900万円、平成研究会の約600万円、志公会の約400万円、宏池政策研究会の約200万円だったと、政治資金オンブズマン代表の上脇博之教授が告発している。朝日新聞の報道では、こうした派閥のパーティー券売り上げ競争に駆り出されるのに嫌気がさして、派閥から離脱する議員も少なくないそうだ。
パーティー発行は利益率の高い金集め策である。売上総額から会場費などの経費を差し引いた純益(派閥収入分)には課税されないことになっている。いわゆる議員まる儲けの好例だ。なぜこんなことが可能なのか。それは規正法を創ったのが議員だったからだ。
(2023.11.25 花崎泰雄)