安倍晋三首相の息のかかった自民党の1-2年生議員らが、これまた安倍首相の肝いりでNHK経営委員になったこともある百田尚樹氏を招いて会合を開き、「沖縄の2つの新聞新聞社はつぶさなあかん」という怪気炎を拝聴し、出席議員も「マスコミを懲らしめるためには、経団連に働きかけて広告を減らすのが一番」などと、これまた怪気炎で応えた。
この件は6月26日の国会審議で問題になった。安全保障関連法案の手詰まり感が強まり、政府与党は国会会期の大幅延長でしのごうとする。その政府与党の足をさらに引っ張る、いわゆる「友軍の砲撃」(friendly fire)事件である。
ところで先ごろ、日本記者クラブで、山崎拓、亀井静香、藤井裕久、武村正義の4氏が共同記者会見を行い、安保法制反対論を開陳した。
その会見で、山崎氏がそうとうキツイ発言をしている。その要旨。
今の自民党は一期生・二期生が大半で、安倍総理自身も昭和30年生まれだ。戦争を知らない世代で、平和と安全が空気や水と同じように、無償で手に入れることができるという感覚を持っている。そういうわけで、安全保障問題に関心が薄い。この安保法制について、ほとんど党内で議論が成り立たない状況になっている。安倍一強体制下で、ヒラメ状態になって、みんな上を見ている。
百田氏を呼んで一杯機嫌で怪気炎を上げるに近いような居酒屋風会合を開く暇があるのなら、山崎・亀井・藤井・武村の4長老を招いて丁々発止の論戦を楽しんだらよかったのに。声をかけても、4氏が来てくれるかどうは不明であるが、「ヒラメ」呼ばわりした山崎拓氏には、何とか無理を言って出席を求め、十字砲火を浴びせればよかったのに。もっとも、それをやるだけの、知力も胆力もなかったので、お仲間の百田氏を呼んだのであろうが。
それはさておき、米国がベトナム戦争で敗北したのは、6万近い米兵の死に、アメリカ社会が耐えきれなくなったためだ。日本は戦後70年間、当然のことではあるが、戦死者を出していない。安保法制が整い、やがて海外に出かけた自衛隊員が戦死(KIA, killed in action)する事態になった時、70年間戦死者を見ることのなかった日本社会が、どの程度までの戦死者数に耐えることができるのであろうか。自衛隊を派遣することを決めた内閣は、どの程度の戦死者数で、退陣に追い込まれるのだろうか。
(2015.6.26 花崎泰雄)