国会には睡魔が巣くっているのだろうか。
議事進行中に国会議員が居眠りをする姿はたびたび中継で映し出されてきた。議場での論戦より、場外交渉が得意なセンセイたちはつい睡眠不足になりがちだ。自動車や列車や航空機の運転手・運転士・操縦士の業務中の居眠りには目を三角にする国民も、国会でだらしなく居眠る議員たちを嘲笑しつつも許してきた。国の針路を決める重要な会議中のことなのだがね。
通常国会が始まった。1月30日午後、衆議院本会議場での代表質問のNHKの中継を見ていたら、玉木雄一郎・国民民主党代表の質問中、玉木氏を映していたNHKのカメラが切り替えられ、安倍晋三首相を映しだした。
瞑想していたのか、居眠りしていたのか、目を瞑っていた理由は本人に聞かなければわからないが、なんだかボンヤリとした安倍首相の表情だった。しかし、なんとなく殺気のようなものを感じたのか、彼は閉じていた目を開いた。するとNHKは映像を切り替えて玉木氏に戻した。
昼食後の時間帯は睡魔に襲われやすい。大学の講義でも午後の講義では居眠りする学生が多い。本会議場での代表質問と答弁はいってみれば芝居の脚本を読み合っているようなものだ。答弁する側は質問の内容と答弁の内容をあらかじめ知っているわけだから、逐一質問演説の声を追う必要はない。そういう安心感もあって、質問演説が子守唄のように聞こえるのかもしれない。メディアだけでなく世の中の多くの人も、そういう前提で国会中継を行い、また見ているのであるから、政治家たる者、間違っても議事進行中に瞑想したり、瞑目したりして、報道のカメラに焦点をあわせられるような事態は避けなければない。
筆者の記憶に間違いがなければ、2015年3月の、シンガポール元首相リー・クアンユー氏の国葬に参列した安倍晋三首相が式場で、黙祷だったのか瞑想だったのか、瞑目している姿をカメラで捉えられ、日本の安倍首相がリー・クアンユー氏の国葬で居眠った写真として世界に出回った。
日本人は地下鉄車内で瞑想や居眠りすることで有名だが、最近はスマホ操作に忙しく、居眠る姿が減ったような感じがする。瞑目したらスマホのディスプレーが読めない。
(2019.1.31 花崎泰雄)