Podium

news commentary

気合の入れ方

2019-09-28 19:09:18 | 政治

国連の気候セッションで16歳の少女が語気鋭く演説した。

"You have stolen my dreams and my childhood with your empty words. And yet I'm one of the lucky ones. People are suffering. People are dying. Entire ecosystems are collapsing. We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money and fairy tales of eternal economic growth. How dare you!

また、こうも言った。

"For more than 30 years, the science has been crystal clear. How dare you continue to look away and come here saying that you're doing enough, when the politics and solutions needed are still nowhere in sight."

"You say you hear us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I do not want to believe that. Because if you really understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And that I refuse to believe."

少女は “I do not want to believe that.”と言った。演説内容の深刻さ、場所柄をわきまえて、”I don’t wanna believe that.”とは言わなかった。Basicな言葉の強さが心を打つ。

この国連セッションに参加のためニューヨーク市に来ていた某国の環境大臣は、記者会見に英語で臨み、次のように語ったとロイター通信が伝えた。

“In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it’s got to be fun, it’s got to be cool. It’s got to be sexy too.”

環境大臣が使った have got toという用法は、gottaほどくだけすぎではないが、それでも、mustとはニュアンス上の違いがある。

BBCに聞いてみよう。

Must, have to and have got to are all used to express obligation or the need to do something.

They can be used interchangeably in the present tense, except that must suggests that it is the speaker who has decided that something is necessary, whereas have to and have got to suggest that somebody else has imposed the decision.

Have got to is characteristic of very informal speech. Have to sounds slightly more formal.

Compare the following:

•I must clean the house before mum gets back. I want her to find it all neat and tidy.

•Sorry, I can't come out now. I've got to tidy up my room before I'm allowed out.

•He has to attend the clinic every two weeks. He's really quite seriously ill.

•You must come and visit us again soon. It's ages since we saw you.

   ( http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/youmeus/learnit/learnitv127.shtml

BBCの語法ご意見番に従えば、環境相は自らの意思を、折り目正しく、はっきり表明させるためmustを使うべきであった。以上、環境大臣のための英文法でした。

Fun, cool, sexy の用語法の妥当性については、某国の野党が国会で追及するとしているので、そちらにゆだねよう。

 

(2019.9.28 花崎泰雄)

 

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泡と消えゆく

2019-09-23 19:19:45 | 国際

9月23日は秋分の日。今朝の朝日新聞にミュンヘンの10月ビール祭りが始まったという記事が載っていた。インターネットで横文字の新聞をながめると、ものすごい人が押しかけてきて、オープン早々いくつかの会場入場制限が行われたそうだ。

朝日新聞の記事によると、このビール祭りに内外から期間中に600万人もの押し客が寄せてくるそうだ。600万人というと、2020年のオリンピックの観客数に近い数字ではないか。

これだけの人がジョッキに盛り上がる泡をいとおし気にながめ、口の周りに泡をつけながら飲み、トイレに行ってビールの匂いのするおしっこをする。

朝日新聞の記事によると、環境にやさしいビール祭りを掲げ、「会場では自然エネルギー由来の電力を使うほか、再利用できる食器やジョッキを使うなどしており、過去10年でごみの量は約3分の1に減ったという。ビールジョッキを洗う水もトイレの洗浄に使って節約している」という。

筆者は酒類をたしなまない。日本酒は臭く、ワイン――特に赤ワインはえぐい。ビールは苦い。会場の便器の健闘を祈る。

 (2019.9.23  花崎泰雄)

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島田・丁髷の勧め

2019-09-17 21:58:49 | 政治

最近の朝日新聞にこんな記事が載っていた。

「朝日新聞社の全国世論調査(9月14、15日実施)で、安倍晋三首相の次の自民党総裁にふさわしいと思う人を聞くと、小泉進次郎氏が22%と最多で、石破茂氏の18%が続いた。河野太郎氏と菅義偉氏が共に8%、岸田文雄氏は6%だった」

同じころ毎日新聞に載った記事。

 「森喜朗元首相は11日、小泉進次郎氏が環境相として初入閣した今回の内閣改造について『とりもとったり、受けも受けたりだ。安倍晋三首相は深い。なかなか円熟してきた』と東京都内で記者団に述べた。小泉氏への期待を問われると『未知数だが、成功してもらわないと困る』と語った。(共同)」

戦後の日本の歴史を振り返ると、自民党がほぼ政権を独占してきた。日本では変化を極度に嫌う文化が優勢だから、今後も自民党の政権掌握が続く可能性が高い。つまりは、ポスト安倍の首相候補として小泉進次郎氏が有力になったということである――一新聞の世論調査ではあるが。

 「おもてなし」タレントの妊娠を機に、彼女の夫になると首相官邸でアナウンスしたことが進次郎人気の急上昇につながり、ついでに官邸を結婚発表記者会場に提供した安倍政権の浮揚にも効果があった。昔も国会議員同士が恋愛して、妊娠という「厳粛な事実」を理由に結婚した例がある。一方は既婚者で子どもがいた。園田天光光・直の両氏である。当時は大きな話題、あるいはスキャンダルになったが、だからといって、天光光氏あるいは直氏を首相にという声は上がらなかった。

 トランプ氏のワシントン、ジョンソン氏のロンドンと時をおなじくして、安倍氏の東京も政治的バーレスク劇場になったということであろう。

 小泉進次郎氏は環境相になったのだが、環境相になるにふさわしいどのような見識を持っているのかという点について、森氏は歯牙にもかけなったし、新聞は伝えようとしないし、有権者は知ろうともしない。永田町の政治家も、政治ニュースを報道する記者たちも、省庁の長のポジションにつく人の能力や見識ではなく、長の椅子をめぐる政府機構内の権力の座の争奪戦にもっぱら関心を寄せている。

徳川時代の日本は徳川家を頂点にした諸大名の集合体で、諸大名はそれぞれの支配地で家産制国家の体制を敷いていた。大名の支配地・藩は将軍から与えられた所有物で、それを守るのが大名を取り巻く家産官僚だった。諸大名は将軍家の家産官僚で、それぞれの藩の藩士は大名の家産官僚だった。自民党総裁は日本国首相になり、総裁に従う議員が各省庁の役職者に就任して家産官僚に似たようなものなり、それぞれの議員の選挙区では、地方議員や地元有力者が議員を支えている。自民党議員とその中核になっている世襲政治家グループ、政府官僚が自民党ファミリーを形成している。そのファミリーの維持が政権の第1の目標である。政権の維持によって彼らは日本を所有できる。人民よりも中国共産党を守ることを優先させているお隣の国と、どこか似ている。

第2次大戦後、占領軍が新しい憲法を作り、デモクラシーという考え方を紹介してくれたのだが、どうやらこの国人たちは外来思想とは肌が合わないらしい。家父長制家族国家の政治が好みのようである。「ニッポン株式会社」という集団主義的な言葉を流行させた時代があった。その集団主義に加えて、いまでは上意下達・命令と服従の風潮が著しくなり、「ニッポン前垂れ商店」の時代が始まっている。

 そうだねえ――かつてロンドンやキャンベラ、返還前の香港などでは、裁判官、検事、弁護士が鬘を着用していた。それが職業上のしきたりだった。日本の国会でも議員に島田や丁髷の鬘の着用を義務づけることを勧める。自分たちのやっていることの時代錯誤性を、時々は議事堂内のトイレの鏡をのぞいて自覚するよすがとして。

 (2019.9.17 花崎泰雄)

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