「天罰」発言を撤回して謝罪したはずの東京都の石原慎太郎知事は、3月26日の読売新聞電子版によると、25日、福島市へ行って佐藤雄平知事を訪ね、「東京はできるだけのことをやるから、おっしゃってください」と最大限の支援を約束した。そのあと、東日本巨大地震に関連し、「天罰」と発言したことについては、「片言隻句をとらえて批判するのは報道として卑劣だ」としながらも、「福島県民に罪はない。国民全体の罪だ」と釈明した。
細かいことを言うようだが、「①国民全体の罪である②福島県民に罪がない」という、2つの事実は同時に成立しうるか? 成立しうるのは、福島県民が日本の国民ではない場合だ。このような粗雑な言語表現しかできない人が「片言隻句をとらえて批判するのは報道として卑劣だ」と言うのであれば、報道側は「老いの繰り言はいい加減にしてくれ。八十近い前頭葉の退化した老人に政治を任せる時代じゃない」。そう言い返してやればいい。
「美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」。1975年の東京都知事選で当時42歳だった石原は72歳の現職・美濃部に挑戦して敗退した。その選挙で石原陣営に密着取材した沢木耕太郎がレポート『シジフォスの四十日』(『馬車は走る』文藝春秋所収)で、石原の演説を引用している。選挙戦第1日、新宿東口での第一声だったと沢木は書いている。
このレポートは今読み返しても沢木耕太郎というライターの優れた観察力を感じさせるものだ。石原陣営は河野洋平に応援を求め、河野と組んで72歳の美濃部に象徴される老人支配に対して果敢に挑む若い世代という図式を作ろうとした。
しかし、河野洋平はその要請を蹴った。ハト派といわれていた河野のグループは、タカ派といわれていた青嵐会の石原たちからがまんならない侮辱を受けていたこともあり、沢木の叙述では、次のように言って、河野洋平に石原への協力を思いとどまらせた。
「協力すれば、あるいは石原は当選するかもしれない……当選したあとの責任を、洋ちゃんあなたはとれるのか」
(2011.3.26 花崎泰雄)
細かいことを言うようだが、「①国民全体の罪である②福島県民に罪がない」という、2つの事実は同時に成立しうるか? 成立しうるのは、福島県民が日本の国民ではない場合だ。このような粗雑な言語表現しかできない人が「片言隻句をとらえて批判するのは報道として卑劣だ」と言うのであれば、報道側は「老いの繰り言はいい加減にしてくれ。八十近い前頭葉の退化した老人に政治を任せる時代じゃない」。そう言い返してやればいい。
「美濃部さんのように前頭葉の退化した六十、七十の老人に政治を任せる時代は終わったんじゃないですか」。1975年の東京都知事選で当時42歳だった石原は72歳の現職・美濃部に挑戦して敗退した。その選挙で石原陣営に密着取材した沢木耕太郎がレポート『シジフォスの四十日』(『馬車は走る』文藝春秋所収)で、石原の演説を引用している。選挙戦第1日、新宿東口での第一声だったと沢木は書いている。
このレポートは今読み返しても沢木耕太郎というライターの優れた観察力を感じさせるものだ。石原陣営は河野洋平に応援を求め、河野と組んで72歳の美濃部に象徴される老人支配に対して果敢に挑む若い世代という図式を作ろうとした。
しかし、河野洋平はその要請を蹴った。ハト派といわれていた河野のグループは、タカ派といわれていた青嵐会の石原たちからがまんならない侮辱を受けていたこともあり、沢木の叙述では、次のように言って、河野洋平に石原への協力を思いとどまらせた。
「協力すれば、あるいは石原は当選するかもしれない……当選したあとの責任を、洋ちゃんあなたはとれるのか」
(2011.3.26 花崎泰雄)