気がつくと髪の毛がずいぶんのびていたので散髪屋さんへ行った。
電話で予約して、予約の時刻きっちりに行ったのだが、少々待たされた。待合席のテーブルに日本経済新聞があった。新聞を開くと、イギリス政府がバンク・オブ・イングランドの新しい総裁にカナダ銀行総裁のマーク・カーニーを公募で選んだことにちなみ、日本も外国から新しい総裁を招いたらという記事が『フィナンシャル・タイムズ』に載ったことを紹介し、その手もあるなと同意する記事が載っていた。
一ひねりして嫌味をきかせたコラムではなく、普通のストレートな報道記事だった。それにしても変な記事で、来年4月に退く今の日本人の日銀総裁を外国人に変える手もあるなと書いていたわりには、外国人が日銀総裁になるとどんな利点があるのか、説明がなかった。経済専門の新聞にしては、ツイッター・レベルのお粗末な内容だ。
イギリスの新聞『ガーディアン』によると、マーク・カーニーは、イングランド銀行総裁に就任すると、年間48万ポンドのサラリー、25万ポンドの住宅手当、14.4万ポンドの年金掛け金など合計87.4万ポンド(1億1千万円余)の報酬を受けることになるそうだ。有名スポーツ選手にくらべると穏当な額だろうが、さて、日本銀行がそれだけの総裁報酬を出すことができるだろうか。
日銀総裁の年収は1998年に4000万円だったものが、5年後の2003年には3636万円に下がり、さらにその5年後の2008年には3576万円に、2012年には2396万円に落ち込んだ。日本の経済と財政の疲弊ぶりを見事に示す数字だが、こんな報酬では、程度のいい外国人日銀総裁は見つからないだろう。
外国人の日銀総裁を招へいする目的で日銀総裁の報酬をイギリス並みに引き上げようとすれば、それこそ日本政府は火中の栗を拾うことになる。火を見るよりも明らかなことだ。やはり冗談半分のコラムがお似合いの記事だった。
(2012.12.27 花崎泰雄)