Podium

news commentary

酷暑勉励

2024-07-28 22:47:51 | 社会

ひどい暑さである。外出をひかえ、ためらわずエアコンを使って危険を避けよ、とテレビが言う。エアコンの効いた部屋にいるとやがて鼻水が垂れてくる。テレビはパリのオリンピックと、日本の高校野球地方大会、日本のプロ野球、大相撲、アメリカ大リーグの大谷のホームランシーンなどスポーツであふれている。パリは東京や大阪より少し涼しく、雨も降っていたのでスポーツ選手はそれほど暑苦しくないのだろうが、それでも柔道の選手が失神している。高速鉄道網のサボタージュや詰めかけた観戦客でパリの住人は暑苦しい思いをしていることだろう。一方で運動を避けて冷房の効いた部屋にいるようにと勧めている日本のテレビが、他方で炎天下に土煙を上げる高校野球の死闘を伝える。その結果を載せて配達されてくる新聞は湿気を吸ってふにゃふにゃだ。しばらくはPodiumを閉鎖、安静につとめる。

(2024.7.28 花崎泰雄)

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酒と煙草

2024-07-20 22:51:24 | 社会

ロンドンとパリの間を英仏海峡の海底に掘ったトンネルを通って高速列車が走る以前のことだからずいぶん昔の話だ。パリからロンドンまでエールフランスの便に乗った。ちょうど昼時だったので、客室乗務員が軽食とワインのミニボトルを配った。客室乗務員は私の席のすぐ近くの中学生ほどの子どもにもワインのミニボトルを渡した。ワインの国だなあと、恐れ入った。そのころのフランスではワインやビールは16歳以上、家族同伴なら14歳以上で飲んでよろしいという規則になっていた。

まもなくパリでオリンピックが始まるが、19歳の日本の体操女子代表選手が飲酒と喫煙を咎められてオリンピック出場を辞退させられた。「日本代表チームとしての活動の場所においては、20 歳以上であっても原則的に喫煙は禁止する」「日本代表チームとしての活動の場所においては、20 歳以上であっても飲酒は禁止とする」と定めた日本体操協会の「行動規範」に違反したのが理由だ。

とはいうものの「行動規範」は「合宿の打ち上げ、大会のフェアウェルパーティー等の場合は監督の許可を得て可能とする 」としている。監督の許可さえあればTPOに応じで飲酒可能としている。

団体行動を前提とした行事で皆でいっしょに飲む酒は問題ないが、監督の許可なしに個人として飲酒した選手は処分をうけるようである。

(2024.7.20 花崎泰雄)

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合衆国憲法修正第2条

2024-07-15 23:53:42 | 国際

「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保蔵しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」。この条文が米国の憲法修正第2条に入れられたのは1791年のことである(『世界憲法集第3版』岩波文庫)。

1791年は日本の年号でいうと寛政3年、11代将軍徳川家斉の時代である。米国でも日本でも先込め式の単発小銃が使われていたころだ。米国で連発式の小銃が使われるようになったのは19世紀に入ってからである。

2024年7月13日の米国ペンシルベニア州バトラーで、元合衆国大統領で11月の大統領選挙の共和党候補者であるドナルド・トランプ氏が狙撃された。銃弾はトランプ氏の顔をかすめ、同氏は耳にけがをした。選挙集会に参加していた1人が巻き添えで死亡、2人が重傷を負った。使われた銃は殺傷能力の高いセミオートマチックのAR-15型ライフル。短時間に複数の銃弾を放った。狙撃者とトランプ氏の距離は100メートル以上あった。

この「7月の銃声」がこれから先の世界にどんな悪夢を呼び込むことになるのか。誰にもわからない。

トランプ氏の政治の舞台への登場が米国の分断をもたらしたのか、米国の分断を利用してトランプ氏が上昇気流に乗ったのか。歴史家の綿密な資料収集と分析が待たれる。

さて、ケネディ大統領が暗殺され、その弟のロバート・ケネディ氏も銃撃されて死んだ。レーガン大統領も銃撃されたが、負傷で済んだ。キング牧師も銃で撃たれて死んだ。ジョン・レノン氏も銃撃されて死亡した。2022年5月に米テキサス州ロッブ小学校で生徒19人と教師2人が殺された銃撃事件をはじめ、公共の場所での銃乱射事件がアメリカでは多発している。

アメリカの銃撃事件の最大の原因は銃が身近なところにあることだ。そしてアメリカ人の相当部分が、銃撃による流血と死は合衆国憲法の1791年の修正条文を尊重し維持するための犠牲であるとの考え方を受け入れているからである。

(2024.7.15 花崎泰雄)

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敵失頼みの失敗

2024-07-08 00:19:47 | 政治

退屈な都知事選挙だった。これといった哲学を持っているわけではないが、状況に合わせて身振り手振りを変えて見せる政治技術の持ち主である現職都知事を自由民主党と公明党が水面下で支援した。これに対して、自民党の裏金スキャンダルに助けられて少しばかり人気があがった立憲民主党の元参議院議員が無所属で挑戦し敗北した。

東京都の予算規模は大きいが、都知事は日本の安全保障政策や沖縄問題に影響力があるわけでもなく、日本経済の指針やもっかの円安対策を指示できるわけでもない。東京一極集中は長い期間にわたって深刻な問題であり続けているが、東京都自体ががこれといった具体的な解決方法を模索している様子はない。東京一極集中解消に動き出せば東京は東京の特別なステータスを失い始め、都知事の椅子は道府県知事のそれに毛の生えた程度のものになって行く。

そういうわけで、今回の都知事選の最大の政治効果は崩壊寸前にまで追い詰められている自民党政権への、相撲で言えば野党のぶちかましだった、蓮舫氏は参議院議員だった2009年の民主党政権で予算の事業仕分けでこんな発言をしたことがある。世界一を狙うスーパーコンピューター「京」の予算に関して「世界一になる理由は?」「2位じゃダメなんでしょうか?」

今回の都知事選挙では、現職の小池百合子氏に得票で激しく肉薄できれば、2位で十分だった。敵失で得た立憲民主党の勢いを党代表選へむけて持続させる弾みになるはずだった。

(2024.7.7 花崎泰雄)

 

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政権を変えられる国、変えられない国

2024-07-01 14:50:25 | 政治

互いをののしり合う老いたライオンの一騎打ち――バイデン現大統領とトランプ前大統領の双方にうんざりしている米国の有権者を「ダブルヘイター」という。日本の新聞に載っていた。失語症気味の現職と虚言癖丸出しの前職だから、ダブルヘイターの嫌悪感に同情する。民主党がバイデン大統領を説得して選挙戦から退かせる工作をしているとの報道もある。アメリカ政治の老化の兆候だが、日本で高みの見物というわけにはいかない。アメリカの政権とちかしい政権を持つ国の民は、米国の大統領選挙に投票はできないが、アメリカ人の選択の結果の影響にさらされる。

英国でも7月の下院選挙で保守党が大負けしそうだと日本の新聞が伝えている。保守党政権が退陣し、労働党政権が誕生する公算が大きい。経済的な得失より、大陸ヨーロッパとのしがらみをすて、大陸に制約されないという自尊心の方を優先した英国のEU離脱の判断の結末ともいえる。

フランスでは国民議会選挙でマクロン大統領の与党が、右翼勢力の国民連合に押されている。欧州議会選挙でフランスでは大統領与党が大敗したため、どちらかと言えば発作的にマクロン大統領が議会を解散して選挙に打ってでた。自業自得である。イタリアではすでに右翼が政権を握っている。ドイツでも右翼が勢力を強めている。若いころであれば興味津々の政治状況だが、世俗のろくでもない出来事を経験してきた身には、「明日は嵐」の天気予報を聞きながら夕暮れの空を眺める気分だ。

安倍晋三氏が首相を務めていたころ、安倍氏はしばしば外国のメディアや政治コメンテーターから右翼と言われてきた。安倍晋三氏(当時首相)は2013年2月15日、朝日新聞の記事によると、自民党本部で開かれた憲法改正推進本部の会合で講演し、「こういう憲法でなければ、横田めぐみさんを守れたかもしれない」と改憲の必要性を訴えた。米国のトランプ氏は「もし私が大統領だったとした、ロシアはウクライナに攻め込まなかった」と先ごろの選挙運動で言った。夜郎自大の発言で笑止千万だが、安倍氏の場合は横田めぐみさんを引き合いに出して憲法改正を急がせようとした。現行憲法では市民を守れない、その理由が省略されてところは、トランプ氏の法螺話と同じ作りである。

アベノミックスという言葉が存在感を失い、日銀総裁が黒田氏から植田氏に代わり、1ドルが160円という円安時代が始まった。この円弱はアベノミックスの後遺症――決定的な日本経済の沈没を象徴しているのではあるまいか。さらに、森友学園、加計学園、新宿御苑の桜を見る会、お気に入り検察官の定年延長のごり押し、内閣法制局を抱き込んでの安全保障関連の憲法解釈の変更、派閥の政治パーティー券をめぐるピンハネやキックバックなど、安倍政治の時代に日本の政治倫理は瓦解した。

都知事選のポスターが風俗営業法違反の疑いがあると警察が党首に警告する珍奇な現象が起こるような社会になってしまった。蒸し暑い梅雨の不快指数が跳ね上がっているが、これから都知事選挙の期日前投票に行って、自民党衰退につながりそうな候補者の名前を書こうと思う。

(2024.7.1 花崎泰雄)

 

 

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