こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

息子のごっそ

2015年04月22日 09時35分50秒 | 文芸
息子のごっそ

「この幕の内がええわ」
「野菜の煮物が多いのにせな」
「卵焼きも好物なんでしょ」
 例年母の火が近づくと、カタログを前に夫婦そろって喧々諤々し頭をひねる。数年前までは服や履物が中心のプレゼントだったが、ここ数年、ちょっと張り込んだ高級な幕の内弁当に替わった。
 母親は八十半ば、足腰の衰えは隠しようもない。最近はめったに外出もしなくなった。しかも三年ほど前に大手術を受け長期の入院を余儀なくされた。現在は回復しているが、もう食べることと家族の会話ぐらいしか楽しみはなくなっている。若い頃から美味しいものに目がない健啖ぶりは、年齢ぐらいでは止まないようだ。
 そこで母の日の贈り物は『特性幕の内弁当』がお定まりとなった。実はわたしの仕事先は弁当仕出し会社の製造調理部。すべてにわたって好都合である。といってもそれだけじゃない。
「お前が作ってくれたごっそ(ご馳走)は、世界でいっちゃん(一番)美味いわ。ほんまに美味しいわ」
 喜色満面で喜んだ母のひと言が決定的だった。以来、息子の(?)特製幕の内弁当は、母の日の出番をいまや遅しと待つようになった。
 さあ今年も腕を振るうぞ!
(平成16年2月23日)

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