翌日 面会に訪れる。
みきさんは 療養室のベッドに臥せておられた。
ベッド脇に座ると、彼女は左側を向きなおり、
「家の水が飲みたい。嫁に水を持ってくれるように話して下さい」と
微かな声で私に話す。
最期にせめて我が家の水が飲みたいという、切なるみきさんの思い。
長男が面会に来ないのも
みきさんは不満を抱いていた。
老人保健施設を後にし、その足で谷川さんの家に寄った。
長男嫁から予想もしなかった話がされ、その話の内容に私は驚き、
谷川家族が抱えている問題の深刻さを初めて知った。
それは、71歳になる長男は、末期癌を患い医科大学付属病院に入院中にあり、
長男嫁、孫嫁たちは交代で看病していた。
家族にしてみれば、いま、弱くなってきたみきさんを
家に連れて帰る訳にはいかない。
しかし、みきさんは誰からも、
息子(長男)が、癌であることを知らされてはいなかった。
ただ、みきさんはわが家に帰り
施設のベッドのうえではなく(自宅の)畳の上で
臨終を迎えることを願っていた。
みきさんは 療養室のベッドに臥せておられた。
ベッド脇に座ると、彼女は左側を向きなおり、
「家の水が飲みたい。嫁に水を持ってくれるように話して下さい」と
微かな声で私に話す。
最期にせめて我が家の水が飲みたいという、切なるみきさんの思い。
長男が面会に来ないのも
みきさんは不満を抱いていた。
老人保健施設を後にし、その足で谷川さんの家に寄った。
長男嫁から予想もしなかった話がされ、その話の内容に私は驚き、
谷川家族が抱えている問題の深刻さを初めて知った。
それは、71歳になる長男は、末期癌を患い医科大学付属病院に入院中にあり、
長男嫁、孫嫁たちは交代で看病していた。
家族にしてみれば、いま、弱くなってきたみきさんを
家に連れて帰る訳にはいかない。
しかし、みきさんは誰からも、
息子(長男)が、癌であることを知らされてはいなかった。
ただ、みきさんはわが家に帰り
施設のベッドのうえではなく(自宅の)畳の上で
臨終を迎えることを願っていた。