老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1055;或る老人の呟き

2019-04-13 16:36:03 | 阿呆者
或る老人の呟き

時間は人間の生命とは関係なく
無情に時を刻み続ける
時間は無限であり流れる河に似ている
逆戻りすることはできず 只管流れ往くだけ

自分の生命とは無関係に
死は刻々と背後から忍び寄り
残命はどのくらい有るかは
神様だけが知る

老いに入ったばかりで
まだ死は他人事のように映っている自分がいる
それでもときどき
ふと、後何年生きられるか、と・・・・

老いに入ると
人生は引算になり
85歳まで生きれるとしたら
「後18年」と頭のなかで浮かんでしまう

残命は意外と少ないことに気がつき
慌てはじめた自分
還暦を過ぎ6年経過しても未だに
生涯やり遂げた仕事はこれだ、と誇れるものは何も無い

老いに入り
自分は焦り
今更 何を為すべきか、と思うも
何事も成就しなかった

自分にとり
時間は砂時計のようなもの
最後の一粒の砂が 
落下したとき終焉となる

それまでに
限られた時間のなかで足掻き
介護を媒介にして 老いと死をみつめ
線香花火のように燃え逝きたい
 
時間は無常に流れ往き
生命は無常に流れ逝く
無常の世界観に浸る余裕はいまは無く
「良いことも悪いことも今日限り」、と思い 

認知症老人は 
過去(きのう)を忘れ 
未来(あす)はわからない
現在(いま)を生きる

認知症老人に見倣い
自分も今日(いま)を生きる


1054;“筋を通せ” “上をだせ” 3   “過剰保護ではないか?”

2019-04-13 03:37:37 | 老いの光影 第4章
“筋を通せ” “上をだせ” 3   “過剰保護ではないか?”

厚井善雄さんは
いま、民間アパートで暮らしている
住宅扶助は受けている

彼の生活は昼夜逆転、深夜過ぎまで起き、昼近く起きる
世間の生活スタイルと異にしている
太陽が昇っても11時過ぎ頃まで寝ているのだが
真上に住んでいる2階の家族の足音が五月蠅くて眠れない

彼は木刀で天井を突き 怒鳴ったりしていた
大家に苦情を言ったりなど
2階家族とのトラブルは絶えなかった

五月蠅くて眠れないし
2階の住人のことで頭に血が上り気がイライラ
焼酎の量も増え その上眠剤も多用していた
酒を飲みながら眠剤の服用は「絶対ダメ」だ、と話すも聞きいれず

彼はそのアパート出たくてウズウズし
しきりに村建設課や生活保護課長に電話をかけまくっていた
例の「上を出せ」と“口”撃し
建設課長と新任の女性生活保護課長を大きな声でくどき落とした

村は県の外郭団体から
住宅の払い下げを買い取り
リフォームを行い
新規8世帯分(4階建て)の村営住宅入居の募集を行った

3LDKと間取りは広く
一人暮らしにはもったない位
応募者数はかなりあった
彼の場合は 建設課長とのやりとりで無抽選入居が決まった

「それはよかったね」
「ところで引越が大変だね、引越代だって村内でも業者に頼めば十数万円はかかるだろう」
「17万円もかかる。でも生活保護でだしてくれることになった」
「その他に、エアコン、給湯器、ガスレンジと住宅改修までだしてくれ、引越代は“ただ”で済んだ」

彼の場合、いま住んでいる民間アパートでも20万円満額の住宅改修(介護保険)を利用した。
転居し場所が違った場合、住宅改修(介護保険)を新たに使える。
両変形性股関節症があることから当然1階に住むだろうと思っていたが、彼は「2階に住む」と言う。
階段に手すりつけ、その他に風呂場に手すり、民間アパートと同じくベランダにもフラット工事を行う。

今回の引越代だけで総額60万円余り生活保護費で賄われる。
過剰保護ではないのか、と疑問に思うも
私自身生活保護費の項目を調べた訳ではないので、
その疑問が適切なのかどうかわからない。
でも一方では、生活保護費が打ち切りになった家族もいるなかで腑に落ちない。

今月の22日に引越をする。

(終わり)