千葉県銚子岬付近の海岸
両手両足が拘縮にならないことを願う
99歳の登喜子婆さん
4月15日に病院を退院し{家に帰らずに}介護老人保健施設に入所することが決まった。
登喜子婆さんは、3月20日までは自力で歩き、トイレに行き用を足していた。
肺炎の繰り返しと小脳梗塞の発症により
いまは自力で立ち上がることもできなくなり、車いす生活となってしまった。
激変の3月と4月。
彼女にしてみれば予想もしていなかった終末は
自宅ではなく介護施設となった。
在宅ケアマネジャーから介護施設ケアマネジャーへ バトンタッチする。
入所に際しお願いすることは2つある。
1つは、日中ベッドから離し、座る生活をさせていただくこと。
できれば車いすから肘掛け椅子に座らせていただければ嬉しい。
施設に行くと、疑問を持つこともなく当たり前のように車いすに座らせられている老人が多い。
経験してみるとわかる。長時間車いすに座ると、お尻が痛くなり疲れる。
車いすは移動する物(福祉用具)であって椅子ではない。
肘掛け椅子の方が座り心地良い。
もう1つのお願いは、両手、両足の屈伸運動をお願いしたい。
車いす(椅子)に座ったままの生活を強いられると、膝関節は固まり、「く」の字に拘縮してしまう。
両手も同様、動かさないと肘関節も「く」の字に拘縮する。
人間、寝たきりになり「寝返り」することが難しくなり
誰かの手をかりることで「寝返り」や「起き上がり」ができる。
両手、両足を動かすことにより、関節の拘縮を防ぐことができる。
人の手をかけなければ、すなわち人と人のかかわりをもたなければ
母のお腹のなかに居たときと同じように、両手両足を縮め屈んだ姿勢に戻ってしまう。
葬式を終え棺のなかに安置されたとき
両手両足が拘縮しているために
棺のなかに安置できなかったり
あるいは棺の蓋を閉じることができなかったりする
その場合、陰で葬儀屋さんが
拘縮した両手、両足の骨を「ポッキ」と折り
ご遺体が収まるようにしている、という話を聞いた。
亡くなってからも骨を折られるのは、忍び難い。
要介護老人の拘縮があるかないかで、その介護の質が問われてくる
365日介護者は交替でき、かつプロ(専門職)である
ましてや老人保健施設は医師、看護師、理学療法士など医療スタッフが配置されている。
在宅の場合は違ってくる。
老老介護であったり、ひとりで介護をされていたりで
心身ともに疲労困憊な状態におかれている。
家族それぞれの経済事情もあり
要介護5の認定を受けても、区分支給限度額の全額を利用できるとは限らない。
在宅介護は限界があり、両手両足が拘縮されることもある。
その責めを在宅介護者に問うことはできない。
逆に「本当にお疲れ様」と日々の苦労をねぎらうことが大切である。
登喜子婆さんも、両手両足だけでなく心も固まらないよう
最後まで自分らしさを失わずに生きてもらいたい。