Tさん(大人・男性):
ベートーヴェンの「悲愴」第一楽章に取り組んでいます。
会社のお仕事がとても忙しく、なかなかピアノの練習時間が取れないのが悩みです。
発表会まで後2ヶ月。「本当なら、今頃曲が出来上がって、スピードを上げていく時期なのに…」と嘆いています。
いくらでもピアノを弾いていていい身分の音大生とかならいざ知らず、社会人の人がピアノの練習時間を捻出するのはほんとに大変ですよね。
だけど嘆いていてもしょうがない。出来ることを積み重ねていこう。
ということで、今日は曲の最後、楽譜でいえば最後の3段分だけを集中してレッスンすることにしました。
直前まで嵐のように激しく何度もとどろいた和音がグワァァ〜ン!と炸裂し、全力を出し切ったことを告げる… レッスンはその続きからです。
しばしの静寂の後、燃え尽きたかと思われた灰の中から(?)かすかに浮かび上がってきたのは、曲冒頭の序奏の片鱗。
1フレーズごとに、そのメロディーははっきりとした形をとり、色彩を加え、力を増してきます。
そして見よ、終わったと思っていた第一主題が再び現れてくる。
第一主題は、むくむくと膨れ上がる竜巻のように急激な勢いでクレッシェンドで駆け上がり、雷鳴のような和音を、これでもかとばかり連続させて終わります。
こんな感じかな。
TさんにはTさんのイメージがあるでしょうし、みんなもご自身のイメージを膨らませてみてくださいね。
イメージは人それぞれですが、それをピアノで表現するのには、楽譜に書いているf (フォルテ)やp (ピアノ)を守ってるだけじゃダメです。
「おんなじリズムのフレーズが、だんだん音程を高くしながら3回続いてる。『もっと、もっと』とか『こんなに、こんなに』とかいう心の声がほとばしるように、1回目より2回目、2回目より3回目、と音量を上げて」
「アレグロで出てきた主題は、音量を押さえたp (ピアノ)から終局へ向かってぐんぐんクレッシェンド、ティンパニのトレモロがダダダダダ〜っとボリュームを上げていく感じで」
「最後にff(フォルテシモ)がついてるけど、ただ強く、と思って弾くんじゃなく、オーケストラ全員が一斉にトゥッティで響かせてるのをイメージして弾いて。指揮者が力いっぱいタクトを振り下ろす。弦楽器群、全員が弓を振りかぶってグワン!管楽器群、呼吸を一つにしてパァン!シンバル、ジャン!自分が指揮者になったつもりで」
こんな風にイメージして、この3段をTさんに弾いてもらったら、最初に弾いた時とははっきりと違う迫力あるサウンドになりました。
Tさん自身も「オーケストラの演奏みたいですね!」と、ご自身の音が鮮やかに変わったことを実感してくれたみたいでよかったです。
みんなも「オーケストラの指揮者になった気持ちで」弾いてみたら、ちゃんとそういう音になりますよ。試してみてね。
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