自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

キツネノカミソリ紙!

2015-09-01 | 野草紙

キツネノカミソリという名は,なかなか趣きのあることばです。命名した人のオシャレ度が伝わってきそうです。葉のかたちから剃刀(かみそり)を連想するという理由で名付けられたといいます。「狐の」という接頭語がなぜ付いているのか,わたしにはわかりません。

それはともかく,キツネノカミソリはヒガンバナ科の野草です。花期は8月で,ヒガンバナより1カ月以上早い感じです。土手や斜面で群落をつくっているのを見ると,なかなか見応えがあります。あるところにはあって,ないところにはちっともないという程度の自生ぶりですから,ヒガンバナほどの強烈な印象はありません。しかしその花を見ると,なんだか慎み深い花という感じがわたしにはしてきて,こころが和む気持ちがします。


花の色は黄赤と言い表せる穏やかな赤色です。じつは,その突然変異種である,真っ白な花をずっと以前に群落で見つけました。それを持ち帰って栽培しているのですが,毎年同じように鮮やかな白い花を付けてわたしの目を楽しませてくれています。

このキツネノカミソリの花茎を材料にして野草紙を漉いてみましょう。ヒガンバナ科の植物は,ナツズイセンもそうなのですが,透明感のあるツヤ紙といったすてきな紙に仕上がります。


作り方はとても簡単です。花茎をアルカリ剤(重曹)をすこしだけ加えて煮ます。もともと繊維が弱いので,たくさん入れると繊維そのものが頼りなくなります。煮る時間は30分程度で十分。

煮終わったら,揉み洗いします。ミキサーを使う必要はありません。洗っているうちに,長い繊維,短い繊維というふうに適当に入り混じって紙料ができます。


それが紙料そのものなのです。

次に紙料を木枠に流し込みます。


枠を外して乾燥させれば,これで完成! 暑い日なら一日で乾きます。ふしぎな質感の紙が出来上がります。