自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ひさしぶり,ルリタテハ

2015-09-15 | ルリタテハ

9月13日(日)。晴れ。わたしが定期的に昆虫の生態写真を提供している科学館は,緑豊かな公園内に位置しています。休日になると,そこに設置された遊具や,芝生広場で遊ぶ家族づれでにぎわいます。

この日,虫の目写真を撮ろうと,久しぶりに訪れました。セミの死骸を見つけて,アップ写真を撮りました。撮っていると,おもしろいことが起こりました。幼児が2人近づいてきて,「おっちゃん,なんの写真を撮っているの?」と聞くのです。セミを指して説明すると,「ふーん」と答えて見つめていました。2人は兄弟です。

場所を移して,別の被写体を探していると,またその兄弟がやって来てこういうのです。「おっちゃん,今度はなんの虫を探しているの?」と。 「チョウチョだよ」というと,「いるの?」と問い返してくるのです。「まだ見つかっていないけど,きっと来るんだ」と,わたしはルリタテハを思い描いて答えました。

ふしぎに,子らは去ろうとはしませんでした。そして,住んでいるところを教えてくれました。警戒心のまるでない,人懐っこい子たちでした。そのうちにオンブバッタを見つけて,「ぼくらも一緒に写して」といいました。そんなふうにして,話していると,なんとルリタテハが飛来! びっくり仰天!

その後,地面や手すりにとまっては,舞い上がり,再び元に戻ってくる習性を見せました。その度に,わたしは子らに「じっとしてて。動かないで。そうすると,また戻ってくるからね」と説明しました。兄弟は素直にそのとおりにしました。ルリタテハはどうやら,産卵に訪れたようです。

何度か「動かないで」を繰り返しているうちに,子らが叫びました。「あっ! おっちゃんの帽子にとまった!」と。「ほんとうかい? まだいるのかい?」と聞くと,「うん,まだいる,まだいるよ」って答えるのです。 

わたしは,そっとコンデジを取り出して,頭に向けて適当にシャッターを押しました。流行の自撮り棒なんてあるわけではありません。レンズを頭部に向け,左手でシャッターを切るのですから,なんとも妙な撮り方です。秋はじめてのルリタテハとの出合いが,なんともユニークな風景となりました。


ところがところが,舞い上がったルリタテハは,また戻ってきてわたしの帽子にとまったのです。結局,この動きが3回も繰り返されました。

子らは「すごいなあ。おっちゃん。チョウが好きなん?」と聞きました。「うん,とっても!」と答えると,ふしぎにも2人は「ぼくは虫が苦手や。こわい」「ぼくも」といいました。「今度,ここにいつ来るの?」と聞くので,「今度の日曜日かな」と答えました。「日曜日のいつ? ぼくも来るから。おっちゃんと話がしたい」と付け加えるのです。こうなると,約束を破るわけにはいきません。

子らが去ったあと,すぐ近くのサルトリイバラを点検しました。産付卵があるかもしれません。探し始めると,早々と見つかったのが孵化後の殻でした。同じ葉に食痕があって,裏側を見ると幼虫がいました。隣りの葉の裏側にも幼虫がいました。さらに,別の葉で卵を確認!

やはり,ルリタテハの行動は産卵と結び付いていたようです。ふしぎな,ふしぎなひとときでした。夕刻でもあり,接写レンズを持って来ていなかったこともあって,撮影は翌日に回すことにしました。