自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

マダケの葉紙

2015-09-20 | 野草紙

タケの紙はたいへん魅力があります。色合いも多様,強さも,厚みも様々です。絵が描ける紙も,折り紙も,コピー紙もなんでもOKです。わたしは大好きです。知人に,タケ紙を漉く職人がいますが,とにかく素材としてのタケにぞっこんです。タケの表情を知り尽くしているといった感じで,多種多様なタケ紙,作品それにタケ筆をつくり出しています。

タケの茎を思い浮かべると,たいていの人が紙にするには扱いにくい素材だと思われるでしょう。しかし,やりようによっては,いたって簡単です。この話は改めてするとして,今回はタケの葉で紙を漉く話題を取り上げます。

使ったのはマダケの葉。マダケは近くの河川敷に行けば,たくさん生えています。葉はいくらでも採集できるのですが,B5サイズの紙を漉ける程度の分量を集めることにしました。

持ち帰ってそれを煮ること,3時間。葉がずいぶん柔らかくなってきました。

葉脈のなかから主脈を取り出すために,臼と杵で叩解。主脈は長さが長いので,それを紙料に残すことでより丈夫な紙になります。細かくなったところで,主脈を手で取り出しました。残りのものは,ミキサーで細かく砕いて繊維を短くしました。それぞれをきれいに洗ったあと,一緒にして紙料としました。


これを漉けば,湿紙。

そして,乾かせば紙になります。


ただ,繊維全体としては繊維が太くで短いので,ぱさぱさした感じの紙になります。これでは実用的な紙にはなりません。それで,工業的に西洋紙がつくられるときにサイジングによって表面処理をするのを参考にして,薄めた膠液を塗ることにします。すると,腰の強いパリッとした紙になります。加えて,膠液にはにじみを抑える作用があるために,毛筆や絵筆を使って作品をつくれるようになります。


紙の色について一言。一般的に,もとの素材の色が残ることは期待できません。アルカリ剤や加熱によって色素が壊れてしまうので止むを得ないのです。今回つくったタケ紙は緑色をしていますが,この色がずっと残り続けるわけではありません。酸素や光,紫外線などの影響で時間(日)が経てば変色します。

それはそれとして,タケの葉は繊維で支えられていて,その繊維を取り出せばちゃんと紙になるのです。そこがとてもたいせつなところです。