ミュージアムによっては高校生ぐらいならボランティアをしている生徒があったり,また高校生以上をボランティアとして募集しているミュージアムがあったりします。しかし,小・中学生が活躍しているミュージアムはあるかもしれませんが,近くではまずないのではないでしょうか。
そのいわば“ジュニア”ボランティアを積極的に募り,活動してもらっているミュージアムは浮かんできません。もちろん,日常的なかたちでの参加です。わたしたちのミュージアムは,その稀有な試みに挑み続けています。
今の子どもの周りには刺激がありすぎて,刺激から子どもに向かって来ているといってもいいほど。子どもが自ら刺激を求めて環境や対象にはたらきかけなくても,おとなからの準備の手が先回りして整えられているほど。まあ,わたし風にいえば,おせっかいのし過ぎ,構い過ぎですね。もっと突き放して,子ども自らが考え動くように,そうした環境づくりにこそ精力を注ぎ込むべきなのに……。
そうしないと,子どもの自立は中途半端になると思うのです。もったいない,もったいない。
つい先日久しぶりに,ジュニアボランティアのHさん(女児・6年生)がやって来ました。ボランティア登録を希望するRさん(男児・6年生)と一緒です。Hさんいわく,「話を聞いてあげてください」とのこと。
それで聞くと,「たのしそうだから,ボランティアに参加させて。科学が好きだし」といいます。わたしは彼の期待感を感じてこう伝えました。「科学が好きは子なら,活動をとおしてもっと好きになるでしょう。来館者とのコミュニケーションをとおして,地域社会とつながる力も育つでしょう。お父さん・お母さんとしっかし相談して,それでOKが出たら登録票を出してください」と。
さっそく,2日後の土曜日に登録票をもって来ました。
彼いわく,「夕べは,今日のことを思うとうれしくって1時まで寝られませんでした」。わたしいわく,「修学旅行よりも,って感じかな」。彼答えていわく,「はい,そのとおりです」。ここまでいえるのは期待感の現れです。
隣市で,寺社を案内する児童ボランティアが活躍しています。わたしも以前案内してもらって,活動の様子を聞き取る機会がありました。おとなのスタッフが下支えをして,子どもが育っていることが窺えました。子どもの興味関心を引き出し,小さなときから地域や人とつながる活動にこころを向けていく努力がそこにあるように思えました。
わたしもミュージアムでそれに近い試みを続けてみようと思っています。未来を担う子どもたちの夢と希望を育む一翼を担いたいですね。
Rさんはこの日と翌日曜日,子ども向け教室の手伝いを積極的にしました。教室での対応もばっちり。後片付けまでが活動です。終わってみて,「疲れました。でも,ますます好きになりそうです」といっていました。
ジュニアボランティア制度の成否は,スタッフの受け入れ感覚次第です。一致して,子どもの育ちを支えようとする理解に立てば,きっとうまくいくでしょう。Rさんがどう育っていくか,たのしみにしています。