自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ヤマトシジミ,幼虫から成虫へ(6)

2013-10-19 | ヤマトシジミ

10月13日(日),午前7時。翅の部分が随分白く,わずかに赤みを含む感じになりました。胸部はやや黒っぽさが感じられます。この後わたしは,地域の祭礼行事で外出。 

 

午後4時,帰宅。朝の観察時から9時間経過。大変化が進行中です。色が激変。翅も胸も黒くなっています。青みがすこし見えます。腹部中央を走る帯の幅が広くなりました。順調に行けば,14日中には羽化するでしょう。 

からだが黒くなって,帯糸がくっきり見えてきました。からだを固定し,支えるのに欠かせない道具であることが理解できます。

 

 

 

 

 


秋の暑さとサクラの開花

2013-10-18 | 植物

サクラが季節外れに開花する理由については,取り上げたことが二度あります。そのことにちなむ話です。

先日10月12日はとても暑い一日となりました。10月の最高気温が観測史上最高だったと騒がれた地方があります。なんと,真夏日だったのです。もちろん,観測開始以来,もっとも遅い真夏日になります。東京もその一つ。

それで,写真入り記事で紹介されたのが公園のソメイヨシノ。枝にはサクラの花が数輪。ある新聞社の配信記事にはこうあります。「江東区の亀戸中央公園では、135本ある桜(ソメイヨシノ)のうち1本で開花が確認された。同公園によると10月に入ってから咲き始め、この時期の開花は初めてという」と。

また,別の記事では,宮城県白石市でもソメイヨシノが咲き人々を驚かせていると報道しています。さらに記事は続きます。「白石市によりますと、この地域で秋に桜が開花したのは確認されたことがなく,……」「仙台管区気象台の担当者は,『サクラは、冬の寒さを経験したあとに暖かくなると咲く性質があるので,この時期の気温が高いだけで咲くのは考えにくく,開花の原因は分からない』と話しています」と。記事はこのまま終わっています。

たまたまテレビニュースを視ていると,仙台のこのサクラが紹介されていました。それで,わかったことがあります。それはサクラの葉が完全に散っていたことです。東京の例は,写真ではよくわかりません。

一目で開花した理由がわかりました。葉の落ちた枝のあちこちでわずかに咲いていて,満開とは縁遠い風景でした。わたしの経験を思い浮かべても,秋にサクラ(ソメイヨシノ)が咲くのは珍しくありません。風か虫の影響で葉が落ちたサクラを丹念に調べていけば,どこかで一輪,二輪,見かけます。ちらほら咲いている,そんな感じです。

この現象はふしぎではありますが,開花メカニズムについては,すでに科学の目が解き明かしています。それによると,単に暑さに起因しているわけではないというのです。単純に考えれば,もし気温だけが関係しているのなら,サクラを一枝手折ってきて温かい部屋に置いておけばいいでしょう。そうすれば開花するはず。

実際はそうはなりません。もしそうなるのなら,毎年多くの人が試みているでしょう。これを考えても,開花のしくみはそんな簡単なものではないことがわかります。

ふつうの開花メカニズムを整理すると次のようになります。

  1. 花芽は暑い最中,7月にできる。
  2. 夜長になりかけると,葉がそれを季節の変化とみて「間もなく寒さが訪れる前ぶれである」と感知する。
  3. 葉は成長抑制ホルモン(アブシシン酸)をつくって花芽に送り,越冬芽(休眠状態)にする。こうなると,いくら暖かさがやって来ても,どんなに暖かくなっても開花しない。
  4. 成長抑制ホルモンは冬の寒さによって壊され,越冬芽は目覚めかける。そして,春の暖かさを感じるごとに,ぐんぐん成長する。

では,寒さを経験していないのに,なぜ秋に咲いたのでしょうか。このメカニズムは上の3に関係あります。葉から成長抑制ホルモンが花芽に移動する前に落葉してしまったため,メカニズムに狂いが生じたことによるのです。開花が抑制される前の状態なら,気温に左右される場合がありうるわけです。したがって,暑い日が続いたことによって春だと早合点して咲いたわけではないのです。もし早合点したのなら,花咲じいさんが魔法をかけたように木全体がパアッと花をつけてもよさそうです。

もし,一本の木を実験台にして,成長ホルモンが移動する前に人為的に緑の葉を取り去った場合,どうなるでしょう。もちろん,暑い環境下におけば同じように開花するだろうと容易に察しが付きます。

逆に,いったん成長抑制ホルモンが移動した後であれば,冬にいくら暖かくしても開花時期を極端に早めることは不可能なのです。今から10年余り前に大阪府立植物園で,ソメイヨシノをビニルハウスに入れて開花を早める一大実験が行われたそうです。結果は2月25日が満開日だったといいます。多少の早咲きにはなりますが,あくまで寒さを体感してこその開花だという点が生理学上のポイントになっています。

地球温暖化の影響がサクラの開花にも影を落とすのではないかといわれています。暖冬傾向が花のみごとさを減じるというのです。厳冬こそ,真にサクラの花芽を育てます。

科学部の記者にこうした現象に関心がある人がいれば,こんなあいまいに記事が出されっ放しにはならないでしょう。気象台の担当者が理解できなくても,研究者なら理解しています。植物園にでも問い合わせて,説明を付したらいいだけの話です。聞く相手が違っていたわけです。メディア関係者の心得としてはいかがなものでしょうか。こんな調子ですから,毎年のように同じ類いの記事が流れ,真実の姿がみんなのものになっていきません。

情報の受け手であるわたしたちの心得として,情報を鵜呑みにしてはならないなあとつくづく思います。

 


ようこそ,ルリタテハの幼虫(続々々)

2013-10-18 | ルリタテハ

10月11日(金)。一日が経過。かたちが安定してきました。長さは3.2mm。くびれ部分の金属光沢はツマグロヒョウモンのそれを連想させます。

10月12日(土)。変化は見られません。

10月14日(月)。 色に目立つ変化はなし。蛹の表面に 口吻,触覚,脚がくっきり見えます。

 

10月17日(木)。 変化は感じられません。改めて尾端を固定している絹糸を見ると,相当頑丈に見えます。これだけでからだの落下を防いでいるので当然といったところでしょうか。念のために,写真を撮りました。糸がびっしり張り巡らされているのに驚かされます。糸はひとつながりになっているはず。

 

 

 


黒・白・赤で装ったホタルガ

2013-10-17 | 昆虫

昆虫を採集するとか,分類していくとかといった,いわば博物的な目で,虫の目に立つことに,わたしはほとんど関心がありません。標本が教えてくれる“知”に感謝していますが,自身がそれをたのしむ姿は,どう考えてもピンと来ません。

それよりわたしがこよなく好むのは,昆虫の生活環を変化・動きを柱にして見届けることです。行動学的は視点を大事にするということです。変化・動きは次のステージに移る変態をはじめとして,捕食,食餌,威嚇,防御,産卵,排泄,……,そんなものです。結果,一つひとつの昆虫をくわしく見つめていくことになり,いろんな昆虫に目が向くということは起こりえないわけです。

ただ,「ほほうっ! これは珍しい」とか「きれいだ」といった感じあれば,必然的に目を奪われます。下のホタルガもその例です。

畑に行くと,ネギの葉に付いていました。黒装束に赤い頭がちょこんと載っています。頭もよく見ると,眼の部分が真っ黒。翅には大胆な白帯が斜めに走っています。i色がホタルを連想させます。実際,ホタルに擬態して身を守っているようで,そこから命名されたようです。

触覚もまことに立派。形状からオスと思われます。かたちの見事さは,もちろん感覚器官として欠かせない機能を受け持っているからこそのことです。では,いったいなにを探知するのでしょう。メスから出されるフェロモンメッセージを受けとるのでしょうか。 

幼虫の食樹はサカキやヒサカキで,幼虫は毒を持っているらしく,人間にとって厄介者になっているという一面があります。ネットで検索していると,退治の方法を教えてほしいという記載がいくつかあります。

それはともかく,この名とこの昆虫との相関,一度耳にしたら忘れないでしょう。この日以降何度か,自宅脇をヒラヒラと飛ぶホタルガを目にしました。

 


ジャコウアゲハ観察記(その284)

2013-10-17 | ジャコウアゲハ

ヒガンバナの季節はとっくに過ぎました。思い出したように,この花を訪れたジャコウゲハの吸蜜行動について書きとどめておきます。

9月,我が家のスダチの木の根元に咲くヒガンバナをジャコウアゲハが一頭飛来して吸蜜をしていました。ヒガンバナはたった一本。なぜかそこに生えています。偶然そこを通りかかったとき,アゲハがいたのです。ゆっくり翅をパタ付かせながら,口吻を伸ばしていました。

ヒガンバナとクロアゲハ,またナミアゲハの組み合わせは写真でも紹介されていますし,わたしも撮影した経験があります。しかし,ジャコウアゲハとの組み合わせは初めて見ました。棲息地にたくさん咲いている場合は,比較的容易に吸蜜風景を観察できるのでしょうが,わたしの身近な場所ではそういうところはありません。

大慌てでカメラを取り出して準備していると,パッと舞い上がりました。「もう一度,来てほしい」と祈っていると,来てくれました。しかし,わたしの方はまた慌ててしまい,ほんとうにピンボケの写真が一枚撮れただけでした。惜しいことをしました。

日本に自生しているヒガンバナは不稔性です。それでも,蜜源にすこしは蜜があるのでしょうか。もしたくさんの蜜があれば,もっともっとアゲハたちが訪れるはずです。先祖を忘れない程度の蜜量が滲み出ているのかも,です。

 


ジャコウアゲハ観察記(その283)

2013-10-16 | ジャコウアゲハ

いろんなことをあれこれ考え,ここあそこに目を向けていると,同じようなことでも微妙に異なっている点が見えてきます。それをまた整理してみるのはたのしいことです。

生きものって,整然としたしくみの中で厳格に暮らしているわけでなく,一定の筋があって,個別的にはいろんなすがたがあることに気づき,驚くことだってあります。

一枚の葉に産み付けられた卵が7個。これって,同じ成虫が一時に産んだものかどうか。そうでないとすれば,こんなみごとなかたまり方をどう解釈すればよいか。そして,時を同じくして孵化するとすれば,いったいどんな状況下で産卵がなされたのか。

じっさい,下写真の7個はほぼ同時に孵化したのです。わたしは,これほどの数を一頭の成虫が産む場面を目撃したことはありません。ジャコウアゲハを研究している生物学者にお尋ねしたいぐらいです。

こんなにたくさんの卵があれば,自分が入っていた殻を勘違いする個体もいてもおかしくはありません。下写真で,左端の二匹が同じ殻を食べています。同じような場面は,これまで何度となく目撃してきました。

この後,左から二匹目の幼虫は本来の自分のものと思われる,左端の殻を食べ始めました。こうした自覚(?)なり転換なりはどこから生じるのか,ふしぎな場面でした。このとき,六匹目の幼虫が卵から頭を出しました。

孵化はいのちの大変換期です。親は子どもに,哺乳類の母乳のようにして殻というお弁当を残します。それを誕生直後に食べきって,すぐに離乳期に移行して自分で餌を食べ始めるのです。それも自分で歩いて探し求める! その一連の流れはやっぱり大きな変化だといえます。生活環と生態が他のいきものと違ってはいても,やはりそうなのです。アゲハとヒトとは比べようがないといわれればそれまでですが,比べてみて発見することも実に多いのです。あながち無駄とは切り捨てられません。

こんなふうにして,7個の卵から幼虫が無事誕生しました。これは果たして7匹きょうだいかどうか,疑問が残り続けます。

 


ヤマトシジミ,幼虫から成虫へ(5)

2013-10-16 | ヤマトシジミ

10月9日(水)。蛹を真上から観察できるかたちになりました。胸部と腹部の境を見ると,帯糸でからだを固定しているのがわかります。きれいな黄緑の体色です。大きさは8mmちょうど。

10月10日(木)。頭部や翅を見ると,ほんのすこしだけ白っぽさが感じられます。しかし,フラッシュの光の加減かもしれません。経過としては白さが増していくはずです。

 

10月11日(金)。翅や頭部が白っぽさを増しています。順調な推移ぶりです。

 

10月12日(土),朝。翅・頭の白さが一層際立ってきました。この分だと,14日(月)辺りが羽化日かと思われます。

 

 


ジャガイモの種子,予備的発芽実験の試み(もっと)

2013-10-15 | ジャガイモ

9月30日(月)。ジャガイモの真正種子から発芽した芽生えを見つけたのが9月1日でした。それからはどんどん発芽が続きました。結局,この一カ月で粒数にして50個は超しているようです。発芽率はかなり高率といえるでしょう。そして推移は良好です。

いちばんはじめに芽生えたものも順調に育っています。ただ,茎が異常に徒長しています。一目見てわかるように,ひ弱なのに茎が伸びたために倒れやすいからだ付きだなあという感じです。こうなったのは,たぶん,しっかりと日除けをしていたからだと思われます。地面が初秋の強い日差しを浴びて乾かないようにするために,覆いをしたのです。結果,日が極端に当たらないようになったことによるでしょう。

次回春に本格的実験を行う際は,光の量を勘案して条件を整えたいと思っています。

10月6日(日)。高さが6cmになりました。

どうやら,ストロン(匐枝)と思われるものが出始めました。上写真の,マッチ棒を差している茎です。ストロンにまず間違いないでしょう。やはり,これを出すには葉で光合成を行って養分を貯える必要があるということかと思われます。

  

ちょうど反対側にも。上から見下ろすと,二本のストロンがちょうど反対側から出ているのがわかります。

 

ストロンはやがて伸びて地中に入っていきます。そうしてその先端部に芋ができます。冬が来るまでにどんなふうに成長するか,見届けるのがたのしみです。

 


ヤマトシジミ,幼虫から成虫へ(4)

2013-10-15 | ヤマトシジミ

午後3時10分。 皮を完全に脱ぎ終わりました。尾端がそれを押し出すようにすると,丸くかたまった状態になりました。

 

午後3時12分。幼虫はからだを使って,皮をからだから離そうとしているようです。頭部を覆っていた殻が見えます。 

 

午後3時13分。からだを動かしていると,皮がポロッと落下していきました。からだの全容が現れました。 

午後3時50分。皮が落ちて30分以上経ちました。からだには丸みが出てきました。こうして蛹化への道は順調に進んでいったのです。 

全長8mm程度の蛹が誕生しました。小さい,小さい。この中に魂が宿っています。足元に生えるカタバミの周辺で,日常的に生起しているいのちのドラマなのです。 

 


ようこそ,ルリタテハの幼虫(続々)

2013-10-14 | ルリタテハ

間もなく蛹化するというこの時間帯,ちょうど夕食と重なりました。見逃しては勿体ないすぎる変化,出合いです。それで,夕食を食べながら,ときどき変化を確認しました。それでも,気が気ではありません。急いで夕食を済ませて,観察に集中しました。

ファインダーを覗いてしばらくすると,動きが激しくなりました。「蛹化のときがやって来たんだ」と思っていると,尾の方に殻が皺状になって集まりかけました。これが午後7時32分。

午後7時33分。頭部の殻が裂け,蛹が覗きました。 

午後7時34分。殻がどんどん押し上げられ,からだが見えてきました。触覚と脚がくっきりしています。 

午後7時35分。殻がほとんど押し上げられました。棘状突起が密集しています。からだの鮮やかな赤茶色が印象的です。 

同じ午後7時35分。蛹はからだを前後左右に激しく揺すって,殻をひと塊にしようとします。 

午後7時36分。殻が一つに固まった状態になりました。 

午後3時39分。数分間,さなぎは殻を落とそうともがき続けました。突起がからだに接触していることから,脱皮が完結していないとわかるようです。ふしぎ,ふしぎ。しかしダメだとわかったらしく,とうとう諦めました。からだに動きがピタリと止んで,一直線に垂れ下がった光景は神秘でさえありました。

観察のタイミング,幸運を感じる出合いになりました。 

ルリタテハの生活環を調べると,わたしの住む地域だと多化性で年3回(6~7月,8月,10月)の発生だとか。そして,越冬態は成虫と書かれています。そうなら,この個体はまちがいなく間もなく羽化して,それが冬を越すということになります。それに,蛹はツマグロヒョウモンと同じくぶら下がり型。やっぱり! こんな情報を得たら,とことん付き合いたくなってきました。