WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

世襲大国ニッポン

2006年08月22日 | つまらない雑談

 今日、家族旅行の帰り、子どもたちと妻にせがまれて、映画『ゲド戦記』を見てきた。はっきりいって、作品が破綻しているし、この映画が撮られる必然性が理解できなかった。機会があれば、この映画に対する批評めいたことを記したいとは思っている。

 しかし、そんなことより、監督・宮崎吾郎とは一体なんだ。妻に聞けば、宮崎駿の息子であるというではないか。何でも昔は親と子の確執があったとかで、きっといろいろ複雑な事情があったに違いない。しかし、スタジオジブリで映画を撮影するとはどういうことか。まったく、失望した。収益と話題性を考えねばならない鈴木プロデューサーはともかく、宮崎駿や吾郎本人は何をどう考えているのだろう。

 省みるに、近年の日本は、世襲制国家あるいは家産制社会である。政治家しかり、芸能人しかり、今度は映画監督かという感じである。経済的な財産の世襲が当然のこととされている以上、エスタブリッシュメントをめざす人間にとっては、親の知名度やコネクションも重要な財産のひとつと考えられてもいたしかたないのだろう。

 しかし、才能や能力を必要とする分野ぐらいは、フェアであってほしいと感情的に思ってしまう。まあ、二世議員や二世芸能人を受け入れてしまう有権者や視聴者のがわに問題があるのだろうが……。

 やはり、我々は二世議員や芸能人あるいは二世監督に対して特に厳しくあらねばならないだろう。経済社会同様、淘汰することが必要である。それが真の良い政治、良い作品を生む土壌になるのだから……。


9.11テロなど大したことではない

2006年08月15日 | つまらない雑談

 先日の朝、ホームドラマチャンネルでアニメ映画「はだしのゲン」を放映していた。原子爆弾の悲惨さを伝えるドラマだ。朝食中の子どもたちは、テレビに釘付けになり、私は涙が止まらなかった。その中で、ゲンの母親が言った。「戦争が憎い」と……。それは基本的には正しい認識なのだろう。しかし、と思った。原爆を投下し、人々をあのようにしたのはアメリカなのではないか。アメリカが日本をこのようにしたのだと……。もちろん、日本が一方的被害者なのではない。日本が中国侵略や東南アジア侵略でやったと同じように、あるいはそれ以上にアメリカは原爆を使って人々を殺戮したのである。

 アメリカではなく、戦争が憎いといった日本人は、やはり良心的だ。そのような視点は間違ってはいないだろう。しかし、愚かな私は思ってしまう。日本に原爆を落としたように、アメリカはベトナムに枯葉剤をばら撒き、アフガニスタンで無実の人々を殺戮し、そしてイラク戦争でひとつの国をめちゃめちゃにしたのだと……。そして、こうも考えてしまう。わずか数千人が死んだにすぎない9.11のテロなど、アメリカがしてきたこと(そしていまでもしていること)に比べれば大したことはないのだと……。

 無論、それは感情的な思いにすぎない。しかし、戦争が悪いというまっとうな視点からだけでは、アメリカの行為を隠蔽することになりはしないだろうか。

 私は右翼ではない。ナショナリストでもない。被害者としてのヒロシマ・ナガサキを強調することで侵略戦争を隠蔽しようなどとは考えていない。ただ、罪のない多くの日本人が意味なく殺されたことについて、あるいはベトナムやアフガニスタンやイラクで大勢の人々が殺戮されたことについて、憤りの思いを否定できないだけだ。そしてそう思うのは私だけではないだろう。

 戦争と平和の問題は理性的に解決されねばならない。「戦争が憎い」という良心的なスタンスも正しいだろう。しかし、わたしの(そしておそらくは多くの人の)憤りの思いは亡霊のように残り続ける。

 国際政治は、この「思い」の問題を考えなければだめだ。そしてそれはおそらく「赦し」の問題に関係している。


脅威のジャズ喫茶・宮城佐沼「エルヴィン」

2006年08月14日 | つまらない雑談

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 お盆でたまたま、宮城・佐沼を訪れたので、ジャズ喫茶「エルヴィン」に行ってみた(携帯電話で写真をとったのでかなり不鮮明)。

 ここに来るのは一年ぶりだ。しかし、いってみてびっくり。ジャズはかかっておらず、女性客1人とマスターが、なんとNHK大河ドラマ「功名が辻」を見ていたのだ。客の私が入っていっても、しばらく音楽をかける様子はなく、しばらくは無視された感じ。約5分後、ようやくマスターは椅子から立ち上がり、レコードをかけてくれた。ところが、音量が小さい……、何で……。昨年来た時にはもう少し大音量だったはずだが……。しかもかけてくれたレコードがビル・エヴァンスの『クインテセンス』。実は、昨年来た時にもこのレコードがかけられていたのだ。まさか、一年中同じレコードをかけているわけではなかろうから、単なる偶然であろうが……。

 私は、何故か、十数年前はじめてこのジャズ喫茶を訪れた時、「本当はレッド・ツェッペリンが好きなんだよね」と語ったマスターのことばを思い返してしまった。

 おそるべし、「エルヴィン」……。