●今日の一枚 301●
David Hazeltine
Alice In Wonderland
デヴィッド・ヘイゼルタインの2003年録音盤『不思議の国のアリス』である。実に、印象的なジャケットである。この荒涼とした風景は何だろう。あまりの寒々しさに心がざわめく。決して好きなジャケットではない。けれども、あまりのインパクトにずっと気になっていたのだ。venusが1500円シリーズで発売したので買ってみた。
ビル・エヴァンス愛奏曲集といった内容だが、一聴、私は結構気に入った。デヴィッド・ヘイゼルタインという人は、現代ニューヨークを代表するピアニストなのだそうだ。彼のアルバムを買ったのは初めてだが、よくスウィングしつつ、なかなか美しく、しかも破綻のないソロを展開するピアニストだと思った。しかし、私の耳を釘付けにしたのは、ベースの音である。この存在感のあるベースは一体誰だ、と思ってジャケット裏をみたら、何とまたしてもジョージ・ムラーツだった。腹に染み入るように深く、しかもよく「歌う」ベースである。決してでしゃばっている訳ではないが、もの凄い存在感だ。ドラムスはシンバルの音がやたら気になる。ちょっと耳ざわりな感じもないではないが、録音が鮮明でしかも硬質な響きなのでこれはこれでいいという気がする。高音域をシンパルが、中音域をピアノが、そして低音域をベースが担当するといった感じで各楽器がすみわけ、喧嘩することがない。
一ヶ月程前に買ったのだが、慰みにもう10回程聴いている。⑨ ダニー・ボーイ、いいなあ……。