◎今日の一枚 342◎
George Winston
Autumn(20th Anniversary Edition)
懐かしいアルバムだ。「ウインダム・ヒル」。1980年代に一世を風靡したレーベルだ。このレーベルの作品も一時期よく聴いたものだ。今でも、カセットテープに録音したものを結構たくさん持っている。当時はこういうのをニューエイジ・ミュージックって呼んでいたんだっけ。
1980年リリースのジョージ・ウィンストン『オータム』は、ある意味でそんなニューエイジ・ミュージックを代表する作品だろう。20th anniversary edition盤のCDをたまたまwebで発見して懐かしくなり、カセットデッキが壊れたためテープを聴けなかったこともあって、衝動買いしてしまったのは1か月程前だったろうか。。
しかし、どういうだろう。心がまったく動かない。確かに懐かしいサウンドではあるし、耳になじんだメロディーたちなのだが、刺激の少ないつまらない音楽にしか聴こえない。何かすごくよそよそしく、ひどく外在的な感じがする。これはいったいどういうことだ。結局、このCDはしばらくの間、私の書斎の片隅に放置されることになってしまった。
今日、ちょっとした考えごとがあって、書斎でじっと考えていたのだが、たまたま机の端にあったこのCDを何気なくCDプレーヤーのトレイにのせた。まあ、煮詰まった時のBGMだ。えっ・・・・不思議だ。少しずつ心が溶けてゆく。まったく心が動かなかったサウンドの芯のようなものが、ゆっくりと心に届いてくるような気がする。
そうだった・・・・・。思い出した。ウインダム・ヒルを聴いていた大学生の頃、それらのサウンドは、ちょっと難解なことを考えるときのBGMだったのだ。中世史の論文を読む時、フーコーやドルーズやロラン・バルトを読む時、あるいはアパルトヘイトやアナール派について考える時、ウインダム・ヒルのサウンドは確かに私の傍らで流れていた。
それが正しい聴き方かどうかはわからない。しかしどうやらウインダム・ヒルは、私にとって、考え事をしながら聴くサウンドであるようだ。通常、私は、音楽を聴くと気が散って、本を読んだり、仕事をしたりができない。そんな私には、ちょっと珍しいことだ。「ウインダム・ヒル」の一連の作品は、思考を邪魔しないのだ。
たぶんそれも、音楽の力なのだろう。
そういえば、この『オータム』に入っていた有名曲の「愛/あこがれ」は、昔、三軒茶屋の名画座で見たポルノ映画で使われていたっけ。
あのポルノ映画のタイトルはなんだったのだろう。思い出せない。