WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

自然な心で、フランク・シナトラ

2014年07月26日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 367●

Frank Sinatra

Sinatra  ~Best of the Best~

 

 NHKテレビの『日本人は何をめざしてきたのか』のシリーズがなかなかいい。こういう放送を見せられると、やはり受信料は払わなくっちゃと思ってしまう。姉妹編だった『日本人は何を考えてきたのか』の明治編や昭和編もよかったが、先日の「鶴見俊輔と思想の科学」や「丸山真男と政治学者たち」にはチャンネルにくぎ付けにされてしまった。敗戦後という状況の中で、彼らがどのように苦闘し、何を目指そうとしたのかがよくわかった。もう一度、鶴見や丸山を読みなおしてみようと思った。思えば、彼らをちゃんと読んでこなかったような気がする。1980年代のポストモダニズムの文脈の中で、戦後民主主義の理性中心主義の象徴として、いわば「否定されるべきもの」「のりこえられるべきもの」として読んできたように思うのだ。

 ところで、フランク・シナトラ、である。NHKの番組を見て以来、私の頭の中で、なぜだか、鶴見俊輔や丸山真男とシナトラがリンクしてしまった。ひと世代前の、「否定されるべきもの」として読み、聴いてきたものとしての共通性だろうか。フランク・シナトラについては、長い間、古いタイプの、「保守的なエスタブリッシュメントの権化」という強固なイメージを持っていたが、『革新者としてのフランク・シナトラ」(2006.12.3)という記事を書いて以来、固定観念が消えて自然な気持ちでシナトラを聴くことができるようになった。まったく不思議なことだ。拙い文章ではあるが、書くことによって自分が整理され、気負いなく対象に向き合うことができるようになったということだろうか。今ではヒット曲の「マイウェイ」も、なかなかいい曲だと素直に感じることもできる。先日購入したこのベスト盤『SINATRA Best of the Best』はシナトラの代表曲が適切にチョイスされており、なかなか重宝している。家族が寝静まった後にひとり酒を飲みながら、食卓のBOSEで聴くシナトラは至福の時間である。

 戦後民主主義の巨人、鶴見俊輔や丸山真男についても、そういう感じで向き合いたい。さて、今日のNHK『日本人は何をめざしてきたか』は、「司馬遼太郎」である。結構、楽しみだ。