WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

女子バスケ笑顔の銀

2021年08月08日 | 今日の一枚(E-F)
◎今日の一枚 532◎
Eric Dolphy
At The Five Spot vol.1

 今回は、アメリカには勝てなかったようだ。オリンピックの女子バスケ決勝の話である。
 結果的には大差がついてしまった。仕方ない。相手のインサイドの長身プレイヤーとアウトサイドシュートにやられた印象が強いが、アメリカのディフェンスに悉く攻撃の芽を摘まれたことが大きな原因だったと思う。
 強烈なブロックショットでインサイドを潰され、タイトなディフェンスでシューターを封殺された。1対1を打開できなかったため連携プレーが機能せず、インサイドに人数をかけて守るために、前を走るのが遅れてしまう。日本の攻撃の芽が摘み取られたといっていい。
 それでもチャンスはあったのだ。前半に、ノーマークに近いイージーシュートを何本も外したことが痛かった。もちろんそれは、ブロックに対する脅威からくるものであるが、ああいったシュートをきちんと決めて、離されずについていければ、流れは変わったかもしれない。なかなか点差が離れなければ、アメリカにこんなはずはないという焦りが出てくる可能性があるからだ。焦りはシュートを単調にし、ミスを誘発する。ディフェンスの連携にズレをもたらし、ファールを増やすのである。そしてそれが、ほとんど唯一の可能性だと私は思っていた。
 金メダルへの千載一遇のチャンスを逃したが、選手を責める人は誰もいまい。ここまで、決勝の舞台まできたこと自体、多くの人が予想し得なかったほど素晴らしい活躍だったのであり、日本の女子バスケに希望と誇りをもたらしたのだ。
 私はタイムアップのブザーを聞いて、涙が溢れてしまった。
 今日の一枚は、エリック・ドルフィーの『アット・ザ・ファイブスポット第一集』である。ファイブスポットでの1961年のライブ盤である。
Eric Dolphy (as,bcl,fl) 
Booker Little (tp) 
Mal Waldron (p)
Richard Davis (b) 
Ed Blackwell (ds)
エリック・ドルフィーは、基本的に好きだ。何というか、フレーズが予定調和的でないところ、どこか外れたようなところがいいのだ。このアルバムでは、そんなドルフィーとブッカー・リトルの哀感を帯びた正統派のトランペットがよく絡んでいる。
 以前にも記したことだが、このライブでピアノを弾いているマル・ウォルドロンの晩年の演奏を生で聴いたことがある。私の住む気仙沼市の「ヴァンガード」というジャズ喫茶で見たのだ。小さなジャズ喫茶の最前列、わずか2m程の距離だった。マスターは「今夜は歴史を聴くんだ」といっていたが、演奏も悪くはなかった。ただ、今では、タバコをくわえてピアノの前に座ったそのカッコいい姿と、握手をした時の手の冷たさだけが記憶に焼きついている。


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