WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

I Can See Forever

2007年03月10日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 134●

Harry Allen     I Can See Forever

Watercolors_10  昨日は近くの中学校の卒業式だったらしく、花束や卒業証書の入った筒を抱えた中学生たちが私の家の前を通り過ぎていった。そういった光景は、もうすぐ春だ、という思いをつのらせる。といっても今年は暖冬で私の住む町(東北地方)でもほとんど雪が積もらなかったが……。しかしやはり、もうすぐ春だと思うと、気分が開放的になるのをおさえ難い。

 開放的な気分になると聴きたくなるのがボサノヴァだ。ハリー・アレンの2002年録音『アイ・キャン・シー・フォーエヴァー』。数年前に結構売れたアルバムである。発表された当初は悪くはないとは思っていたものの、ボサノヴァを聴くならやはり王道のジョビンやジルベルトやスタン・ゲッツのほうがいいやという感じだった。けれどもその後、このアルバムのもつウォームな雰囲気がじわじわと沁みてきて、しばしば再生装置のトレイにのせるようになった。今では、お気に入りのボサノヴァ・アルバムの一枚といってもいい。

 ライナーノーツの小川隆夫が「アレンは、時代をリードするサックス奏者とは違う。しかし、心地のよいジャズを聴かせてくれるという点では、いまや彼の右にでる人はいない。」と語るように、ハリー・アレンのテナーは鬼気迫る「呪われた部分」に属するものではない、けれどもウォームで歌心を大切にしたプレイは、しばしば我々の胸をキュンとしめつける。アレンのテナーは決して奇をてらわず、いつでも朗々と響く。ノスタルジックな雰囲気をただよわせながら……。

 


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