若い頃に見た、「俺たちの旅」というテレビドラマを忘れられない。1975年から1976年にかけて、日本テレビ系で放映されたドラマなので、もう30年も前のことになる。しかし、私と同世代の人には、同じ思いの方も多いのではなかろうか。
今振り返れば、高度経済成長の時代もおわり、それまでの社会や国家や家族のために献身する人生観に対して、「愛」や「友情」などの個人主義的な人生観を提示してみせた作品ということになろうか。社会的な価値観から相対主義的な価値観への転換といってもよかろう(これについては近い将来論じてみたい)。まあ、その行き着いた先が、現代の自分勝手の一億総「おれ様」化といえなくもないのだが……。
しかし、当時は、やはり、「俺たちの旅」の提示した人生観に魅了されたものだ。その後何回か再放送され、1985年には角川文庫より鎌田敏夫原作で「青春編」「恋愛編」「出発編」の三冊本として、活字としても出版された。ただ、角川文庫版では、「青春編」4章、「恋愛編」6章、「出発編」6章の計16話構成であるのに対して、実際のドラマは46話だった。私も含め、再放送も見、活字版も読んだという人は、意外と多いのではないだろうか。
ところで周知のように、「俺たちの旅」においては、毎回ドラマの最後にその回のテーマと関連づけられた意味ありげな箴言が字幕で流され、多くの人に感銘をあたえたものだ。今となっては、やや滑稽なものもあるが、当時の視聴者がそこから何かを学び取ったのもまた事実だろう。例えば、「誠実さ」とか「友愛」とか「自立」とかをだ。文庫本にもそれらは収められているが、何せ16話分しかない。もう一度全部確認したいと考えていたら、それを載せているホームページがあったので紹介する。もちろん、熱烈なファンの間では、よく知られているものなのであろうが……。
http://www.yo.rim.or.jp/~nag/OreTabi.html
その中からいくつか印象的なものをあげてみる。
◎ 明日のために 今日を生きるのではない
今日を生きてこそ 明日が来るのだ
◎ いろんな悲しみがある だがそれをわかりあえた時
悲しいもの同士の心が かたくむすばれる
◎ 男は女の やさしさを求め 女は男のやさしさを求める
皆が やさしさに飢えている
◎ それぞれの人間が それぞれの人生を
一生懸命に 生きている
◎ 人は なりふりかきわず 働くとき なぜか美しい
◎ 淋しさを知っている 人間だけが
笑って生きて行くことの 楽しさも知っている
◎ やさしさを持った人間が どうしようもない
せつなさを心に抱いて この世の中を生きて行く
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