◎今日の一枚 229◎
Neil Young
After The Gold Rush
今日は古いロックを聴いてみようと決め、CD棚から偶然手に取ったのがこの作品だった。そういえば、最近、二ール・ヤングはどうしているのかなと思いwebを検索してみると、Wikipediaには、1990年のの湾岸戦争の際には、コンサート会場でボブ・ディランの「風に吹かれて」を歌い、2001年の「9月11日事件」直後には、放送が自粛されていたジョン・レノンの「イマジン」を敢えて歌い、そしてイラク戦争後は、ブッシュ政権打倒の姿勢を鮮明にするなど、アメリカ国内の保守化や右傾化に対して「異議申し立て」の姿勢を貫いている、とあった。すごい人だ。さすがニール・ヤングだ。
ニール・ヤングの1970年作品『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』、初期の傑作というべきだろう。二ール・ヤングの最大の魅力は、例えば渋谷陽一氏が「率直な表現と粗ずりな曲構成」「ゴツゴツとした洗いざらしのジーンズみたいなものに例えられる」(『ロック ベスト・アルバム・セレクション』新潮文庫:1988)というように、その素朴さ、シンプルさ、直截さにあるのだと思う。実際曲を聴いていると、メロディーの展開が「えっ、ほんとうにそっちへ行っちゃうの」「それではあんまりシンプルすぎるんじゃ……」と思うことがよくある。歌詞にしても、例えば南部の黒人差別を唄ったSouthern man の「南部の人よ、落ち着いたほうがいいよ 聖書の教えを忘れちゃだめだ 南部もとうとう変わるんだ あんたの十字架も凄い勢いで燃え落ちて行く 南部の人よ」という具合に直球勝負だ。
しかし、私が今ニール・ヤングを聴いて感じるのは心地よさだ。暖かい毛布で包み込まれたような心地よい感覚だ。社会的なメッセージを直截的な言葉で歌うニール・ヤングを聴く姿勢としては正しいものではないのかもしれない。私は二ール・ヤングの良い聴き手ではないのだろう。私がこのアルバムをはじめて聴いたのは、アルバムが発表されてから10年程経過した1980年代の初頭だった。この心地よい感覚は当時からあり、その後ますます強まっていくように思う。時代がかわってしまったということなのだろうか。過ぎ去ってしまった時代へのノスタルジーなのだろうか。けれど、この心地よさはどうしようもないのだ。天気の良い休日の午後、私は陽のあたるテラスで、コーヒーを淹れ、古い小説を読みながらニール・ヤングを聴く。
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