WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ならず者

2015年03月08日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 423●

Eagles

Desperado

 HCを務める女子バスケットボール部の3年生を送る焼肉の会があった。女子のクラブ活動にはお楽しみのイベントが必要だと考えて、私が赴任してからはじめてずっと続けている行事のひとつだ。いつの頃からか、3年生の分と全員のアイスクリーム代は、私のおごりということになってしまった。女子高校生は焼肉が好きだ。信じられない勢いで食べる。90分食べ放題、飲み放題のプランなのだが、わずか6人で牛カルビ・豚カルビ、鳥せせりを10回以上もお変わりした。ご飯と飲み物も次々と数限りなくおかわりしていく。絶句である。

 3年生はプレーヤー2人とマネージャー1人のわずか3人だ。可哀そうな3年生たちだった。下級生が5人入部して士気は上がっていた。長身プレイヤーや能力のある選手もおり、練習しだいでは地区優勝や県レベルでの上位進出も狙うことができたはずだった。地区新人大会が迫った、10月だっただろうか。家庭の事情や、ハードな練習についてこれないことを理由として、下級生3人が退部を申し出てきたのだ。選手は4人となり、新人戦は欠場するほかなかった。それでも引退した当時の上級生や卒業生の協力で、練習試合やスプリングキャンプで試合経験を積み、練習を続けた。昨年の3月には退部したうちの1人が戻ってきて、やっと自前のチームでゲームができるようになった。5月の地区予選の代表決定戦、終始リードしていたものの、人海戦術で向かってくる相手チームに対して、5人で戦い続けた我々は、最後の最後で運動量が落ち、数点差で敗れてしまった。悔しい敗北だった。それでも3年生は下級生のために夏のウインターカップ予選まで付き合い、県レベルの大会で2日目に残った。悔しいこと、辛いことがたくさんあった高校バスケだっただろうが、焼肉の会での顔は輝いていた。

 今日の一枚はロックだ。イーグルスの1973年作品の『ならず者』である。アルバムとしてもたいへんすぐれた作品だと思うが、現在の私が聴くのはほとんどタイトル曲の「ならず者」のみである。「ラヴ&ピース」を合言葉に、自由を求めて社会に背を向けた1960年代後半の若者たちが、大人になって「社会」からの孤立に直面したことを歌った曲だ。「社会」との関係を考え直し、もう一度社会とのつながりを回復すべきことを訴えた歌であり、観念にがんじがらめになってしまった「生」からの脱出を説いた歌である。その意味で高度に大人の歌である。曲の美しさ、素晴らしさはもちろんであるが、社会の中での人間のあり方をテーマにするところが、私にとってのイーグルスの魅力だ。

 「いい子」も「悪い子」も、教師にとって生徒はみな「ならず者」である。それはひとつには予定調和的でないという意味であり、もう一つにはそれでも無視できる存在ではないという意味においてである。退部してしまった下級生も、それでもがんばり続けた部員たちも、そして焼肉をとんでもなくたくさん食べた卒業生と下級生たちも、みんな「ならず者」である。Desperado・・・。

「ならず者」
正気に戻ったらどうだい
もうずいぶん長いこと空をながめては思案しているようだね

全く気難しい奴だな
君なりの理由があるのは僕にもわかっているけど
君を喜ばせているそうした理由ってやつが
どういうわけか君を傷つけることだってあるんだよ

なあ、ダイヤのクイーンは絶対引くなよ
そいつに力があれば君をひっぱたくだろうね
いつだってハートのクイーンが確実なんだって知ってるだろう?

ほらテーブルの上には
いいカードが並んで待っているように僕には思えるんだ
だけど君は手に入らないものを求めるばかりだね

「ならず者」
時が遡るってことはないんだよ
君の痛みや飢え
それらが君を心休まる場所へと駆り立てる

そして自由、ああ自由か、そうだな
そんなこと話す奴もいるってだけのことさ
君は檻に入ってこの世を歩き回っているんだから
たった一人でね

冬になると足が冷たく感じないかい?
空が雪を降らせることはなく、太陽も輝かないなんて
昼と夜を区別することも難しいんだね
心の浮き沈みというものを君は全て失いつつあるよね
そんな感覚がなくなってしまうなんておもしろいことなんかじゃないだろう?

「ならず者」
正気に戻ったらどうだい?
柵から下りてきて門をあけなよ
雨が降っているかもしれない
だけど君の頭上には虹が広がっている
誰かに愛してもらうんだ
今ならまだ間に合うのだから。。。



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