☆今日の一枚378☆
Cream
Goodbye
ジャック・ブルースが死んだ。にわかには信じられない感じだ。勿論、よく考えれば1943年生まれのジャック・ブルースはもう71歳だったのだけれど、若い頃、ずっと聴いていたせいか、同世代とまではいかなくても、何かもっと身近な存在に感じていたのだ。
1969年リリースの『グッバイ・クリーム』である。クリームの作品の中で、私が最初に買ったアルバムである。1970年代末のことだったように思う。リリースから10年ほど経過した頃ということになる。。エリック・クラプトンやビートルズを経由してクリームを知った私は、クラプトンとジョージ・ハリスンの共作による「バッジ」を聴きたくてこのアルバムを買ったのだった。1968年にクリームが解散した後、プロデューサーのフィリックス・パパラルディーがライブ音源とスタジオ録音音源をまとめて制作した作品である。仲が悪かったといわれるジンジャー・ベイカーとジャック・ブルースの間にクラプトンが入ったジャケット写真が今となってはほほえましい。『カラフル・クリーム』や『クリームの素晴らしき世界』に比べるとワンランク落ちるような印象を持っていたのだが、しばらくぶりにレコードジャケットを手に取ってみると、「バッジ」以外にも、「アイム・ソー・グラッド」や「政治家」あるいは「トップ・オブ・ザ・ワールド」など印象深い楽曲が収録されており、演奏の質も高い。
改めて思うのだけれど、クリームは真のスーパー・グループと呼ぶべきバンドだった。Youtubeなどの映像を今見てしみじみと思う。ドラムス・ベース・ギターと弱点がない。たった3人であの分厚いサウンドを作り出していたことだけでも驚きだ。後の商業的な成功ゆえに、エリック・クラプトンばかりが遡及的にクローズアップされがちであるが、ジャック・ブルースのベースと、ジンジャー・ベイカーのドラムは、他に比肩することのできない程ハイレベルな演奏だ。特に、ジャック・ブルースの重くドライブするベースの存在感とポテンシャルは驚異的なものだ。ロックの世界で彼の後に、彼を超えるようなベーシストはいないんじゃないだろうか。ジャック・ブルースこそ、真の天才ベーシストだと思う。今聴くと、クリームの楽曲はメロディーがシンプルすぎて稚拙に感じることは否めない。けれども、そこで繰りひろげられるインプロビゼーションのレベルは本当に驚異的としかいいようがない。もちろん、聴いていた当時からそう思っていたが、今聴いてもそれは全然変わらないし、むしろその本質的な凄さが身に染みて理解できるほどである。
ジャック・ブルースを偲んでクリームを聴こうかと思ったが、レコードプレーヤーもカセットデッキも故障中で聴くことができない。Youtubeの動画をipadに接続した小型スピーカーで聴くことができるだけだ。ああ、クリームを大音響で聴きたい。しかしそれにしても、やはりCDも買っておくべきだな、などと思いながら、一方でこの記事を書き終えたら近所のスーパー銭湯に行こうかなどと考えている私は、やはり単なるオヤジというべきなのだろうか。
さようなら、ジャック・ブルース
2014年10月25日、ジャック・ブルース死去。
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