◎今日の一枚 350◎
Stan Getz
Anniversary
このブログの中心になってしまった「今日の一枚」も、やっとというべきだろうか、今回で350枚目である。最初の「今日の一枚」のジョアン・ジルベルト『声とギター』のアップが2006年7月11日(火)だから、もう7年以上経過している。時間がたつのは実に早いものだ。小学6年生だった長男も、もう高校3年生である。1000枚ぐらいは簡単に取り上げられると根拠もなく考え、軽い気持ちではじめてしまったが、生来の怠け癖で何度も中断し、あの大地震と大津波なんかもあったりして、1000枚などは夢のまた夢である。平均すると、ブログのアップはCD、LPの増殖には全然及ばないようなので、自分の所有するアルバム全部を取り上げるのは、一生かかっても無理だということがはっきりとわかった。だからといって、もうやめようとも思わないので、これからもダラダラと更新することになるのだと思う。これからもよろしくお願いします。
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350枚目の「今日の一枚」は、スタン・ゲッツの晩年の作品、1987年録音の『アニヴァーサリー』である。デンマークはコペンハーゲンの"カフェ・モンマルトル"でのライブ盤である。
バーソネルは、
Stan Getz(ta), Kenny baron(p),
Rufus Reid(b), Victor lewis(ds)
以前も取り上げたように、癌と戦いながら音楽活動を続けた晩年のゲッツについては、本領は若い頃の流れるようなアドリブ演奏にあるとして、その積極的な評価を留保するのが批評家筋の一般的傾向であろうか。また、例えば村上春樹氏が「その音楽はあまりに多くのことを語ろうとしているように、僕には感じられる。その文体はあまりにフルであり、そのヴォイスはあまりに緊密である」(『意味がなければスウィングはない』)と語るように、「人生の物語」の重さゆえに、日常的に愛好することを忌避するという人も多いようだ。
しかし、私は聴いてしまうのだ。特に、この"カフェ・モンマルトル" のライブはいい、名盤『ピープル・タイム』などに比べて深刻な雰囲気がない。日常生活の中で、時にはBGMとしても聴いている。いつもながら、流麗で淀みのないゲッツのテナーが堪能できるとともに、その温かく、デリケートな音色に魅了される。気分がいい。ただ、気分がいいといいながら、そこに人生の哀しみのようなものを感じてしまうのは、やはりゲッツの音楽の持つ"深さ" なのだろうか。
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