●今日の一枚 146●
Barney Wilen
Passione
1996年に59歳で急逝したバルネ・ウィランの遺作『パッショーネ』。死の一年前の1995年に吹き込んだ作品だ。
晩年のバルネ・ウィランの作品は、どれも好きだ。うまく表現できないが、何というか《 余裕 》のようなものが感じられるのだ。どんな曲を演奏する時も、一歩ひいた醒めた視線を感じる。音楽を対象化しているといってもいいかもしれない。それを《 成熟 》とか《 枯淡の境地 》とか呼ぶこともあろうし、《 ジャズとしての緊張感の喪失 》ということもあるのだろう。しかしいずれにしても、私は晩年のバルネの音楽をとても好ましいと感じている。大人の音楽として安心して聴くことができるのだ。
このアルバムもそうだ。地中海の明るい日差しを感じる一方、哀感漂う演奏が素晴らしい。しかも、その哀しみの中に決して没入することがない。バルネは、その哀しみに共感を込めつつも、対象化して眺めているようだ。あまりにうがった観念的な感想だろうか。
イタリアのトランペッター、エンリコ・ラヴァ。本当は好きなプレーヤーではないのだが、このアルバムでの演奏は別だ。④ エスターテ のミュート・プレイに脱帽だ。痺れる。
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