WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ウィッシュボーン・アッシュの百眼の巨人アーガス

2006年09月02日 | 今日の一枚(W-X)

●今日の一枚 37●

Wishbone Ash     Argas

Cimg1660_1 今週は忙しかった。音楽に向き合う余裕もあまりなかった。今、土曜日の朝6:00、やっとスピーカーの前に座っている。しばらくぶりに、ロックが聴きたくなった。古き良き時代のちゃんとしたロックが……。

 ウィッシュボーン・アッシュの1972年作品  「百眼の巨人アーガス」。いい……。正統的ブリティッシュ・ロックとはこういう作品をいうのだ。過剰なものをすべて削ぎ落としたかのような、ハードだが不思議に静けさを感じるサウンド。ゆっくりときちんと歌いこむボーカル。そして、ブルースフィーリング溢れる哀愁の旋律。

 side-1②Sometime World、side-2③Warrior などいい曲がそろっているが、私はなんといってもside-2④のThrow Down The Sword (武器よさらば)が好きだ。このバンドの「売り」であるツイン・リードギターが最良のかたちでフューチャーされている曲だ。テッド・ターナーとアンディー・パウエルのギターは、どちらが主/副ということなく、互いに別々のソロを弾くが、それが微妙に絡み合いひとつの「演奏」となってゆくさまは、実に聴き応えがある。しかも、その旋律はブルース・フィーリング溢れる美しいものだ。後の、イーグルスの構成的でドラマティックなツイン・リードとは、まったく違った演奏の形を示している。

 渋谷陽一ロック  ベスト・アルバム・セレクション』(新潮文庫)によれば、イギリスの手厳しい批評家ジョン・ピールでさえ、このウィッシュボーン・アッシュというバンドの演奏の、オリジナルの豊富さ、メロディーの美しさ、そのエネルギッシュさに感服しているという。

 もう、30年以上前のバンドだが、現在でもそのサウンドの素晴らしさは色褪せることはない。若い世代がこのようなすぐれたバンドの演奏に触れる機会が少ないのは残念なことだ、そう思う。


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