WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

キース・ジャレットのザ・メロディー・アット・ナイト・ウィズ・ユー

2006年07月24日 | 今日の一枚(K-L)

● 今日の一枚 14 ●

Keith Jarrett   

The Melody At Night With You

Scan10002_4  今、夜中の2:30だ。考えるべきことがあってこんな時間になってしまった。となりの寝室では子どもたちが寝息をたてている。めずらしく、私を慕ってやってきたのだ。私はひとり書斎でアンプのボリュームをしぼってこのCDを聴いている。

 豊かな時間だ。ほんとうに時間がゆっくり流れているのがわかる。若い頃の、わたしの気性と生活からすると夢のようだとふと考える。Keith Jarrett のソロアルバム The Melody At Night With You (1999年作品)は、こうやって聴く作品だ。美しいメロディー、繊細なタッチ、透徹したロマンチシズム。じっと耳を傾けていると、あまりの美しさに涙がこぼれ落ちそうになる。繊細な指先で奏でられる音楽は、いつものキースではない。あの緊張感にあふれた、鬼気迫るような、そして時として神経質なキースの演奏ではない。もっとくつろいだ、音楽に対するまっすぐな愛情だけで奏でられた愛すべき音たちだ。

 少女趣味な文章を書いてしまった。恥ずかしい。① I Love You Porgy 。ビル・エヴァンスにも素晴らしい演奏があった。けれど、これもいい。双璧だ。他の曲もいい。すべてがいい。

 家族が寝静まった後、ゆっくりと流れる豊かな時間を過ごすための一枚である。よく見ると、ジャケットもなかなかいいじゃないか。

 豊かな時間……。豊かな音楽……。


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