WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ゲッツのルースト盤

2020年12月06日 | 今日の一枚(S-T)
◎今日の一枚 443◎
Stan Getz
Split Kick
 雑誌『文學界』11月号(2020)は、「JAZZと文学」の特集だった。結構売れたのではないだろうか。何かでこのことを知り、書店に急いだ時にはすでに売り切れだった。隣町の書店にも足を延ばしたが、やはり売り切れだった。たまたまたAmazonで手に入れることができ、ほっとしている次第である。
 その巻頭の「村上春樹さんにスタンゲッツとジャズについて聞く」(聞き手:村井康司)で、次のような発言があった。
あと、ホーレス・シルヴァーが入っている時代も好きです。「スプリット・キック」とか入っているやつ(スタン・ゲッツ・オン・ルーストVol.2)。ドライブが利いているホーレス・シルヴァーのピアノにスタン・ゲッツもお尻から追いまくられるみたいで、かっこいいんですよね。( 中略 )ホーレス・シルヴァーはゲッツが発見したから。それに比べると、アル・ヘイグ、デューク・ジョーダンといったピアニストはちょっとボルテージがひくいんです。その分、ゲッツは落ち着いてプレイしているんだけど、ホーレス・シルヴァーのあのドライブ感は捨てがたい。やっぱり刺激を受けないと燃えないところがあるから。
 ???。オン・ルーストVol.2??。調べてみると、例の「ディア・オールド・ストックホルム」が入った"The Sound"がオン・ルーストVol.1なのですね。確かに、"Split Kick" のジャケットの下の方には、"STAN GETZ ON LOOST VOL.2"と印刷されている。レーベルに興味がないわけではないが、ちょっと上の世代の、ジャズ喫茶のマスターのような人たちみたいに、レーベル名を冠してレコードを呼ぶ習慣がないので、ピンとこなかったのだ。そういえば、20年ほど前、このルースト盤がCDで復刻された際、"The Sound" だけ買って、"Split Kick" はそのうち購入しようと思っていたのだった。
 「ホーレス・シルヴァーのピアノにお尻から追いまくられるみたい」というのもうなずけるほどに、小気味よくスウィングする感覚が何とも言えずいい。1950年代的な録音とサウンドにも関わらずだ。それにしても、スタン・ゲッツは相変わらず元気だ。というか、若かったのだから、当たり前か。そう思わせるほどに、ゲッツの演奏はいつの時代でも流麗で淀みがない。
 音が伸びやかなところが何とも言えずいいのだ、ゲッツは。



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