●今日の一枚 140●
Miles Davis
Someday My Prince Will Come
昨夜、ウイントン・ケリーをしばらくぶりに聴いたら、くせになってしまったようだ。身体にゆっくりとしみわたるようなケリーのサウンドが耳について離れない。
そこで、ウイントン・ケリー入りのマイルス・デイヴィス、『Someday My Prince Will Come』、1961年録音作品。ジャケットの女性はマイルスの二番目の奥さんらしい。モード手法による名演のひとつと言われる作品だが、実にリラックスした雰囲気のマイルスだ。金字塔『カインド・オブ・ブルー』の二年後の録音ということで、モード演奏もこなれてきたということだろうか。
バランス的に大きな音で明確な輪郭をもったマイルスのミュートプレイが好ましい。『カインド・オブ・ブルー』とは一味違った魅力がある。グループサウンドを聴く作品である『カインド・オブ・ブルー』に対して、マイルスのトランペットを聴くのであればこちらの方がいいともいえる。
② Old Forks にジーンとくる。左チャンネルから聞こえてくるウイントン・ケリーのピアノはなかなかに瑞々しい。例えば、後藤雅洋氏が「マイルスコンボの前任ピアニスト、レッド・ガーランドと比べてみても、音色の輝き、タッチの切れ、リズム感において、明らかにケリーの方が優れていることが納得できよう」と過大な評価ををあたえるのもちょっとは理解できる。
しかし、私の耳はやはり右チャンネルから聞こえてくるジョン・コルトレーンのテナーに釘ずけだ。フレーズが、音が、かっこいいのだ。ライナーノーツの岩浪洋三氏が「コルトレーンが加わるだけで、演奏がいかに引き締まるかを実証してしまった」と記すように、コルトレーンの印象は非常に強い。そしてその印象は、アルバム後半に行けば行くほど強まってくる。マイルスとコルトレーンのかけあいの世界になってくるのだ。⑤ Teo などはその真骨頂といってもいいかもしれない。
当時コルトレーンは独立していたが、たまたまニューヨーク市内で演奏していたのをマイルスが口説いて、ゲスト出演を実現させたということらしい。そして、コルトレーンとマイルスとのセッションはこの作品が最後となった。
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