WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

あのくたらさんみゃくさんぼだい

2021年04月17日 | 今日の一枚(I-J)
◎今日の一枚 495◎
Joe Henderson
Mode For Joe
 「あのくたらさんみゃくさんぼだい」、レインボーマンである。漢字では、「阿耨多羅三藐三菩提」と書くらしい。私も最近知った。もちろん仏教用語である。《一切の真理をあまねく知った最上の智慧 》、あるいは《真理を悟った境地》のことをいうようだ。当然であろう。レインボーマンは、インドの山奥で修行して提婆達多(ダイバ・ダッタ)の魂を宿しているのだ。 ヤマトタケシは、この「あのくたらさんみゃくさんぼだい」を三唱した後、「レインボー・ダッシュ○○」と叫び、必要に応じて、七つの化身のうちのいずれかに変身するのである。七つの化身とは、月の化身(ダッシュ1)、火の化身(ダッシュ2)、水の化身(ダッシュ3)、草木の化身(ダッシュ4)、黄金の化身(ダッシュ5)、土の化身(ダッシュ6)、太陽の化身(ダッシュ7)である。一週間である。七つの化身=七曜=虹の七色ということで、レインボーなのであろう。ヤマトタケルを思わせるヤマトタケシが、仏教的な化身に変身するのである。神仏習合である。
 内容は、もはやよく覚えていない。webによると、東南アジア諸国など、かつて日本に侵略された国の人々による秘密結社「死ね死ね団」が、日本人を憎悪し復讐するため、日本国家の滅亡と日本人撲滅を企むという設定だったようだ。だから、敵は怪人や宇宙人ではない。人間の、反日国際テロ組織なのだ。「死ね死ね団」の手口はすごい。毒薬や麻薬を配布したり、偽札をばら撒いて日本経済を大混乱に陥れようとしたり、地底戦車で人工地震を発生させたり、あるいは同時爆破テロを計画したり、石油輸入の妨害や、要人の誘拐などもあったようだ。 
 ヤマトタケシは、こうした敵と祖国を守るために戦うのである。しかし、私生活を犠牲にして戦いに明け暮れる日々に疑問をもったり、戦えば戦うほど師の提婆達多の平和を希求する教えから遠ざかっていくのではないかと悩んだりする。 
 すごい物語である。定年したら見てみたいものだ。
 さて、今日の一枚は、ジョー・ヘンダーソンの1966年録音盤、『モード・フォー・ジョー』だ。パーソネルは次の通り。
Lee Morgan(tp)
Curtis Fuller(tb)
Joe Henderson(ts)
Bobby Hutcherson(vib)
Cedar Walton(p)
Ron Carter(b)
Joe Chambers(ds)
 フォーマットは、三管フロントによるハードバップそのものだが、音楽のイディオムは完全に60年代新主流派的である。シダー・ウォルトンのピアノがサウンドの傾向を規定しているように思える。一曲目から、全体を引っ張るようなスピード感で展開されるジョーヘンのソロが素晴らしい。後に続くメンバーたちも、そのスピード感を維持しつつ、流麗なソロを展開する。アクセントをつけるヴァイヴが何ともいえず、いい味を出している。
 ジョーヘンは基本的に好きだ。


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