●今日の一枚 119●
Bill Evans From Left To Right
ビル・エヴァンスがエレクトリック・ピアノ"フェンダー・ローズ"を使用したことで有名な『フロム・レフト・トゥ・ライト』。1969年の録音である。
マイルスの『ビッチェズ・ブリゥー』も1969年の録音であるが、電化の波がジャズ界を席巻する中、「僕は関係ないもんね」といっていたと思ったエヴァンスが電化サウンド盤をだしたということで、ちょっとびっくり、出来もあまり良くないということで評論家のような人たちにはえらく評判が悪い。例えば、『ジャズ批評別冊 ビル・エヴァンス』に掲載されている大村幸則氏と高木宏真氏の対談では、高木氏は「これはいったい何を考えているんでしょうかねぇ」といい、大村氏も「どこまで深く考えたのか……。あとから反省しているて゜しょ(笑)」と切って捨てている。
けれども、私はここ数年このアルバムを好んで聴いている。今聴くと、なかなか新鮮なのだ。確かに、エヴァンス独特の繊細なタッチはエレピでは難しいようだが、フェンダー・ローズの左右のチャンネルに揺れる感じのサウンドがそれを補っている。優雅で内省的で感傷的なサウンドだ。
ただ、このCDに関していえば、皮肉な話だが、オリジナル・トラックの①~⑨より、ボーナス・トラックの⑩~⑬が、私のお気に入りだ。オーケストラ入りの①~⑨より、カルテット演奏の⑩~⑬の方が、よりシンプルにエヴァンスのエレピやピアノの感傷的な雰囲気が伝わってくるように思う。⑩ What Are You Doing The Rest Of Your Life ? (これからの人生)や⑬ Lullaby For Helene の感傷的な雰囲気は筆舌につくしがたいし、⑪ Why Did I Choose You ? や⑫ Soiree の寛いだ開放的で解放的な雰囲気も何ともいえず良い。
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