●今日の一枚 27●
Bill Evans
You Must Believe In Spring
多くの日本のジャスファンがそうであるように、私も Bill Evans が好きである。20数年間のジャズ聴きの歴史の中で、おそらくは一番多く私がターンテーブルにあるいはトレイにのせたエヴァンスの作品がこのアルバムだ。ところが、1977年録音のこの作品はいわゆるジャズ入門書の類で紹介されることは少なく、エヴァンスをちゃんと聴いているファン以外には有名であるとはいえない。それもそのはず、この作品はエヴァンス没後に追悼盤として発売されたものであり、エヴァンスの意志で発表されたものではない。それに加え、ベーシスト、エディ・ゴメスとの活動も11年目に入り、マンネリといわれた時期の作品なのだ。
にもかかわらず、私はこの作品を名盤であると確信している。トリオのインタープレイの緊張感では、リバーサイド四部作に一歩譲るが、絶妙なタッチとリリシズムに支えられた極上のセンチメンタリズムに満ち溢れた作品である。普段饒舌なゴメスのベースも抑制の効いたものとなっており、何より演奏全体の響きが深いと思う。
全7曲どの演奏も素晴らしく、まったく聴き飽きしない。ピアノもベースもドラムも音数を少なくおさえて、音の間を聴かせる。カラフルではないという意味でまさに「墨絵のような世界」だ。
ジャズ本などではあまり取り上げられない作品だが、数年前、友人のJ氏もこの作品をたいへん気に入っていると聞いて、やはりそうだったかと確信を深めた次第である。なお、その後この作品を高く評価している批評家も結構いるということを知り、さらに自信を深めたのだった。
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