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村の行事は元旦祭、祈年祭(三月二十九日)厄神祭(五月四日)例大祭(夏祭り七月二八日二九日)風神祭(八月二八日)新穀感謝祭(秋祭り十一月二十八日)大祓い(十二月三十一日)である。
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(写真は平成三十年の祭りの様子です)
現在では各年番の家にて神輿を留め、祓いを行うだけとなっているが、久伊豆社、雷電様二柱の御神体を乗せ神輿を出すこと自体が過疎化の進む地域では貴重な祭事となっている。慣例で神輿渡御の後に行われる直会は大皿の料理を氏子皆で囲む。
残念ながらコロナ禍の影響で直会はもちろん神輿の渡御もここ三年中止となっている。
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また厄神祭においては五色御旗(幣束)と毎年新たな下駄が奉納される。下駄については戦後まで氏子も含めて厄神祭には新たな草履で祭事に当たったそうである。現在でも神職が履く下駄は毎年新しいものが市内の履物店で用意されている。それだけ村の厄除けの意味合いを重んじていたのである。
こうした厄神祭神事は戦前まで多くの農村地域で執り行われていたことが「埼玉の神社」等で伺い知ることができる。お隣の熊谷市古宮神社においても現在でも五月の初めに当社よりも大規模な厄神除け神事が行われているそうである。
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七月の例大祭は灯篭祭りと称し、前夜のヨミヤには氏子が思い思いの絵を灯篭に描き境内と参道を飾る。境内と鳥居を花で彩り、翌日の祭典ではお供えとお供物を直会にて配る。昭和六十年代まではカラオケなど盛大に行われ、近年まで子供神輿も担がれていた。また夜祭は地元青年部主催の催しが行われ、氏子の年に一度の大きな楽しみとなっている。(ここ三年同じようにコロナ禍のため、祭典を除き自粛しているが非常に残念だ)
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八月の風神祭は嵐除けの風祭と呼ばれる農耕祭祀である。立春から数えて二百十日は農家の厄日であり、稲の発芽を迎える大事な時期である。嵐除けの神事が古くから行われ、これが終わると宝登山神社へ講社として代参している(宝登山皿尾講)末社として上座に稲荷神社、下座に風神社が並ぶ。こうした末社の並びも恐らく先人たちが意味を持って並べ祀ったと考えられる。
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八月の風神祭と三月祈年祭にのみ黒豆を入れたご飯を炊く。オミゴクと呼んで御神前に奉納し、氏子へ配る。これはまさしく農村部が行ってきた祭祀の一つで、豊作を願う祈年祭と嵐除けを祈る風神祭のみに行われる。おそらく真っ黒になるまでいたつきはたらくという誓約の意味があるのだろう。大祭や新嘗祭にはお供えと赤飯を奉納していることから、非常に貴重な風習だと考えられる。(おせち料理の黒豆と同義であろう)
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境内地には多くの南天の木が生える。古くから虫封じの祈願も多く厄除け諸難除けの信仰も厚い。
氏子
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氏子はお鎮守様が麻が嫌いなので麻の着物は遠慮したという。また名前にアサとはつけなかったともいう。またお鎮守様はトウモロコシで目を突いてしまったため、畑の作付けにトウモロコシは植えてはならないとも伝わる。こうした作物の禁忌は各地で残り、隣の小敷田春日様でも同じ言い伝えがある(禁忌伝承)これはおそらく維持が難しい田んぼからの転作を戒める意味があるのだと考えられる。これを遡れば斎庭の神勅まで遡ろう。同じ作物でも米だけは豊かな水がなければ続かない。田んぼ自体が維持できないのである。
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氏神である大雷神社(雷電様)には風神雷神の彫が施される。
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雷に対しても落雷したところはお祓いするまで注連縄を張り、神の神徳を願ったという。明治期までは雷が落ちると「もったいない」と言っていたという。
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忍城戌亥の守護神として、また農村部の耕作神として代々受け継がれてきた信仰は、令和の御代を迎えてなおその御神徳を村に授けている。
また近年では花手水を奉納し、近隣からの参拝者も多い。
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三嶋大明神が導く神社の起源は八百年の時を超え今なお多くの人々に支えられ、その威光を輝かせているのである。
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最後まで久伊豆大雷神社の由緒と歴史、現在の祭りに至るまでの拙文をご覧いただき誠にありがとうございます。
皆様に神の御神徳が授かりますことを皿尾の地から祈っております。お参りの際にはどうぞお声かけくださいませ。
祭事に対するお問い合わせもこちらにいただければ幸いです。
久伊豆大雷神社 第二十三代 宮司 青木 孝茂
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