学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

2月のある日

2025-02-20 21:00:44 | その他
この1週間ばかり、頭痛、胃痛、胸痛と体中が痛いところばかりでどうしようもない。精神は若いつもりだが、体は順調に年を重ねていて、少し無理をすると、この通りである。精神と身体のバランスを取るのはなかなかに難しい。

仕事の関係で、藤森照信氏の『建築探偵の冒険』(ちくま文庫)を読んでいる。歴史を重ねてきた近代の建築の、ひとつひとつのストーリーが面白い。後日談として、調査当時にあったものが今は無くなってしまった事もちらほら紹介されているが、そこに著者の悲観的な言葉は一切ない。私なぞは、ヨーロッパ各国と比較して、これだから日本というものは、とやりたくなるところだが、メンテナンスの経費、家族の様々な事情、社会の移り変わりなどを考えてみれば、歴史ある建物は残して欲しい、というのは、何の責任もないから気軽に言えるのであって、自分の浅はかさにあきれかえる。

昨日はちらほら雪が降った。まだ寒い日はしばらく続きそうである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

炎暑

2024-08-19 21:47:37 | その他
 今夏も35度近い気温が続き、我々は怠惰の誘惑にさらされている。常日頃、いかに精神を鍛錬しているかが個々に問われるだろう。酷暑、の言葉をテレビや新聞、雑誌で頻繁に見かけるようになった。暑さが酷い、とはよく言ったものだが、永井荷風の『断腸亭日乗』(岩波文庫、2024年)を引くと、彼はこういうときに炎暑の言葉を使う。燃え上がる炎のような暑さ。レトリックは言葉に一層の膨らみを持たせる。
 茨城県近代美術館のコレクションに安田靫彦の≪鴨川夜情≫(1932年)があって、この絵は、いつまでも眺めていられるほどの魅力を持っている。これは鴨川にかけた四角い縁台のうえに、髷を結った男性3人が座ったり、寝そべったりしている、ただそれだけの絵である。しいていえば、縁台の端に乱れず直立した瓢箪と盃、その下には静かでゆるやかな鴨川が流れ、ところどころ誇張された川原石が愛らしい。あとはぽっと照る提灯が描かれるのみ。画面の大半は余白がしめ、余計なものが一切ない。安田は、いわゆる歴史画を主題とした作品を数多く残した。だから、この3人も歴史上のある人物であることは間違いない。だが、彼らが一体誰なのか、そして、どんな関係性なのかを考えることは、もはや野暮でしかない。この絵そのものの魅力を楽しめばいいことで、それは、ゆたかな時間の流れに尽きる。江戸の趣味というものを、表層的に捉えたのではないところの。
 この美術館の北側には、千波湖がいつもゆたかな水をたたえていて、この日は暑いながらも涼を求めて多くの人が散歩を楽しんでいたし、美術館の中も子どもから大人まで多くの人たちが絵を楽しんで見ていた。湖の対岸には水戸藩主徳川斉昭の造園した偕楽園がある。偕楽園は、人が皆で楽しむ園と書く。実際、ここは斉昭の意向によって、武士だけでなく、庶民にも大いに開放され、多くの人がここで風流を楽しんだという。そういう水戸の精神のようなものが、この美術館にも息づいているように感じられ、また心持ちが良くなった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

迎え盆

2024-08-13 21:01:13 | その他
 両手いっぱいに黄や白の花を抱えた年配の女性と、おそらくはその娘、さらに孫らしい女の子が、狭い歩道を一列に並んで、暑さに顔をしかめながらもしっかりと歩いている様子を見かけた。今日は迎え盆。ご先祖様があの世からこの世へやってくる日である。
 子どものとき、お盆は必ず東北の両親の実家へ行って、墓参りをするのが常だった。みなで墓参りを済ませると、蝋燭の火の種を家紋の入った提灯にうつし、それを消さないように用心しながら家まで持ってゆく。それから仏壇の蝋燭にその火をうつし、これでご先祖様を家にお迎えしたことになるのだった。仏壇の前にはたくさんの料理が並び、祖父母、両親、親戚一同20人くらいが、一同に会食する。お酒も出たが、ご先祖様の前だからか、みなたしなむ程度。子どもながらにいつもの食事とは異なる厳かな雰囲気を感じていた。それが私にとってのお盆の光景である。今から30年近く前の。
 祖父母や親戚の多くがもう亡くなってしまったせいなのか、または社会人になって盆休みが無くなったせいなのか、あるいはそういう時代のせいなのか、季節と共にあったはずの年中行事から、年々縁が遠くなってしまっていて、ゆえに墓参りに赴く女性たちの姿を見かけたとき、今を生きている実感というものが心の中にこみ上げてきた。日常のなかで忘れられがちな、こういう「今」への感覚は大切にしてゆきたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/11

2024-03-11 20:13:00 | その他
 今日は月曜日で美術館は休みでしたが、どうしても片付けたいことがあって、午前中は仕事をしていました。私の場合、あまり仕事のONとOFFを厳密に分けることをしていません。というのは、美術に関わることはライフワークと思っているので、切り離すことができないのです。休日ですが苦もなく、というより、引っかかっていたことがスッキリして、かえって良かった1日となりました。
 今日は東日本大震災から13年目の日。被災、美術館の建物と作品の総点検、計画停電、避難者の受け入れ…色々と緊急の仕事をした記憶が蘇ります。幸い、私の家族は誰も怪我することなく無事でしたが、私が少年時代に過ごした街並みは被災で大きく変わり、以来、私は故郷とどこか縁遠くなった気がしています。
 震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/09

2024-03-09 18:33:00 | その他
 漫画家の鳥山明さんが亡くなられたとのニュースがありました。私の少年時代がまたひとつ遠くなった気がします。
 子供の頃、私も含めて、みんながドラゴンボールファンでした。グッズやカードダスを集めるのはもちろん、自由帳に悟空の絵を真似して書いたり、放課後にかめはめ波を撃つ練習をしたり、強者になると週間少年ジャンプの原作に色を塗り、カラーで漫画を楽しむ人もいました。
 私はアニメから入り、その後、原作へ。夏休みに祖父母にねだってコミックを買ってもらったことをついこの間のように思い出します。漫画は子供が読むもの、といっていた父ですら、ドラゴンボールだけは読んで楽しんでいたのでした。ドラゴンクエストのキャラクターデザインの仕事も忘れられません。
 先日、このブログで1989年には未来への希望があった、と書きました。今にして思えば、私たち、当時の子供にとってはドラゴンボールやドラゴンクエスト、ドラえもんなどの数々の冒険譚があって、それらを読んだり、プレイすることで、大人たちからたくさんの夢や希望をもらってきました。
 私たちに生きることの楽しさを教えてくれた鳥山明先生に心から感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/08

2024-03-08 20:27:00 | 仕事
 今日は朝から雪。今年は3月になってから雪が多く、そのせいか、花粉症が楽でとても助かります。季節もだいぶ春めいてきて、日は長くなりましたし、タンポポも一輪見かけました。季節は少しずつ進んでいるようです。
 さて、今日の午前中は細々とした仕事を片付け、午後は次回の展覧会で展示する作品の点検をしていました。ガラスケース越しではなく、間近で作品をチェックする。学芸員冥利に尽きる仕事です。改めて作品を近くで眺めると、今まで気が付かなかったことにも目が行く時があり、やはりモノを見ることの大切さを実感します。
 それが終わってからは、依頼されていた原稿の仕上げ。誤字脱字のチェックや写真図版の準備などをしていきました。メドがついて、ほっと一安心。依頼された仕事は絶対に期限内に終わらせること。私が新人の時、館長から教えていただいた言葉です。自分が信用に足る人間かを証明することになると。原稿を書いていると、よく思い出す言葉で、今でも感謝しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/07

2024-03-07 20:31:00 | 仕事
 今日は定例の美術館内の会議の日。私は会議というのが昔から苦手で、それはダラダラと続いてしまうから。
 以前、私は定期的に周りとコミニュケーションを取るような仕組みをつくり、会議をできるだけ開かない方向に持っていきたいと提案したのですが、多勢に無勢…。そこで終了時間を厳密に決めて、メリハリをはっきりつけては、と提案し、今はそれが採用されています。それでも、早く席に戻って自分の仕事をやりたいなあ、と思うことが多々あり。
 話がそれる、肝心なことが決まらないなどの日本式会議のデメリットは今に始まったことではありませんが、今はチャットやリモートでも会議ができる時代ですし、仕事の合理化が進められるなかで、わざわざスタッフ全員を集めて会議をする必要性があるのかどうか検討しなければならない時代でしょう、と私なぞは思ったりするのです。今日の会議に出て、そんなことが頭をよぎりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/06

2024-03-06 20:41:00 | その他
 今日は休みの日。外は朝から雨だの雪だのが降って寒いので、1日を家で過ごしました。
 朝からゴミ出し、掃除、洗濯、食器洗いなど、家事全般をやって、とにかく体を動かします。ゴロゴロしていると、どうしても仕事のことを考えやすく、それがストレスになるので、頭よりは体を動かすことが優先。その後はストレッチをして、体を温めていきます。
 午後は小説を読んだり、画集を見たり、ハイキュー!!を見たり、趣味のプラモデルを作ったり…自分の好きな時間を楽しみました。夜は明日の仕事の段取りです。私の場合、出勤してから段取りを考える時もあるのですが、いまは仕事が立て込んでいるので、夜の30分くらいをその時間にあてます。朝のスピード感を大切に…。
 1日、外へ出なかったにも関わらず、くしゃみが止まらず、いよいよ花粉症が来たようです。花粉症に負けず、明日、仕事を頑張ってきたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/05

2024-03-05 20:34:00 | 仕事
 昨日の日経新聞の記事に「観光大国ニッポンの綻び」として、京都で暮らす人々が観光で来た訪日外国人の余りの多さで、日常生活に支障をきたし、京都市の人口減少が続いているとの記事がありました。
 観光、という点では、これまで多くの博物館は博物館法に基づく運営がなされていたわけですが、2020年の文化観光推進法によって、博物館は観光としての役割も担うことになりました。人もいない、予算もないで、一体どうやってやっていくのか、なかなか頭の痛いところです。
 私の勤める美術館では、インバウンドの集客の前に、まずは地域に住む外国籍の方々が利用しやすいよう、国際交流協会などと連携して、「やさしい日本語」を使ったチラシを導入を始めました。それで実際に来館された外国籍のお客様に色々と意見をいただきながら、やがてはインバウンドに向けての準備を進めていく取り組みです。まだ始まったばかりですが、観光の視点から、少しずつ一歩を踏み出しました。恐る恐るですが…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/03

2024-03-03 21:22:00 | 仕事
 今日は次回展覧会の作品解説を書く仕事をしていました。その作品が、過去の日本美術のどんな作例を参考にしながら制作されたのかを調べながら、作家のオリジナリティはどこにあるのかを書いていきます。文章を書く、というのは、なかなかエネルギーを使うもの。頭を使いすぎて、11時にはお腹が空く始末です。でも、こういう集中して原稿を書く時間は、私にとって楽しいことです。ありがたし。
 さて、私はネガティブなことがあるといつまでも引きずるほうで、それがストレスを増幅させてしまいます。これは心身ともに良くないことと思い、自己分析したところ、ご飯を食べている時、散歩をしている時、車の運転をしている時、食器を洗っている時など、あまり意識をしなくてもできるようなことをしている最中にネガティブなことを考えてしまいやすいことに気づきました。そこで、散歩からジョギングに変えたり、行儀が悪いのですが、食べながら雑誌を見たり、ラジオや音楽を聴きながら運転するようにしたところ、だいぶ気持ちの切り替えができるようになりました。自分のことを考えるのは何より大切なことかもしれませんね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする