学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

梅雨

2016-06-09 22:02:29 | その他
いつの間にやら、私の住むところもいよいよ梅雨入りして、優しげな弱い雨が降り続いています。家の周りを散歩すると、ポピーの花が美しく咲いているを目にする一方で、紫陽花の花も時折見かけるようになりました。こうした花の姿を見ていると季節の移り変わりを間近に感じることができます。

梅雨といえば、困るのは湿気の高さであって、なぜならカビを発生させる要因になるからです。美術の世界で言えば、絵画、特に紙を媒体とした作品への配慮が最も必要になる時期になります。そのため、博物館や美術館等の展示室や収蔵庫は温度20℃、湿度55%程度を目安に温湿度が設定されていて、その数値であればカビの発生を概ね抑えることができるとされています。

1、2年ほど前の今頃、地域の方から蔵の中から古い文書が出てきたので調べて欲しいとの依頼を受け、蔵を調査して文書をお預かりしてきたところ、文書はカビだらけで紙と紙が張り付き、折からの湿気のせいもあって、匂いがひどく、随分難儀した覚えがありました。こうした歴史や美術の仕事に関わっていると、もう仕事上の癖なのか、梅雨といえばカビのイメージになってしまっているのがなんとも言えず…。

こうしたイメージを払拭するためにも、今年はどこか紫陽花の綺麗なところへ出掛けてみたいものです。

レタスの味

2016-06-06 21:45:02 | その他
先日、妻の親戚へ挨拶へ行った時に、お祖母様から自宅で栽培しているレタスをいただきました。露地栽培のレタスで、やや小ぶり。採れたてで、とても美味しそうでした。

家へ帰って、早速夕飯時にサラダにしてレタスを食べてみたところ、甘いのなんの。レタスは苦味のイメージがありましたが、ここまで甘いとは思いませんでした。やはり新鮮な野菜は美味しいですね。ドレッシング無しで美味しく頂けました。

レタスは切り口が赤いものが新鮮で、500円ほどの大きさになってしまっているものは育ちすぎてしまっているのだそう。スーパーで売っているレタスは大体育ちすぎているものが多いので、なるべく直売所へ行って、小ぶりのレタスを買ってきます。

レタスの在庫はまだまだあるので、食べるのがとても楽しみです!

不安を流して

2016-06-05 09:19:09 | その他
仕事中に不安神経症のような症状が出てから、早3年。不安神経症のような、と書いたのは、実際に医者からそう診断されたわけではなくて、私が個人的に調べた結果、そんな症状に似ているなあと考えているだけの話です。

3年の間に内科だの心療内科だの人間ドックで体を見てもらっても、どこも異常なしの健康体。それはそれで嬉しいのだけれど、未だに時折やってくる猛烈な不安感は如何ともし難い。このまま自分が倒れてしまうのではないか、死んでしまうのではないかという感情が頭のなかを巡ってきて非常に苦しくなります。

症状が出始めた頃の私は、美術館で仕事をしていて、まあ、やたらと仕事の多い年で、毎日プレッシャーがかかっているような状態でした。それまで不安を感じることはあっても、その仕事が終わってしまえば、ス~と体が軽くなって酒を飲みに行くほどの余裕があったものですが、その年はス~と感じる間もなく次の仕事が入ってきて、まあそれが原因で心身のバランスを崩してしまったのかもしれません。

この不安な症状で一番ガックリきたのは、それまであった生きる自信みたいなものが一気に崩れ落ちたこと。一人でどこへでも遊びに行けて、いつまでも酒を飲めて、仕事をバリバリこなす。それが出来ない、というか不安で怖くなってしまったことが辛かったです。

3年間、この症状と付き合ってきて思うのは、まあ辛いことは辛いんだけれど、死にはしないんだし、そんな感情はほっておいて自分のやるべきことをしっかりやろうと割り切れたことでしょうか。現在は平日の仕事中に症状が出ることはほとんどなくて、むしろ土日の休日の方が症状が出やすい。理由はわからないのだけれど、何かに集中してると症状が出ないのでしょうか?かえって、気が緩んだりするとそのスキをついて不安がやってくるのかもしれませんね。

さて、今日は日曜日。果たして不安はやってくるのでしょうか(笑)今日も精一杯、一日を過ごしたいと思います!

美味しい野菜を探して

2016-06-03 22:57:05 | その他
近頃、とても関心、興味のあること。それはスーパーや直売所などで美味しい野菜を選んで買うことです。きっかけは、昨年放送されていたNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で青果店の主人が取り上げられたのを見てから。美味しい野菜に徹底してこだわる姿を見ていて、私は今まで食べ物に無頓着だったことに気付かされたのです。

それからというもの、本やネットで美味しい野菜を見分けるコツを調べだし、頭に叩き込んだ知識をお店で野菜を選ぶ基準にする。ときどき失敗することもあるけれど、季節のもので且つ露地栽培の野菜は大抵どれも美味しいようです。

今が旬といえばアスパラガス。なるべく太くて近くで取れたものを買う、ただそれだけで全然違います。私はアスパラガスを焼いて食べるのが好きで、その香ばしさと甘さがやみつきになります。まだしばらく旬は続くので、楽しみがまだまだ味わうことができそう。

そういえば…先日紹介した伊藤若冲の実家も青物問屋でしたね。彼が描いた釈迦涅槃図のパロディ《果蔬涅槃図》を思い出します。釈迦が大根となって、周りをたくさんの野菜が囲む図。微笑ましい作品ですね。スーパーや直売所でたくさんの野菜を見かけると、つい思い出す作品です。

懐かしいアメ横

2016-06-02 21:51:21 | その他
先日紹介した「若冲展」を見終えたあと、一緒に展覧会を観に行った友人がお昼をご馳走してくれるというので、私たちはアメ横へ足を伸ばしました。

アメ横へ行くのは、なんと中学校の修学旅行以来です。上野の美術館や博物館にはこれまで何度も通いましたが、何故かアメ横とは縁遠く。この日は友人が先導して歩いてくれたので、私は後ろをとぼとぼと付いて行きました。久し振りに観るアメ横。修学旅行でアメ横へ行った時、とにかく人が多くて疲れたことと、商品がずらりと並んでいて欲しいものを探すのに随分目移りしたこと、そんなことを思い出しました。そういえば、国立西洋美術館を観る予定だったのが、休館日で見れなかったんだっけ。そんなことも芋づる式に思い出します。

とあるお店で私たちはお昼を食べることにし、エイヒレの炙りやお刺身をつまみに麦酒を飲みながら、会話を楽しみました。どちらかといえば、私は単独であちこち出歩くほうで、友人と出かけるなんてまれなこと。友人に心から感謝しつつ、楽しい時間を過ごすことができました。

《雪中錦鶏図》との初対面

2016-06-01 21:49:31 | 展覧会感想
もうすでに終わってしまいましたが、東京都美術館の「若冲展」を見に行ってきました。ウェブでは相当に混雑するとの情報が流れていて、さぞかし並ぶのだろうと思っていたのですが、待ち時間は90分程度。意外にもすんなりと会場へ入ることができました。(90分が短いという感覚!)

このブログでもご紹介しましたが、私がまだ美術を学び始めたばかりの頃、ひと目で好きになったのが若冲の動植綵絵でした。とりわけ、私が好きだったのは《雪中錦鶏図》です。その作品は、粘液のような雪のなかに、風景と同化したかのような2羽の錦鶏が描かれたもので、今でもどう言葉に表したらいいものかわからないのですが、とにかく私は魅了されたのです。しかし、それは図版でのこと。いずれ本物を観てみたいと思ってはいたものの、なかなか機会はないまま年月は過ぎて行きました。

その《雪中錦鶏図》、とうとう本物を観ることができました。第一印象は思っていたよりも作品が大きい、ということ。(若冲の作品に関しては、どれもイメージしていたより作品が大きかった)そして、私が大学生のときに図版で観た色彩よりも、本物のほうが淡くて優しい印象を受けたということ。

その場にゆっくり立って、私は古い友人に再会したかのような感動を覚え…られれば良かったのですが、なにぶん会場内は混雑しており、あまり余韻にひたる間もなく、移動することになりました。そうして間近では見れなくなったのですが、動植綵絵を一通り見終えたあとに、再びやや遠目から眺めてました。次に会えるのはいつかわかりませんが、この日を忘れることはないでしょう。「若冲展」、とても良い展覧会でした。

「宇都宮藩主戸田氏」展を観る

2016-06-01 00:18:20 | 展覧会感想
小山市立博物館のあとは、栃木県立博物館で開催している「宇都宮藩主 戸田氏」展を観ました。

江戸時代、今の宇都宮市の中心地には宇都宮藩が置かれていました。藩の拠点は宇都宮城。藩主は時期によって様々に交代しますが、戸田氏の治世が最も長かったようです。戸田家は三河時代の徳川家から仕えており、当時の戸田家当主忠次は数々の戦歴があったようです。領地でいえば、江戸時代の初めの石高は伊豆の5000石でしたが、しだいに幕府に重用されるようになり、忠昌の代になると老中に昇格。以後は全国に転封されながらも、6万から7万石の大名として存続しています。

展覧会会場では戸田家のルーツから始まって、戸田家の甲冑、陣羽織、刀剣のほか、江戸の戸田家屋敷を描いた絵図(まるで植物園のような)などの豊富な資料が一同に展示されていました。

私がなかでも気になっていたのは、戸田家8代目の藩主である戸田忠翰(ただなか)の絵画。沈南蘋に影響(正確には沈南蘋の弟子の熊斐)を受けた森蘭斎に絵を学んだとされ、とても見事な花鳥画の作品を残しています。その絵はなかなか写実的ではあるのですが、ほぼ同時代の伊藤若冲のような華やかさはなく、武士らしい無骨な印象を受ける画風です。ポスターやパンフレットにも使用されている《白鴎鸚鵡図》や《白鷺図》などはモチーフが鳥にもかかわらず、どこか筋肉質で力強いものでした。

こうした忠翰の作品を観ていくと、福島県の白河集古苑で観た徳川綱吉の描いた馬図や、仙台市博物館の「宇和島伊達家の名宝展」で見た伊達綱宗の指面、秋田藩の佐竹曙山の秋田蘭画などが思い出され、将軍や藩主のなかにもプロフェッショナルな技術を持ち得た人物がいることに改めて驚かされました。

おそらく戸田忠翰の作品をまとまった点数で観られる機会は早々無いはず。貴重な機会を得ることができて感謝の一日でした。