学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

師走ののんびりした雰囲気

2018-12-23 19:28:14 | 絵葉書
今日は久しぶりに曇り空、ときどきぽつりぽつりと雨がふる1日となりました。このところ、ずっと晴れの日が続いていましたので、またにはこんな日も必要ですよね。

師走も暮れ近くとなり、最近は街の中もなんとなくのんびりした雰囲気が流れています。今年の私の仕事はある程度メドがつきましたので、来年の仕事をできるだけ前倒しで進めています。仕事には追われるな、常に追っていろ、と新人のときに上司から言われたことが忘れられません。仕事を前倒しで進めていれば、気持ちにも余裕を持って取り組むことができ、精神的にもずいぶん楽になります。ときどき自分のキャパシティを超える仕事も舞い込みますが、それはひとまず深呼吸してから、仕事を細かく分解して冷静に進める。それでどうにか乗りこなせています。

今日は依頼されていた原稿を執筆する仕事をこなしました。文章を書く仕事は楽しくてたまりません。たとえ、考えがまとまっていなくても、机に向かって手を動かしていると、なぜか少しずつまとまっていくもの。どうも頭のなかで考えすぎるより、なんでもいいから手を動かしていたほうがひらめきやすいようです。おかげで、原稿は7割程度仕上がり、順調に進んでいます。うれしいことです。

明日はクリスマス・イヴですね。明日は晴れて、夜空の星が見られますように。

絵葉書・仙台城大手門

2016-10-04 20:28:25 | 絵葉書
私は趣味で明治、大正、昭和初期の絵葉書を集めています。絵葉書の魅力は、過去の風景、建物などを通して、歴史と対話できるところにあります。そういう意味では、風景画でも楽しめるのかもしれませんが、作者の目を通して見ることになるので、いくらかのバイアスがかかっています。それに構図の問題で実際の風景や建物がそのまま描かれているとは限りません。一方、写真は対象をありのままの姿で写し出します。そのせいなのか、手のひらに絵葉書を載せて、写っているものに目を凝らすと、なんだか過去と現在がつながっているような気がしてくるのです。

私の仕事柄、古いものが好きなので、被写体について調べることが楽しくてたまらないのです。例えば、建物のことであれば、いつ、どこで、誰が、どんな目的で作ったのか、そして今も残っているのか、ネットを使えば大体のことがわかります。絵葉書1枚から色々な歴史が辿れ、私はシャーロック・ホームズにでもなったつもりで謎を解いてゆくのです。

絵葉書の魅力はそれだけではありません。絵葉書、それ自体の単価がそれほど高くない(笑)手軽に入手できるのは嬉しいことです。それに今でも切手を貼れば絵葉書として使うことができます。以前、私が絵葉書好きなことを知っている方から、空襲で焼失する前の名古屋城の絵葉書で便りを頂いたときがありました。もう涙を流す…ほどでもなかったけれど、とても嬉しかった覚えがあります(笑)今日はそんな私のコレクションのなかから、仙台城大手門をご紹介したいと思います。




仙台城が築城されたのは西暦1601年。関ヶ原の戦いの翌年ですね。青葉山の一角に伊達政宗が築城し、以来、代々伊達家当主の居城となり、江戸時代は仙台藩の政庁として機能しました。写真は仙台城の大手門です。旧国宝。写真に目を凝らすと、門には菊や桐の飾り金具が見えてきます。私はこれを見たときに、長野県の松本城の黒門を思い出しました。大きさは異なりますが、松本城の黒門には同じように桐の飾り金具が装飾されているためです。でも…松本城の黒門は再建されたもので、名古屋城の門を模したそう。であれば、名古屋城と仙台城の門の装飾が似ているということなのでしょうか。



もう1枚は大手門を裏側から写したもの。年号らしき日付スタンプが押されているところをみると、大正15年でしょうか。右側にある櫓は「脇櫓」。大手門とともに国宝となっていました。脇櫓に関しては、1967年に再建されています。私は城郭建築にそれほど詳しくはありませんが、表側の重厚さに比べると、裏側は落ち着いた感じで、どこか寺社のようなイメージを与えてくれます。

最後に、残念なことですが、国宝になっていた大手門と脇櫓は1945年7月の空襲によって焼失してしまいました。仙台城跡に陸軍師団があったので、作戦上狙われてしまったのでしょう。惜しい限りです。今は姿を消してしまったけれど、写真の中で生き続けています。私は絵葉書を見ると歴史と対話している気がする、と前述しましたが、まさにそうした気持ちを抱かせてくれる写真です。