学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

意味深な怖い夢

2010-01-31 21:04:43 | その他
今日は一日中、力仕事でもうヘトヘトです。絵画を扱う、というのは大きさや重い額に入っていれば移動にも力を使いますし、なにより神経を使う。おかげで今夜はぐっすり眠れそう(苦笑)

眠る、といえば、昨夜は気味の悪い夢を見ました。私は祖父母の家にある仏壇の前に立っています。戸外は夜のようで、ちいさな電球の明かりをつけていました。すると、突然、その明かりは消え、仏壇の周りから火が出るのです。私は火事になっては大変だと、火に水をかけるのですが、一向に消えない。というよりも、その火からは熱さを全く感じない。試しに手で触れてみますが、まるで熱くないのです。(なぜ火を手で触れたくなったのでしょうね:笑)おや、おかしなこともあるものだと、仏壇のほうへ眼をやると、仏壇の上にかけてあるご先祖様の写真、その眼がみんな私のほうを向いているのです。夢の中で、背筋が凍りつきました…。ただ凍りついたものの、私は直感的に、何かご先祖様は言いたいことがあるのではなかろうかと思いました。そこで「何か言いたいことがあるのならば、しっかり私に言ってください!」と仏壇に向かって言いました。すると、周りの火はすっかり消えて、明かりもついて、何事もなかったかのようにしいんとしている。おや、私に何も言うことなかったのかしら…。首をかしげていると、そこで私は目が覚めました。汗がびっしょり…。

未だにご先祖様が何を言いたかったのかはわかりません。火に気をつけろという警告だったのでしょうか。あるいは、たまたま夢に出てきただけかもしれません。何となく意味深で恐ろしい夢でした。

高階秀爾氏『日本近代美術史論』3

2010-01-29 18:15:57 | 読書感想
今日は雨が降ったり、晴れてきたり、何だか不安定な天気でしたが、気温は暖かく、気持ちの良い一日でした。

『日本近代美術史論』の第3回は、青木繁をご紹介したいと思います。青木繁は九州は久留米の生まれ。彼は日本の近代美術で異質の存在として知られ、《海の幸》、《わだつみのいろこの宮》などの代表作があります。天才が夭折すると、伝説となる。青木は28歳という若さで世を去ります。短い生涯でありながら、しかもいわゆるピーク時はそのなかの5、6年。その5、6年で制作された作品が今日高く評価されている。まさに彗星の如く登場して去っていった作家でした。

高階氏の論文によれば、青木はイメージ力が尋常ではなかったらしく、他人から聞いた水死体の話を、さも実際に自分が水死体を見たかのように話し出すエピソードを紹介しています。彼の仲間に画家はもちろん、小説家もかなり居た理由がわかるような気がします。

青木の作品ですが、影響を受けたものとして、神話(日本、インドなど)、イギリス絵画、世紀末芸術などが挙げられます。渋い、ですね。一時期、彼の師であった外光派の黒田清輝と比較すると、かなり渋い。玄人好みとでもいったらいいのか。(時代が少しズレていることもあるとは思いますけれども)上野の図書館で本を読み漁ったといいますから、その頃の知識がかなり生かされているでしょう。黒田のように海外へ渡航したわけでもないのに、画集などから摂取できたということは、やはり青木のイメージ力が尋常でなかったことを示すもの、と考えられそうです。

来年で没後100年。もしかしたら、来年はどこかの美術館で大規模な回顧展が行われるのかも…そんな淡い期待をしています。ちなみに私の勤める美術館ではとても出来そうもありません(苦笑)

青木の代表作は、福岡県久留米市の石橋美術館が所蔵しています。九州へ行きたしと思えども、九州はあまりに遠し。いつか機会があれば、石橋美術館へ行ってみたいと思います。

高階秀爾氏『日本近代美術史論』2

2010-01-26 21:44:36 | 読書感想
今日はテレビの取材を受けました。いつもながらカメラに話しかけるというのは難しい。人間だと相槌を打ってくれるけれど、カメラにはそんな機能はありませんから、どうも自分の言っている事がすっと抜けてしまっていやしないかと不安に感じます。おそらく、これは慣れしかないのでしょうね。

昨日からの『日本近代美術史論』、今日は黒田清輝です。私は一時期、黒田に有頂天になっていたことがあります(笑)あれは何年前でしたでしょうか、宮城県美術館へ「黒田清輝展」を見に行ったんですね。代表作《湖畔》が好きで、実際に見てみたいと思っていましたから、その念願がまさにかなった!ところが絵を前にしてみると、意外に心の高まりというのが沸いてこない。逆にあまり好きではなかった《智・感・情》を見たら、ぐっと来るものがあったのです。あの不思議な感覚は忘れられません。

著者の高階氏は、文学者森鴎外と黒田を比較させて書いています。ちょっと面白い組み合わせですね。二人とも西欧の学問を学び、その種を日本に植えようとした。しかし、植えてもなかなか目が出ない。背景には、日本が西欧の文物を消化し切れて居なかったことが挙げられるのでしょう。黒田にいたっては、まさに水墨に油を一滴垂らすようなもので、まるで混じり合わない。一見、画家として大成功を収めたかにみえる黒田の内面には、どうにもならない感情がひしめき合っていたのではないかという話。

読み終えたあと、また黒田の絵を見ると、どう見えるのでしょうか。久しぶりに黒田の絵が見たくなりました。

高階秀爾氏『日本近代美術史論』1

2010-01-25 16:34:59 | 読書感想
今日も大変暖かな日和でした。日もだいぶ延びてきましたね。季節は着実に進んでいるようです。

日本近代美術は高橋由一に始まる。

休日の昼下がり、高階秀爾著『日本近代美術史論』の高橋由一の項を再読しました。由一の代表作『花魁』を見たときの奇妙な意識のズレから話は広がり、由一資料の論理的な考察、狩野派や浮世絵版画の影響、イタリア人画家フォンタネージとの出会いによる変化。特に「高橋由一再考」では、『読本と草紙』の制作年をモチーフの教科書から推定、由一の次女が用いていたのではないかと結論付ける文章の妙は、まさに推理小説並みで絵画研究の生きた教科書、と私は思っています。

私もいつかこのような構成力のある論文を書いてみたいと常々思います(思っているだけで、遙か程遠く…)

やや専門的な内容ですが、美術に興味のある方でしたら、とても楽しめる内容だと思いますので、ぜひオススメです。

●高階秀爾氏『日本近代美術史論』 ちくま学芸文庫 2006年

一通の手紙

2010-01-24 20:49:17 | その他
みなさんは、日常生活のなかで手紙を書く機会はどれほどありますでしょうか。

今日、一通の手紙をいただきました。差出人は、私が勤める美術館の元館長。すでに退職されて数年経ちますが、美術館のことを気にかけて、ときどき手紙を下さいます。開封すると、なんと私への励ましの手紙。滅多に人に励まされることのない私なので、グッときてしまいました。あとは言葉にもならず。

手紙はペン先に感情をすべらせて、紙を刻んでゆくもの。今日の手紙は私の宝物となりました。

吉田健一『吉田健一対談集成』

2010-01-22 20:31:18 | 読書感想
今日はとてもよい日和。窓から差し込んだ日光が部屋をしっかり温めてくれて、昼間は暖房無しで過ごすことができました。

さて、近頃すっかり読書がおろそかになっていますが、ご飯を作る合間に読んでいるのが、批評家、小説家の吉田健一(1912~1977)対談集です。

吉田健一氏は英文学に深い見識があり、エドガー・アラン・ポーやヴァレリーなどの翻訳などを手がけています。最近発売された本ですと、河出書房新社の世界文学全集に含まれたF.M.フォースター『ハワーズ・エンド』が吉田氏の翻訳ですね。(もちろん亡くなられていますので、新訳ではありません)

お酒が大好きだったという吉田氏。本では、ウイスキーをちょいとやりながら、文学者たちと対談してゆく様子が書かれています。特に河上徹太郎氏とのやり取りは、2人とも遠慮せずに意見をぶつけ合っており、同調するところは同調し、反対するところは反対する。仲間同士のいわゆる「なあなあ」の対談ではないところが、また面白いところです。また、短いものの、丸谷才一氏と社会のあり方について語り合う場面も、私が気になるところです。

対談集ですから、ちょっと疲れていても、気分転換に読める。手軽な本です。最近、吉田氏の著書が復刻され、改めて注目されているようですので、この機会にぜひ読んでみてはいかかでしょうか。

●吉田健一『吉田健一対談集成』講談社文芸文庫 2008年



山あり谷あり

2010-01-21 21:21:14 | その他
ここ数日、とても暖かい陽気が続いています。今日も、過ごしやすい天気でした。明日は…いつもの寒さに戻るとか。残念です(泣)

2、3日、バタバタとしてしまって、何だか落ち着かず…。仕事で対外交渉が続くために、あまり気が休まらないせいかもしれません。家に帰ると、どっと疲れて読書をする気もおきらず、これではだめだと気をふるいたたせますが、立つとすぐに落ちます(苦笑)

明日はお休みです。1日しっかり休んで充電して、またあさってから元気に頑張ります!

東京国立博物館「国宝土偶展」

2010-01-18 20:32:40 | 展覧会感想
年末に東京国立博物館で「国宝土偶展」を見てきました。ハート型土偶、みみずく型土偶、縄文のヴィーナス、動物たちをかたどった土偶…摩訶不思議な縄文の世界が広がっていました。土偶は女性をかたどっていますけれども、その深いところのモチーフには何があるのか。会場で数多くの土偶を見ながら考えてみましたが、とんと答えは出ませんでした。

答えが出ないまま、会場を後にすると、もっと見ておけばよかったと後悔する(苦笑)

話はやや変わりますけれども、作品は切り口を変えることで様々な見え方をします。これが面白いんですね。土偶、ひとつ取ってみても、歴史から見れば縄文人が祭礼に用い、女性を象ったのは生殖や豊穣を祈ってのこと、と考えられている。美術から見れば、岡本太郎が『縄文土器論』で前衛的な要素を読み取ったように造形的なものに魅力がある。音楽から見れば…(たとえば)和太鼓を打ち込むような激しいリズムがあるとかですね。数学的に見れば、この角度は云々と新しい見え方があるかもしれない。展覧会へ行った時に、こうした切り口を変え、自分なりに考えながら見てゆくと、とても楽しく見られると思います。

縄文時代の研究は、これからますます進み、新しいことがどんどんわかってくるのでしょう。土偶の造形的な要素はどこから生まれたのか、解明する鍵が出てくるかもしれません。その日が来るのが待ち遠しいですね!

1月も半分が過ぎ

2010-01-15 21:44:36 | その他
今日は、昨日にもまして冷える一日でした。事務室に居たにも関わらず、足元が冷えてしょうがない。来週から少し暖かくなるようなので、あと数日の辛抱!!

さて、1月も半分が過ぎました。今年、私の目標は、何事にも積極的に取り組んでいこう!というものです。積極的に行ったほうが、人生楽しいですしね!

今年になって新しく始めたのは英会話教室に通い出したこと。私の場合、英語はある程度読めますが、話すのが苦手。そこで自分の仕事に幅を持たせるためにも学んでみようと取り組んでいます。教室中は緊張しっぱなしですが、いずれ慣れることでしょう!(きっと!)

もう1つは、花でベランダを飾ること。私はアパート住まいですが、何となくベランダが寂しい。そこで、花でも飾れば、景観もいいし、心持もきっと良くなると思って3鉢買ってきて育てています。「花は我々に希望を与えてくれる」、とはよく言ったもので、毎日花に癒されています(笑)あとは枯らさないように気をつけます(苦笑)

今のところ仕事も余暇も充実した毎日!この調子で1年過ごせれば!と思います。


本を読んで思いつること

2010-01-14 21:02:08 | 読書感想
今日はとても寒い一日でした。肌をさすような冷たさは久しぶり。寒さに弱い私にとっては、春が待ち遠しい限りです。

近頃は『早世の天才画家』(酒井忠康著 中公新書)を読んでいます。本書は萬鉄五郎、岸田劉生、小出楢重など、明治中頃から昭和20年頃までの若くして亡くなった画家たちを紹介しています。

この時期に活躍した画家、どういうわけか随分若くして亡くなっているんですね。亡くなった原因として医療技術が発達していなかった、経済的な問題、太平洋戦争という時代背景、様々なことが要因として挙げられるでしょう。では、小説家はどうか。太宰治の『津軽』冒頭には、30代で亡くなった作家たちが列挙されています。太宰本人も若く亡くなっていますから、やはりジャンルは違えど、短命な時代だったのかもしれません。

昔の人は人間50年、と自覚していたから、若い頃から人生について考え、道が決まると突き進むから早熟な人が多い、と何かの本で読んだ気がします。若くして亡くなった画家たちも、そう考えていたのでしょうか。

本を読んでいましたら、そんなことが頭に思い浮かんだので書いてみました。本はまだ読みかけですが、終わりましたら、改めてまたブログで紹介したいと思います。