学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

2022年4月28日

2022-04-28 22:14:00 | その他
午前中はこまごまとした仕事をこなして、午後からは月末の会議。会議は踊る、ではないが、なかなか結論めいたものが出なかった。ひとつは美術館の入館者数について。外部の委員会からは増加を強く言われるが、企画展ごとに内容は違うし、年々予算も削られるなかで、青天井のような楽観的な目標が果たして正しいのかわからない。コロナ禍においては増加というよりも、減少しないように一定数を確実にキープするほうが、現実的であるように思われる。どちらにせよ、仕事を数字でしか判断されないのがつらいところだ。夜、子供と一緒にウルトラマン80の第2話を見る。序盤、怪獣を迎撃するナイトシーンは私の好きな場面のひとつだが、子供はやはりウルトラマンが出てこないと面白くないらしい。布団のなかで『木下杢太郎随筆集』を読む。

2022年4月27日

2022-04-27 20:42:00 | その他
快晴。朝から湿り気の多い日。今年初めて蛙の鳴き声を聞く。心地よい。文箱を片付けていたら、4年前にある先生からの頂いた手紙を見つける。「視点。これに尽きるのではないでしょうか。視点を広げること」の言葉が目に止まる。まだまだ勉強しなさい、と先生からの激励と受け止めているが、次々にやってくる仕事をこなしていくなかで、先生には失礼ながら、手紙を改めて読むまですっかり忘れていた。視点を広げること。今更だが、この言葉をしっかり捉えなくてはならないと考えている。残念ながら、先生はすでに亡くなってしまい、もうこの言葉について話す機会は永遠に失われてしまった。いや、仮に生きていたとしても、先生は自分で答えを出すように促しただろう。近頃、いろいろなことに自分の限界を感じることが多かったのだが、この言葉を胸に気持ちを新たに日々過ごしていきたい。

2022年4月26日

2022-04-26 21:29:00 | その他
曇り日のせいか、朝から左目の奥が痛み、案の定、偏頭痛になる。論文の続きを書く予定だったが、クリエイティブな仕事ができる状態ではないので、できるだけルーティーンワークを中心にこなす。『ボン書房の幻』(内堀弘著、ちくま文庫、2008年)読了。1930年代の小さな出版社ボン書房と出版人の鳥羽茂を巡って、ミステリー小説のように話が展開していき、ページをめくる手が最後まで止まらなかった。鳥羽は短い命だったが、満ち足りた人生であったに違いない。当時、自分の好きなことを満足にやれないで人生を終える大人たちが多かったのだろうから。

栃木県立美術館「題名のない展覧会」を見る

2022-04-25 13:58:24 | 展覧会感想
現在、栃木県立美術館で開催している「題名のない展覧会」展を見て来ました。

同館は今年で開館50周年を迎えるそうで、収蔵作品をメインに、これまでの調査研究の成果や過去の展覧会を振り返るという企画でした。いわゆる全国的に著名な作家、というよりは、地元栃木県で活躍した作家たちの作品が並びます。なかでも、爽やかな風が吹き抜けるような刑部人の《写生》、木版に「はつなつのかぜとなりたや」の詩が流れる川上澄生の《初夏の風》、人を昆虫に見立てたユーモアのある古川龍生の《昆虫戯画巻》のシリーズ、写実的な雲海が見事な小泉斐の《富嶽全図巻》など、見ごたえのある作品を観ることができました。ちょっと変わったところでは斎藤清の《ランプ》。黒い背景の中央に巨大なランプ(というより洋燈)を置いた図で、いわゆる斎藤清らしくなく、その絵の背景に何があったのか、ちょっと気になるところ。

また、作品ばかりではなく、過去の展覧会を企画した学芸員の声をパネルにして展示していたり、コレクション総選挙と題してお気に入りの作品に投票を呼び掛けたりと、来館者が楽しめるような工夫も凝らされており、とても勉強になりました。

展覧会の内容が充実していたのはもちろんですが、私個人としてもおよそ2年ぶりに他の美術館へゆっくり出かけることができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。新型コロナウイルス感染症はまだ終息しそうにありませんが、少しずつこうした日常を取り戻していきたいところですね。