学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

マンドリンを聴きながら

2008-05-31 18:22:16 | その他
学問をするということは、本を読むこととは限らない。自ら体験することも、立派な学問だと思う。むしろ、読書よりも具体的な行動により何らかを心に感ずることのほうが、一層学問らしい。

朝早くに家を出て、群馬県の前橋文学館へ行ってみた。目的はむろん、萩原朔太郎を知るためである。二階にある萩原の資料室に入ると、萩原が作曲したというマンドリンの音色が聞こえてくる。私は萩原のメロディを聞きながら、ぐるりと展示室を見て周った。

得るものがありすぎて、到底書ききれない。『氷島』に自分の詩を黙読しないで、音読して読んで欲しいとあったり(私の持っている萩原の詩集は、その肝心の部分がカットされている!)、詩と音楽の関係性、晩年に布団で寝転がりながら見たという立体写真、『カラマゾフの兄弟』には「空想より行動を」の書き込み。

本で学んだ知識をいつまでも頭の中にとどめておくことは、食べたものをいつまでも胃のなかにとどめておくようなものだ、と言ったのは、確かショーペンハウエルだったと思う。けれども、自らが行動して得た知識は、忘れることはない。私は学芸員として、本を読むだけでなく、自らの行動により知識を得ることを常に意識していたい。

萩原の『カラマーゾフの兄弟』評

2008-05-30 15:47:43 | 読書感想
朝から雨である。雨だと気分も落ち込む。天気が悪いと、どうして気分が落ち込むのかは知らない。だが、少なくとも人間には太陽が要るらしい。

今日の休みを利用して図書館から萩原朔太郎の関連する書籍を2冊借りてきた。「新潮日本文学アルバム 萩原朔太郎」(新潮社)と「父・萩原朔太郎」(萩原葉子著 筑摩書房)である。まだ読んで居る途中だが「アルバム」を見ると、萩原が「カラマーゾフの兄弟」に関心を寄せていたことがわかる。萩原は自分が持っていた「カラマーゾフの兄弟」の余白にこんなメモを残している。

「この書物をよんで感動しないものはどんな書物をみても感動することのできない人である」

萩原がどれだけ「カラマーゾフの兄弟」に感動を受けていたのかがわかる文章である。萩原の言葉を真に受けると、同作が苦手な私は「感動することのできない人」であるらしい。感動することができない人間が学芸員をしていていいものだろうか、と冗談まじりに腕組をしてみた。むろん、私自身、感動することのできない人間だとは毛頭思ってもいないけれど。

これからコーヒーを飲んだ後、また読書にふけようと思う。

本を読む欲求

2008-05-28 21:44:29 | 読書感想
今日も良い天気でした。ただ、午後からしだいに晴天は下降し始め、今はぽつりぽつりと外でかすかな雨音が聞こえます。その雨音をかき消すように、蛙だけは、いつもと変わらずに鳴き続けています。今日はそんな夜です。

何か本を読みたい、という欲求があるものの、なかなか手をつけられないこのごろ。先日購入した「画文共鳴」はほとんど仕事に近い内容なので、そうではなくって、何か文学的?なものを読みたいのです。

気になっているのが、岩波文庫の新刊「カシタンカ・ねむい 他7篇」(チェーホフ作、神西清訳)です。あの神西清の名訳が、岩波文庫の新刊で読める。こんな幸せなことがありましょうか。いわゆる名訳と呼ばれるものは、どうも古臭いというイメージがありますが、神西訳はそんな古臭さを感じさせない、むしろ、新しさを失わないのです。神西訳はいいですよ♪

訳、といえば、雑誌で「外国文学の訳は、定期的に更新されていかなければならない」なんて文章がありました。確かに昭和初期に翻訳された文章を読んでも、いくら名訳と呼ばれても、どうも今ではしっくりこないな、と呼ばれる訳はちらほら。森鴎外訳の『みれん』も、私は受け入れられなくて。そうなれば、いつかは神西訳も更新されるのでしょうか。されて欲しくないな、と矛盾ながら思ってしまう私なのでした。

眠気

2008-05-27 21:28:32 | その他
今日は大変気持ちの良い一日。前日の雨はどこへやら。空を見て、今日が休みならよかったのに!とうらめしく。今は涼しい北風が部屋の中を通り抜けます。今が、一番過ごしやすい時期なのかもしれませんね。暑くもなく、寒くもなく。

今、といえば、私はものすごく眠いです。近頃、9時を過ぎると異様に眠くなります。早く体を休めたらいいと体自身が訴えているのでしょうが、どうしてこんなことになっているのか。目をつぶると、そのまま寝てしまいそう。

明日は色々と忙しそうな予感。頑張らねば!昨日の「画文共鳴」もとても眠くて読むことができなさそうです。怠惰?それはわからないけれど、とにかく今日は寝ます。おやすみなさい。

はたまた夢は文学者?

2008-05-26 20:35:50 | 仕事
朝から日差しの強い一日。午前中は部屋の掃除をして、午後から作品調査で色々と外を巡り歩いてきました。

作品調査で伺った方に、今回「時間の無駄」と読みもせず上司に一蹴された論文を読んでもらうと…「よくかけてる!すごくいい!」とほめて下さいました(泣)作家のご遺族の方にもほめていただいたので、もう…泣けてきます。

帰り道、本屋へ立ち寄って「画文共鳴」(木股和史著 岩波書店)という本を買ってきました。1900年から1910年までの文学と芸術(装丁、挿画)が共鳴しあって表現された書籍を研究された本。表紙は藤島武二の「みだれ髪」。これから読んでみようかと思いますが、とても面白そうです。感想はブログでご紹介したいと思います。

時間を無碍にするわけには・・・

2008-05-25 20:08:43 | その他
「人生は一箱のマッチに似ている。
 重大に扱うのは莫迦々々しい。
 重大に扱わなければ危険である。」

 芥川龍之介の言葉です。随分上手く言ったものです。

 結局…まだその結論が出されていないのですが、ありもしないことに悩んで、時間を無碍にすることより、結果は結果として受け止めて、結果が出てから悩めばいいかな、と思って、あまり気にしないようにつとめることにしました。

 今朝は寒く、日中は暑い。そんな一日でした。今は極めて不愉快な湿度のなかにいます。明日は30℃近く気温が上がるそうで、もうげんなりします。

 一日、図録の作成。論文、図版、写真・・・。学芸員は編集者もやらねばなりません。表現が変だったり、写真の大きさを調整してみたり。それで一日が費やされます。今回の展示は、地元にゆかりにある作家の企画展。今まで以上に力を入れてやっておりますが(休日もすべて仕事に献上:泣)、そろそろ体がきつくなりはじめました。一応、来週火曜日で全て準備は終了。早く楽になりたい!と願う私なのでした。


ある影

2008-05-23 21:50:04 | 仕事
精神的に追い詰められると、私は文章が書きたくなる。以下は駄文である。訴える意味は何もない。ただ筆の動くままに記すだけである。


私は玄関を開けると、小さくて黒い物体が目の前を横切るのが見えた。どうも猫らしい。近所に猫を飼っている人があるのかわからない。けれど、近頃どうもよく目にする。独り者の私にとっては、野良猫でさえいとおしく見えてくる。

川沿いの道を歩く。車が脇を通る。そのたびに私は後ろからライトに照らされる。淡いオレンジ色の街灯の下に来ると、私の影が地面にくっきりと浮かぶ。ふと、自分の腕に目がいった。病的なほどやせている。骨の上にある肉が削げ落ちて、骨が皮をかぶっているような印象すらある。やせる?だが、どうして?

側面から車のライトに当てられて、右側のブロックに私の影が映る。気味の悪いほど背骨が曲がっている。光のなせるわざか。だが、実際に背骨が曲がっていることが事実のような気もした。もう何十年も、この世を生きてきたかのような錯覚。そして何十年も無駄に過ごしたかのような感覚。

コンビニへ行って、麦酒を買う。レジで会計を終えると、店員がくじを引けという。言われるがままにくじを引き、店員に見せると応募券だという。何の応募券なんだかちっともわからない。私は応募券にはまったく興味がなかった。適当にレジ袋に応募券を入れて、自宅への道を急いだ。

帰り道はよく覚えていない。ただぼんやり考え事をしていたんだと思う。すこぶる億劫だ。歩くのでさえも。また街灯の下に来ると、私の影が出た。むなしい影である。だが、私は影を愛する。影を見て、自分の存在を確認にする。影を失うときは、自らを失うときである。

失恋、それは

2008-05-23 19:39:27 | その他
「しかし君、恋は罪悪ですよ」
夏目漱石、『こころ』の一節です。
恋は悪い罪なんですね…。やけに心に染みる・・・。

どうしてこんな感傷的になっているのかといいますと、
何を隠そう、今まさに失恋の危機を迎えているからです。
まだ確定したわけではないけれど、ほぼ決定的です。
昨日まで何の気配もなかった(気付かなかった?)もので、
原因に心当たりが全くないのが気になりますが…。

しかし…失恋というやつは何歳になって悲しいものです。
こればっかりは永遠に卒業できそうにないものです。
ただ、結構割り切れるようにはなりました。

大学時代の先輩が「失恋すればするほど精神的に強くなれるよ!」と
えらく強気で話してくれたのが思い出されます。
失恋をすると確かに精神的に強くなりますね。
別に好きで精神的に強くなりたいわけではないのだけれど。

相変わらず、文章にならない文章。
さて、どうなることやら。
結果は神のみぞ知る…。





お茶を習いませんか?

2008-05-22 20:44:25 | 仕事
今朝も朝からいい天気でした。窓を開けると風が涼しく…ところが私の体調が悪すぎました。吐気がひどくて、美術館へ来ても治らず、ダウン。何とか意地で作品調査へ出かけましたが、ひどいものでした。

体調が持ち直した頃、作品調査で伺っている方から「お茶を習ってみませんか」との誘い。私は正座が得意で、話を聞いているときもいつも正座をしているから、お茶に向いているのではないかと思われたとか。お茶、やってみたいけれど、時間がなさそうで…。

大学生のとき、先生から「もしお茶に招待されたら、初めと終わりの席にだけは座るな。真ん中に座っておけば、前の人をやったのを見て、真似をすればいいのだから」と言われたのを思い出しました。

結局お断りしましたが、ちょっとだけ興味が沸いてきた私なのでした。

業務を数値化?

2008-05-21 22:58:37 | 仕事
今朝は朝から良い天気でした。暑くもなく、寒くもなく、ちょうど良い暖かさ。こんな日は昼寝でもしたい!というぐうたらな発想がわいてきますが、それほど素晴らしい天気の一日でした。

私が勤める美術館では毎年この時期になると、今年度の個人目標を決めねばなりません。目標は具体的に、は当然のことですが、出来るだけ数値化するようにとのこと。美術館の業務で数値化?入館者数のアップ、ホームページのアクセス数アップ、音声ガイドの利用者アップ、図録の売り上げアップ…でもそれぐらい?つい今しがたまで、腕組みをして考えていたのですが、どれも前に目標に挙げていたことで、新たに数値化して評価する業務はなかなか見つからず。そうこうしているうちに眠くなってきて、もはや集中できず。

明日の朝、また考えたいと思いますが、果たして浮かぶやら?