学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

花見へゆく

2025-04-06 17:24:37 | その他
先月だったか、自然系を研究している在野の先生から、今年は野鳥の数が極めて少ない傾向にある、と聞かされた。そのときはあまり関心がわかなかったのだが、4月に入って桜は咲けどもウグイスの声をほとんど聞かない。3月の末に、自宅近くの山からちょっと鳴いた声が聞こえたくらいである。毎年うるさいほど鳴くのであるが。

週末、子どもにせがまれて家族で花見に出かけた。天候は晴れ、川沿いに桜並木がずらりと並び、大勢、といっても東京の上野に比べれば、全然いない、互いの肩がぶつからないくらいの人手で、ゆっくりと花見を楽しむことが出来た。屋台で焼きそば、焼きイカ、かきごおりを買い、適当に腰をかけて、肝心の桜を背に、川の流れを見ながら食べる。たくさんの子どもたちが川の浅瀬で遊んでいて、その奥には菜の花が横一列に並び、黄色が映えて見える。ふだん、コンクリートの箱のようなところで働いているから、自然のなかにいると心地よいことこのうえなし。帰り際、キジとヒヨドリが元気に鳴く声を聞いた。少しずつだが、野鳥たちも戻ってきているのかもしれない。

さて、家に帰ってから、どうにも鼻がむずむずして、くしゃみが出て仕方が無い。なんだか花粉症が悪化してしまったらしい。新しい論文を書こうとしたが、まったく集中できないので、10分程度で筆を置いてしまった。幸せな時間を過ごした代償かしらん。明日は少し症状が落ち着くといいのだけれど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不可解な出来事

2025-03-30 11:29:58 | その他
このところ、私の周辺の書店から「講談社文芸文庫」だけが消えるという謎の現象が起きている。

ことの始まりは、1年程前、私の家から最も近いA書店にあった10冊程度の講談社文芸文庫が一斉に消えたことである。そのときは、まあ、あのレーベルは高いから売れなかったのだろう、ぐらいに思っていた。次にその半年後、大手のB書店が撤退した。B書店は、街中で最も講談社文芸文庫を置いていた店で、そのショックはかなり大きかった(そのときは1万円札を握りしめ、閉店前に買えるだけの冊数を救出した)。さらに話は続く。B書店ほどではないにしろ、C書店にもそこそこ置いてあって、それが唯一の救いだったのだが、先日久しぶりに行ったところ、なんと文庫が棚ごと消えていたのである。

これは私をおとしめるための何者かの陰謀??????

私の周辺にD書店の存在はない。よって、講談社文芸文庫を手に入れるためには、県外にまで出なければならなくなった。

この状況は極めてよろしくない。なぜなら、このレーベルを買って読むことが私の人生の楽しみになっているからである(妻にはまったく理解されていないが)。カラフルな装幀、表紙の金銀の文字、活字の組み方、紙質、さらにほぼ外れなしのラインナップ。金額は高くても、身銭を切っても読みたいほどの価値がある(そういっても妻は理解しないが)。

これからの頼みはA書店とC書店が再び文庫を入荷してくれることだが、望みは薄いかもしれない・・・。春は出会いと別れの季節。再び街中で講談社文芸文庫を買える日が来ることを願っている。心から。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2月のある日

2025-02-20 21:00:44 | その他
この1週間ばかり、頭痛、胃痛、胸痛と体中が痛いところばかりでどうしようもない。精神は若いつもりだが、体は順調に年を重ねていて、少し無理をすると、この通りである。精神と身体のバランスを取るのはなかなかに難しい。

仕事の関係で、藤森照信氏の『建築探偵の冒険』(ちくま文庫)を読んでいる。歴史を重ねてきた近代の建築の、ひとつひとつのストーリーが面白い。後日談として、調査当時にあったものが今は無くなってしまった事もちらほら紹介されているが、そこに著者の悲観的な言葉は一切ない。私なぞは、ヨーロッパ各国と比較して、これだから日本というものは、とやりたくなるところだが、メンテナンスの経費、家族の様々な事情、社会の移り変わりなどを考えてみれば、歴史ある建物は残して欲しい、というのは、何の責任もないから気軽に言えるのであって、自分の浅はかさにあきれかえる。

昨日はちらほら雪が降った。まだ寒い日はしばらく続きそうである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

炎暑

2024-08-19 21:47:37 | その他
 今夏も35度近い気温が続き、我々は怠惰の誘惑にさらされている。常日頃、いかに精神を鍛錬しているかが個々に問われるだろう。酷暑、の言葉をテレビや新聞、雑誌で頻繁に見かけるようになった。暑さが酷い、とはよく言ったものだが、永井荷風の『断腸亭日乗』(岩波文庫、2024年)を引くと、彼はこういうときに炎暑の言葉を使う。燃え上がる炎のような暑さ。レトリックは言葉に一層の膨らみを持たせる。
 茨城県近代美術館のコレクションに安田靫彦の≪鴨川夜情≫(1932年)があって、この絵は、いつまでも眺めていられるほどの魅力を持っている。これは鴨川にかけた四角い縁台のうえに、髷を結った男性3人が座ったり、寝そべったりしている、ただそれだけの絵である。しいていえば、縁台の端に乱れず直立した瓢箪と盃、その下には静かでゆるやかな鴨川が流れ、ところどころ誇張された川原石が愛らしい。あとはぽっと照る提灯が描かれるのみ。画面の大半は余白がしめ、余計なものが一切ない。安田は、いわゆる歴史画を主題とした作品を数多く残した。だから、この3人も歴史上のある人物であることは間違いない。だが、彼らが一体誰なのか、そして、どんな関係性なのかを考えることは、もはや野暮でしかない。この絵そのものの魅力を楽しめばいいことで、それは、ゆたかな時間の流れに尽きる。江戸の趣味というものを、表層的に捉えたのではないところの。
 この美術館の北側には、千波湖がいつもゆたかな水をたたえていて、この日は暑いながらも涼を求めて多くの人が散歩を楽しんでいたし、美術館の中も子どもから大人まで多くの人たちが絵を楽しんで見ていた。湖の対岸には水戸藩主徳川斉昭の造園した偕楽園がある。偕楽園は、人が皆で楽しむ園と書く。実際、ここは斉昭の意向によって、武士だけでなく、庶民にも大いに開放され、多くの人がここで風流を楽しんだという。そういう水戸の精神のようなものが、この美術館にも息づいているように感じられ、また心持ちが良くなった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

迎え盆

2024-08-13 21:01:13 | その他
 両手いっぱいに黄や白の花を抱えた年配の女性と、おそらくはその娘、さらに孫らしい女の子が、狭い歩道を一列に並んで、暑さに顔をしかめながらもしっかりと歩いている様子を見かけた。今日は迎え盆。ご先祖様があの世からこの世へやってくる日である。
 子どものとき、お盆は必ず東北の両親の実家へ行って、墓参りをするのが常だった。みなで墓参りを済ませると、蝋燭の火の種を家紋の入った提灯にうつし、それを消さないように用心しながら家まで持ってゆく。それから仏壇の蝋燭にその火をうつし、これでご先祖様を家にお迎えしたことになるのだった。仏壇の前にはたくさんの料理が並び、祖父母、両親、親戚一同20人くらいが、一同に会食する。お酒も出たが、ご先祖様の前だからか、みなたしなむ程度。子どもながらにいつもの食事とは異なる厳かな雰囲気を感じていた。それが私にとってのお盆の光景である。今から30年近く前の。
 祖父母や親戚の多くがもう亡くなってしまったせいなのか、または社会人になって盆休みが無くなったせいなのか、あるいはそういう時代のせいなのか、季節と共にあったはずの年中行事から、年々縁が遠くなってしまっていて、ゆえに墓参りに赴く女性たちの姿を見かけたとき、今を生きている実感というものが心の中にこみ上げてきた。日常のなかで忘れられがちな、こういう「今」への感覚は大切にしてゆきたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/11

2024-03-11 20:13:00 | その他
 今日は月曜日で美術館は休みでしたが、どうしても片付けたいことがあって、午前中は仕事をしていました。私の場合、あまり仕事のONとOFFを厳密に分けることをしていません。というのは、美術に関わることはライフワークと思っているので、切り離すことができないのです。休日ですが苦もなく、というより、引っかかっていたことがスッキリして、かえって良かった1日となりました。
 今日は東日本大震災から13年目の日。被災、美術館の建物と作品の総点検、計画停電、避難者の受け入れ…色々と緊急の仕事をした記憶が蘇ります。幸い、私の家族は誰も怪我することなく無事でしたが、私が少年時代に過ごした街並みは被災で大きく変わり、以来、私は故郷とどこか縁遠くなった気がしています。
 震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/09

2024-03-09 18:33:00 | その他
 漫画家の鳥山明さんが亡くなられたとのニュースがありました。私の少年時代がまたひとつ遠くなった気がします。
 子供の頃、私も含めて、みんながドラゴンボールファンでした。グッズやカードダスを集めるのはもちろん、自由帳に悟空の絵を真似して書いたり、放課後にかめはめ波を撃つ練習をしたり、強者になると週間少年ジャンプの原作に色を塗り、カラーで漫画を楽しむ人もいました。
 私はアニメから入り、その後、原作へ。夏休みに祖父母にねだってコミックを買ってもらったことをついこの間のように思い出します。漫画は子供が読むもの、といっていた父ですら、ドラゴンボールだけは読んで楽しんでいたのでした。ドラゴンクエストのキャラクターデザインの仕事も忘れられません。
 先日、このブログで1989年には未来への希望があった、と書きました。今にして思えば、私たち、当時の子供にとってはドラゴンボールやドラゴンクエスト、ドラえもんなどの数々の冒険譚があって、それらを読んだり、プレイすることで、大人たちからたくさんの夢や希望をもらってきました。
 私たちに生きることの楽しさを教えてくれた鳥山明先生に心から感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/06

2024-03-06 20:41:00 | その他
 今日は休みの日。外は朝から雨だの雪だのが降って寒いので、1日を家で過ごしました。
 朝からゴミ出し、掃除、洗濯、食器洗いなど、家事全般をやって、とにかく体を動かします。ゴロゴロしていると、どうしても仕事のことを考えやすく、それがストレスになるので、頭よりは体を動かすことが優先。その後はストレッチをして、体を温めていきます。
 午後は小説を読んだり、画集を見たり、ハイキュー!!を見たり、趣味のプラモデルを作ったり…自分の好きな時間を楽しみました。夜は明日の仕事の段取りです。私の場合、出勤してから段取りを考える時もあるのですが、いまは仕事が立て込んでいるので、夜の30分くらいをその時間にあてます。朝のスピード感を大切に…。
 1日、外へ出なかったにも関わらず、くしゃみが止まらず、いよいよ花粉症が来たようです。花粉症に負けず、明日、仕事を頑張ってきたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/02

2024-03-02 20:15:00 | その他
 もうすぐ4月、各地で開かれる新しい展覧会の情報が手に入りやすくなってきました。私が行ってみたい展覧会は次の通り。

・デ・キリコ展(東京都美術館)
・福田平八郎展(大阪中之島美術館)
・シュルレアリスムと日本展(板橋区立美術館)
・醍醐寺国宝展(大阪中之島美術館)
・円空展(あべのハルカス美術館)

もう開催中の展覧会もありますが、こうして見ると、意外に関西の展覧会が多いよう。特に福田平八郎は以前から好きな作家のひとりで、ぜひ現物を見てみたいものです。上記では私の専門分野と直接関わる展覧会はありませんが、美術とはその作品が単体で世に存在するわけではなく、描かれた当時の社会や思想、トレンド、技法、あるいは国や時間を超えたところで、色々な影響を受けて成り立つもの。展覧会を見るたびに学芸員として勉強になります。
 今年も展覧会へゆくのが楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2024/03/01

2024-03-01 18:22:00 | その他
 この頃、どうも首や肩が凝って仕方なし。原因はたぶんデスクワークの多さと様々なストレス。それに加えて、近頃は天気が悪く、気圧から生ずる頭の重さも…。ウォーキングを始めて、3ヶ月ですが、ここにきて効果が薄れてきた感じです。
 そこで、少し体に負荷をかけるべく、ジョギングと肩甲骨周りの筋トレ、ストレッチを取り入れての生活を始めました。少し汗をかくくらいの負荷で、自分なりにゆるくやっています。
 まだ効果は実感できていませんが、ひとつ気づいたことがあります。それはメンタルの改善のこと。私の場合、ウォーキングをしていると、周りの風景に気が行かず、仕事やプライベートの悩みを考え始める悪い癖がありました。ですが、ジョギングや筋トレとなると負荷が強くかかる分、ネガティブなことを考える余裕がなく、終わった後に頭がすっきりするのです。これは意外な効果でした。ぜひ続けたやっていきたいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする