学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

私の読書遍歴

2015-10-29 22:43:55 | 読書感想
最近、メディアで「図書館」の文字を目にすることが多く、それを見るたびに小説が恋しくなります。

私が暇を持て余していた学生時代のときよりも、むしろ就職してから小説をよく読むようになりました。

就職して1年目のときはドイツに関心があって、フランツ・カフカを中心にドイツ文学をよく読んだものでした。

その後、ドイツ文学から離れて、自分の興味の赴くままに闇雲に小説を読んできたのです。

そんなときに出会ったのが『文学全集を立ち上げる』(文芸春秋)でした。

丸谷才一さん、鹿島茂さん、三浦雅士さんの3人が仮の文学全集を編集するという目的で対談したものです。

そこには私の知らなかった小説の世界がたくさん広がっていて、私は書評を読むような感覚で楽しむことができました。

ディドロの一連の作品群やエミール・ゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』、ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』など、実際に読んでみた小説も少なくありません。

さて、現在は池澤夏樹さんが監修されている『世界文学全集』及び『日本文学全集』を中心に読んでいます。

ただ、何しろあの分厚さなので、ときどき心がくじけそうになる(笑)

いつか読んでみたいのは、プルーストの『失われた時を求めて』。

過去、たった1巻目で挫折した経験があるので、今度はくじけないようにしたい(笑)

今日は少しばかり、私の読書遍歴でした。

飲み口のよい日本酒

2015-10-28 20:44:38 | その他
しだいに冷え込んでくる夜。そんなときには日本酒を飲んで温まるのが、私の夜の過ごし方です。

近頃飲んでいる日本酒の銘柄は「ひめぜん きりり」(一ノ蔵酒造)。

「スッキリとした甘さ、爽やかな酸味」

このフレーズの通りに、飲み口のよい上品なお酒です。


この他、会津若松市に行った時には「冷やおろし」(末廣酒造)を買ってきました。

こちらは辛口で、いかにも日本酒という感じですね。

同じく会津で買ってきた漆のお猪口を使って飲むと美味しさが倍増です。


もう一度飲んでみたいと思う日本酒は出羽桜(出羽桜酒造)の古酒。

今年の正月に祖父母の家で飲ませていただいたのですが、美味しいすぎるほど。

祖父が曰く、なかなか手に入らないのだそうで…。貴重な体験でした。



私はあまり日本酒の銘柄には詳しくはないのですが、これから美味しい日本酒を求めて探し歩きたいと思います。


秋の公園

2015-10-27 20:41:41 | その他
朝晩、だいぶ冷え込むようになりました。

今年も早いもので、10月も終わりに差し掛かっています。

このあいだ、休暇を利用して秋の公園を散歩してきました。

そこで取った写真をご紹介します。




黄色いコスモスから蜜を取る蜂。




餌をねだるカルガモ。心なしか目が輝いて見えます。


暖かい日差しに包まれて、秋の空気を存分に堪能することができました。

最後の浮世絵師

2015-10-25 18:36:31 | 展覧会感想
現在、栃木県の那珂川町馬頭広重美術館で開催されている「没後100年記念 小林清親展」を見てきました。

小林清親は幕末に生まれた武士ですが、浮世絵(開化絵)を手掛け、のちに「光線画」と呼ばれる一連の作品を生み出しました。

それは、江戸時代の浮世絵には見ることのできない写実性であって、大気や水面のゆらぎ、洋灯の明かりなどの表現方法に妙があります。

なかでも、私が面白いと思った作品は《梅若神社》。

猛烈な雨が降る神社の前の場面で、雨宿りする人力車の人夫や傘を差した女性が駆け足で往来を行く図です。

雨のけぶる空気感の表現が今までにないもので、同じ雨の場面でも歌川広重の《大はしあたけの夕立》とは全く異なります。

この作品は「光線画」のなかでも異色のようですが、なかなか見ごたえがあるものでした。


展示会場には「光線画」のほかに歴史画、美人画、ポンチ絵なども展示されていましたが、やはり「光線画」の風景が最も好きです。

武蔵百景之図や日本名勝図会などのシリーズを江戸浮世絵風の風景画として手掛けていますが、歌川広重や葛飾北斎のスケールと比べるとなかなか…。

以前何かの本で、小林清親は日本橋付近の火災がショックとなって、以降は傑作には恵まれなかったと書いてあったのを思い出しました。


小林清親の晩年、つまり明治末期頃から創作版画という新しい機運が湧きあがります。

こうした動きを小林清親がどのように思っていたのか、興味のあるところです。


●「没後100年記念 小林清親展 新しい時代の息吹と浮世絵の終焉」11月23日まで開催


久隅守景展をみる

2015-10-23 20:54:27 | 読書感想
サントリー美術館で開催中の「久隅守景 親しきものへのまなざし」展を見てきました。

久隅守景は、慶長年間に生まれて、元禄時代頃に亡くなったといわれる絵師です。

ちょうど乱世の戦国時代が終わりを遂げ、江戸の平和を享受した世代ですね。

久隅守景は狩野派の絵師でしたが、事情があって、のちに距離を置くようになりました。


彼の代表作といえば《納涼図屏風》です。

夕顔棚の下にのんびりと寝そべる男性、若い女性、そして子供を描いた図。

図版では何度も見たことがありますが、本物を見るのは初めてでした。

いつものように日が暮れていくという日常、それが至福の時間であるような気持ちにさせられます。

私たちは人として毎日かけがえのない時間を生きている、そんな気がしました。

また、夕顔(ひょうたん?)から生命のあふれんばかりの鼓動が聞こえてくるようです。


もう1つ、久隅守景の作品で面白いと思ったのは山水画です。

解説によれば、畳の上で描いた作品とのことで、その跡が画面上の和紙にもくっきり残っています。

その跡が、空間のゆらぎ、あるいは水面のゆらぎのように見えてくるのです。


まとまって久隅守景の作品を見る機会は滅多にないこともあり、とても興味深く見ることができました!


●「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」11月29日まで開催中。
  ※《納涼図屏風》は11月3日までの展示になるようです。

会津若松へゆく

2015-10-22 20:28:59 | 展覧会感想
現在、福島県の会津若松市で開催されている「あいづまちなかアートプロジェクト2015」を見てきました。

会津の産業である「漆」にスポットをあてたもので、全国の美大の先生や生徒が制作した「漆」作品が街中に展示されるという試み。

会津は古い町並みが残っているところで、展示場所には酒蔵、洋風建築の旧医院などが選ばれていました。


かつて日本人の暮らしに寄り添っていた「漆」。

水彩でもない、墨でもない、「漆」の光沢がある深い黒は独特の肌合いを持っています。

作品を見ていくうちに、美しい「漆」に魅了されている自分に気が付きました。

個々の作品には触れませんが、そのどれもが「漆」の新しい可能性を提示してくれているようです。

展示に関しては、ガラスケースを通さず、間近で作品を見ることができるのが嬉しい。

しかも、触れてよい作品もあって、「漆」の質感を手で感じることもできます。


1日ですべて見ることができるほどの、ほどよい数のアートプロジェクト。

スマートフォンを利用したスタンプラリーもあって、それも集めて楽しむのもまた一興です。

会津若松の歴史ある街を散策しながら、「漆」の素晴らしさを堪能できるおススメのイベントです。


●「あいづまちなかアートプロジェクト2015」11月1日まで福島県会津若松市にて開催中