大学生の時分、司書資格の先生が「活版印刷の表面の肌触りが好きでたまらない」とおっしゃっていたことを思い出します。活版印刷とは、1文字ずつの活字を組んで版ををつくり、それを印刷したものです。手間がかかるため、今ではほとんど書籍に使用することは有りません。私は美術の世界に入り、フライヤーやポスターなどの印刷に関わるようになってから、印刷技術に興味を持っています。私の手元には活版印刷の本が2冊あります。『戦国武将100話』と『戦国武将の旗指物』で、昭和40年代から50年代に印刷されたものです。活版印刷の本をめくっていくと、ひとつひとつ活字を抜いて行った出版社の人たちの汗が伝わり、凹凸のある紙の表面、今なお残るインクの香りに魅了されます。司書の先生の言葉は大学生当時まったく響きませんでしたが、今は先生の気持ちがとても良くわかります。一冊の造本にストーリー性があるのです。近頃、文具店に行くと、活版印刷のしゃれたメモ帳やポストカードが売られているのを目にします。造本の需要が落ちても、こうした新しい展開がなされることに期待したいですし、買うことで応援したいと思っています。
企画展が終わり、展示室から作品を引き上げるとすぐに作品返却の仕事が待っています。個人や他館からお預かりした大切な作品を無事に返却してようやく担当者としての企画展の仕事が終わります。作品を返却し終えた後の私の密かな楽しみ。それは返却先の街を知るということです。返却作業は夕方までかかることが多いので、もっぱら夜になりますが、街の中をぶらぶら歩いてその雰囲気を味わったり、居酒屋に入って郷土料理に舌鼓を打ったり、店主や初対面のお客さんといろいろな会話をして仲良くなったり…。自分の知らない世界を知る、ということは私にとってとても楽しいことで、物事を考えるときのヒントになってくれるときも有ります。作品を通した街とのご縁にただただ感謝です。企画展を立ち上げるという仕事はとても大変だけれど、私にとって終えた後の達成感と返却時のこうした時間が次の展覧会へのモチベーションとなっています。さあ、明日からまた頑張ろう!
今年の春、森美術館で開催されていた「新・北斎展」を見てきました。作品資料がずらりと並び、とても見応えのある展覧会で、特に《弘法大師修法図》の大画面は圧巻。北斎が近代まで生きたら、どんな絵を描いたんだろう、と想像したくなりました。展覧会を立ち上げて下さった美術館の皆様に感謝です。さて、北斎展を見ていたとき、こんなお客様の会話を耳にしました。それは「浮世絵は北斎が全工程を手がけている」、「浮世絵は手で描いたもの」、(西洋版画に影響受けた作品を見て)「これは北斎の浮世絵ではない」などです。実は浮世絵版画は分業制で、北斎は絵師の役割を担い、彫師、摺師は別です。そして北斎は西洋版画の特徴を取り入れながら、新しい浮世絵に挑戦していたこと。作品の基本的なところを押さえながら、深いところまで掘り下げてお客様に楽しんでいただく。展覧会に関わる私にとっても永遠の課題です。私自身がお客様の会話や反応から学ぶべきことがたくさんあると感じました。
久しぶりに実家に帰省して、仙台の街を歩いてきました。私が歩くところは大体決まっていて、名掛丁をずっと西に歩き、老舗デパート藤崎まで来る。ここから、南に歩いて、古本屋や光原社で買い物をする。古本屋は以前2件あったのに、いつの間にか1件だけになってしまいました。近くに住んでいれば、私は毎日でも通うのだけれど、いきつけのお店がなくなるのは寂しいものです。帰りは藤崎方面まで戻って、書店金港堂へ。仙台の街中は新刊本を扱う老舗書店も少なくなってきました。私は金港堂さんを応援したくて、仙台ではここで本を買います。仙台の郷土の本も揃えていますし、地下では専門書も扱っていますので、欲しい本がいっぱいです。そして帰途へ。街は生きもののように変わります。ただ、魅力的な街であることに変わりないことに気づきました。緑がゆたかで、街が広くて、ゆったりとした空間がある。仙台ほど散歩を楽しめる街はない、が私の持論です。
今日は数字とにらめっこ。にらめっこされた数字とは、おととしと昨年の入館者の数です。
どの美術館もそうであると思いますが、年間の目標入館者数が設定されていて、それを達成することを私たち学芸員にも求められます。企画展、イベント、ワークショップなど、様々な事業を行って、目標に向かって進んでいくわけですね。何かと数字で評価される時代なので、美術館にとっても数字は絶対ではないけれど重要である、のです。
私がにらめっこしていた原因は、おととしよりも昨年は入館者数が大幅に増加したのだけれど、目標にはあと少しで達しなかったというもの。理由はどうあれ、目標は達成できなかったのだから、今年は改善していかなくてはというところで頭を抱えていたのです。企画力が足りない?、広報が足りない?、イベントが足りない?、と考えつくのは足りないことばかり。
帰宅してからもしばらく考えてみて思ったのは、入館者数は目標として設定しなければならないわけだけれど、〇〇が足りないという発想はやめにして、もっとお客様が美術館を楽しんだり、喜んでくれるにはどうしたらいいか、という原点に立ち返って考えたほうがいいのではないかという結論に達しました。こういう気持ちで美術館の事業を進めていけば、入館者数は後からついてくる…といいな(苦笑)。
何をしないよりも何かしたほうがいい。早速これから具体的な案を考えてみるところです。積極的な動機はわくわくしてきますね!
どの美術館もそうであると思いますが、年間の目標入館者数が設定されていて、それを達成することを私たち学芸員にも求められます。企画展、イベント、ワークショップなど、様々な事業を行って、目標に向かって進んでいくわけですね。何かと数字で評価される時代なので、美術館にとっても数字は絶対ではないけれど重要である、のです。
私がにらめっこしていた原因は、おととしよりも昨年は入館者数が大幅に増加したのだけれど、目標にはあと少しで達しなかったというもの。理由はどうあれ、目標は達成できなかったのだから、今年は改善していかなくてはというところで頭を抱えていたのです。企画力が足りない?、広報が足りない?、イベントが足りない?、と考えつくのは足りないことばかり。
帰宅してからもしばらく考えてみて思ったのは、入館者数は目標として設定しなければならないわけだけれど、〇〇が足りないという発想はやめにして、もっとお客様が美術館を楽しんだり、喜んでくれるにはどうしたらいいか、という原点に立ち返って考えたほうがいいのではないかという結論に達しました。こういう気持ちで美術館の事業を進めていけば、入館者数は後からついてくる…といいな(苦笑)。
何をしないよりも何かしたほうがいい。早速これから具体的な案を考えてみるところです。積極的な動機はわくわくしてきますね!
なるべくプラス思考で生きている私だけれど、それでもときどき気持ちのもやもやすることがあります。
私の場合、あれこれ頭で考えるよりも、気分転換に外出するのが良し。先日の休みは、近くのお寺へ行って厄払いにお参りをしてきました。そこでおみくじを引いたところが、なんと「凶」! 「わがのぞみごと、ながく、とどこほりて埒あかず」。これ以上ない文言に思わず笑ってしまいました。
実はこのお寺でおみくじをひいて、凶を当てたのはこれで二度目。以前引いた時も気持ちがもやもやしていたときでした。このお寺はどうも今の運気がそのままにおみくじに反映されるようなのです。というわけで、私はこのお寺のご利益を信じていて、何かあるとお参りして心を静めてきます。
それに、今回は凶を引いたものの、その文言に大笑いしたことで何だか厄が落ちたような気もします(笑)笑いには福が来たる。日々、笑いを多くして、気持ちのもやもやを吹き飛ばしましょう!
私の場合、あれこれ頭で考えるよりも、気分転換に外出するのが良し。先日の休みは、近くのお寺へ行って厄払いにお参りをしてきました。そこでおみくじを引いたところが、なんと「凶」! 「わがのぞみごと、ながく、とどこほりて埒あかず」。これ以上ない文言に思わず笑ってしまいました。
実はこのお寺でおみくじをひいて、凶を当てたのはこれで二度目。以前引いた時も気持ちがもやもやしていたときでした。このお寺はどうも今の運気がそのままにおみくじに反映されるようなのです。というわけで、私はこのお寺のご利益を信じていて、何かあるとお参りして心を静めてきます。
それに、今回は凶を引いたものの、その文言に大笑いしたことで何だか厄が落ちたような気もします(笑)笑いには福が来たる。日々、笑いを多くして、気持ちのもやもやを吹き飛ばしましょう!
ゴールデンウイーク、みなさまはいかがお過ごしでしたか。
美術館勤務の私はほぼ休みなしで仕事をしていました。連休中、お客様から「お疲れさまです」と声をかけていただくこともしばしば。ただ、私としては、10連休が取れなくて残念、という気持ちは全くなく、むしろお客様からそうして声をかけていただいたり、数ある美術館のなかでも当館を選んで足を運んで下さったお客様の気持ちが、本当にありがたく嬉しい連休でした。
連休中は企画展の文章を書いたり、ワークショップをこなしたり、作品の解説をしたり、収蔵庫の掃除をしたりと充実の毎日でした。仕事も前倒しで進めることができたので、休館日明けの仕事も順調に進みそうです。
明日からまた通常の業務となります。引き続き頑張ります!
美術館勤務の私はほぼ休みなしで仕事をしていました。連休中、お客様から「お疲れさまです」と声をかけていただくこともしばしば。ただ、私としては、10連休が取れなくて残念、という気持ちは全くなく、むしろお客様からそうして声をかけていただいたり、数ある美術館のなかでも当館を選んで足を運んで下さったお客様の気持ちが、本当にありがたく嬉しい連休でした。
連休中は企画展の文章を書いたり、ワークショップをこなしたり、作品の解説をしたり、収蔵庫の掃除をしたりと充実の毎日でした。仕事も前倒しで進めることができたので、休館日明けの仕事も順調に進みそうです。
明日からまた通常の業務となります。引き続き頑張ります!