学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

さようなら、野村克也さん

2020-02-14 20:30:32 | その他
2月11日、元プロ野球選手の野村克也さんが亡くなりました。生あるものには死があるとはいえ、とても残念でなりません。

私が知っている野村克也さんの姿はヤクルト監督時代のころ。90年代のプロ野球は、圧倒的な戦力を誇る長嶋巨人に他の5球団が挑むという構図で、野村ヤクルトはその急先鋒でした。長嶋巨人に対してはっきりモノを申せる(今思えば挑発だったのでしょう)監督として、印象に残っています。
また、勝利のためのデータに基づくID野球、他球団で芽が出なかった選手を花開かせる野村再生工場などの言葉が忘れられません。ときどき、自身の経験や本から引用した言葉をおっしゃることがあり、それがまた知的な監督として好きでした。

野村スコープとも呼ばれる優れた洞察力による解説もお見事で、短い言葉で選手の動作、心理、自分ならどうするか、などをおっしゃり、それがまたずばりと当って面白いので、私は野村さんの解説を常にマークしていました。ああいう解説の方はしばらくでないでしょう。野村さんの声がない日常というものがさびしくてなりません。

野村克也さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

キャラクターへの愛着

2020-02-09 20:40:37 | 読書感想
去年の暮れから読んでいた『ドン・キホーテ』(岩波文庫、牛島信明訳)の前編1から3を読み終えました。が、残念ながら、最後まで付き合い方のわからない本となってしまいました。というのは、主人公であるドン・キホーテが他人の事情に介入し、暴力的な報復を受けるというパターンが延々と繰り返され、だんだんマンネリ感を覚え始めてきたためです。(『ドン・キホーテ』が好きな方、ごめんなさい!)

ただ、そのなかでも前編2にある、事情があって故郷を追われた男女の話や、その後の夜中に旅籠屋でイタリアの物語を司祭が朗読するところは好きで、かえってドン・キホーテが登場しないシーンにほうに魅力を感じました。こう考えてみると、ドン・キホーテのキャラクターに愛着がわかなかったということなのかな、と思います。小説を読むうえで、そのキャラクターに魅力を感じるかどうかは重要なことなのかもしれません。

長編小説がひとつ読み終わったところで、次に何を読もうかと考えているところです。明日は本屋へ行く予定です。新しい出会いがありますように。

文化財はどこへ行った?

2020-02-08 19:42:29 | その他
2月4日の日経新聞に「盗難文化財、サイトで探せ!」という記事がありました。これは、文化庁が盗難被害に遭って所在不明になっている文化財の早期発見につなげるため、その情報を特設サイトに公開したのだそう。

私は過去に文化財の管理に携わった経験があります。そこでは定期的に指定文化財の所在を確認していましたが、幸いに盗難はなかったものの、所蔵者没後の代替わりのときに文化財が行方不明になるケースがあったほか、そもそも所蔵者自体が転居して連絡が取れないというケースもありました。所蔵者のみなさんには所有者の変更があった場合には連絡を、と呼びかけはするものの、ご本人が病気になったり、経済的に苦しくなったりすると、もうそれどころではありませんので、現実的にはなかなか難しいようです。(かつては指定文化財がオークションに売り出されている、との情報をいただいたこともありました)であれば、行政側がふだんから指定文化財の所有者と良好な関係を維持し続けることが必要なのかもしれません。これもまた現実的には難しいのかも、ですが…。

文化庁が対象としているのは盗難被害にあったもののようですが、こうしたサイトを開設することで、少しでも文化財の早期発見と、発見後の保存・保護につながることを願っています。


仕事は生き物のよう

2020-02-02 20:04:12 | 仕事
先日、ある企業の経営者の方と話をする機会がありました。その方は仕事術の話になったとき、こんなことをおっしゃいました。ある問題が生じると、私たちはそれに対応するためにある手段をとる。そして無事に問題が解決したとする。その経験から、同じような問題が起こったときには、同じ対応をすれば永続的にその問題は解決ができる、と私たちは判断する。だが、しばらくすると、不思議なことにそのやり方が通用しなくなる。要するに、仕事というものは、常に改善を求められるということだ。そうおっしゃいました。

実はちょうど私も似たような経験をたびたびしていたこともあり、とても腑に落ちました。私の経験でちょっとした例を挙げれば、入館者数を上げるためのイベント。前年度よりも入館者数を上げるという課題があって、その解決のための新たなイベントを打つ。その年は確かにイベント効果で入館者数は増加しました。この効果は高し、と思って継続し、3年くらいするとまた減少に転じる。これはイベント自体のマンネリ化があったのかもしれませんが、同じやり方では入館者数の永続的な上昇には結びつかない。そこでまた別の方法を考えるという流れになりました。

私もそこそこの年齢になってきましたが、この年になってもまだまだ学ぶべきことが多くあります。そして仕事という、ふんわりとぼんやりとした相手に未だに迷わされます。でも、まあ、それが仕事の面白いところなのかもしれませんね。

話上手になりたい

2020-02-01 19:00:00 | 仕事
先日、民俗学を専門とされる研究者の講演会を聞きに行きました。それは明治期の紀行文のなかに出てくる日本の風習を、民俗学の立場から読み解くというもので、それほど民俗学には詳しくない私でもとても面白く聞くことができました。

さて、話し手の先生は70歳近い方なのですが、話し方がものすごくうまい。観察していると、次のような特徴があることがわかりました。

1.話し方がゆっくりしている。(滑舌が良い)
2.身振り手振りをまぜる。
3.ときどき小さなジョークを入れる。
4.新しい発見を伝える。

長年、人の前で話されてきた経験がそこにはあり、講演会の内容もさることながら、話し方からも学ぶべきことが沢山ありました。

私も仕事柄、講演会の機会はあるのですが、上記で言えば「1」が苦手です。どうしても緊張すると早口になってしまうのです。ですから、講演会の手持ちレジュメに「ゆっくり話せ!」と自分へのメッセージを書き込み、ときおり目を向けて意識するように対策しています。あとは「3」はなかなかテクニックが入ります。会場が盛り上がればいいのですが、そうならないときもありますから。ただ、ジョークは講演の目的ではないので、その会場の空気を読みながら臨機応変に使っています。

現在、4月以降の企画展の準備に取り掛かっていますが、そこでも講演会を予定しています。他の研究者の良いところを真似して取り入れながら、自分のスキルを上げていきたいと考えています。