学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

おおみそか

2018-12-31 19:28:49 | その他
今日はとてもよく晴れて、気持ちの良い天気となりました。昨日からの雪がまだ残り、戸外へ出ると冷気がありますが、澄んだ空気は新鮮で、体全体がリフレッシュします。

おおみそかは街の古書店で見かけた小村雪岱の『日本橋檜物町』を買いました。平凡社ライブラリーの復刊で、なかなかお目にかかれない本なので、とても運が良かったです。年末年始はどの美術館も休みですので、絵を見たいという欲求は、画集や著作を読んで解消することにしています。ただ、連日、本を買い込んでいるので、読むスピードが追いつかないのが、嬉しい悩みといったところ。じっくり楽しみたいですね。

街のなかはすでに大勢の人で溢れて、軒を連ねるお店も初売りの準備に追われていました。活気があるというのはいいことですね。私も、古書店に立ち寄ったあと、いろいろなところへ足を運び、そのたびに楽しむことができましたが、おおみそかでも仕事をしてくれている人がいるから楽しめたのであって、その方々には心から感謝しなくてはなりません。

今年もあと数時間になりました。今年1年、ブログをご覧になってくださり、本当にありがとうございました。来年もお引き続き、よろしくお願いいたします。みなさま、良いお年をお迎えください。

『日暮硯』を読む

2018-12-30 20:26:01 | 読書感想
今日は朝から久しぶりの雪模様。たまに雪を見る分には、とても新鮮な気持ちになります。版画家の斎藤清だったかと思いますが、街に雪が積もると白と黒の単純な世界に変わり、それが版画の主題になりうる、というようなことを書いていたように記憶しています。

先日から年末の余暇に読書をしているわけですが、今日は『日暮硯』を読み終わりました。この本は、江戸中期、窮乏する信州松代藩の財政をV字回復させた家老、恩田木工に関する筆録です。

財政を立て直す方法は単純なことで、収入を増やし、支出を抑えればいいわけですね。では、そのためにどうしたら良いのか。収入を妨げている原因、支出が増えている原因をそれぞれ突き詰めて、解決策を練る必要性があります。恩田は、まず自分自身の生活を律し、さらに自分の家族や家臣にも広げます。つまり、改革を主導するには、自らが率先して生活を改め、自分の言葉に説得力を持たせないといけないと考えたわけですね。さらに収入、支出の問題を洗いざらい突き詰め、個人を批判することなく、不合理になっていることを改めるようにします。こういう場合、あまりガチガチに改革をすると、必ず不満分子が出てくるものですが、目標さえクリアできれば余暇は何をして楽しんでも良い、とアメとムチを使い分けて、松代藩は恩田を中心に一丸となって財政改革に取り組むことになるのです。

今を生きる私たち、特に社会人にとっては恩田の姿から色々なことが学べるでしょう。私も部下を持つ身として、自分の言葉にどう説得力を持たせればいいのか、さらにどうしたら全員が一丸となって目標に向かって進むことができるのか、のヒントを得ることができました。江本書は江戸時代の文体なので、慣れるまでなかなか大変かもしれませんが、中身の濃い本です。

戸外は未だ風が強く、雪が舞っているようです。師走らしい天気となりました。今年もあと2日、皆様もごゆっくり年末をお過ごしください。

内村鑑三『デンマルク国の話』

2018-12-29 17:57:07 | 読書感想
今日も日中は暖かい日和で、とても過ごしやすい1日でした。午前中はショッピングを楽しみましたが、雑貨店に行きますと、「江戸帖」なる来年の手帳が売っており、思わず手にとりました。江戸風の千代紙らしいデザインの表紙に、なかは江戸の豆知識が満載。今はいろいろな個性的な手帳がでているのですね。

引き続き、内村鑑三の『デンマルク国の話』を読みました。とても短い文章です。ドイツとオーストラリアとの戦いに敗れたデンマークがいかに国を再生させたのかを述べたものです。内村は、国民の精神、国土の改良、信仰心が、再生のために必要なことであったと説きます。本書が岩波文庫で刊行されたのは、昭和21年のことで、つまり太平洋戦争が終結してから1年後のことですね。内村のメッセージは、明治時代のものですが、予言的な要素を含んでおり、岩波書店は内村の言葉を借りて、敗戦で意気消沈した日本国民へのメッセージ性を込めたのかもしれません。

年末の暮れ近くなり、街の中はだいぶゆったりとした雰囲気になりました。いつもせかせかした街が、ときどきこのように余裕のある雰囲気に変わります。いいものですね。明日もどうか晴れますように。

内村鑑三『後世への最大遺物』

2018-12-28 20:57:01 | 読書感想
今日は朝からすこぶる寒く、午後にはぱらぱらと雪が降って来ました。

私にとっては、年末年始休日の初日です。まずは近所の神社に行き、1年間、無事に過ごせたことの御礼のために参拝。次に古本屋へ行って、渋沢栄一の『雨夜譚』、鏑木清方の『明治の東京』、『内村鑑三所感集』、いずれも岩波文庫で購入しました。午後は年賀状書き。今年1年お世話になった方々に心を込めて書きました。

数日前から読んでいた、内村鑑三の『後世への最大遺物』が読み終わりました。私たちは生まれて来た以上、社会のために何か後世に残さなければならないのではないか、と、内村は本書で私たちに問いかけます。では、私たちは具体的に何をするべきか。内村が曰く、社会のためにお金を使ったり、社会をより良くするための事業を実施したり、自分の心の声を文学、すなわち著作として表すなどの方法があると説きます。けれども、それらはみんなができるものではない、であるから、本当に大切なのは私たち一人ひとりが徳を重ねる生涯を送ることこそが大切だと述べます。内村は人間の欲を正直に認めたうえで、それを上手に社会のために使う必要性を説いたようです。内村の提案は現実的で、先日、このブログでも紹介した企業家の青木義雄が内村に心酔したのも頷ける気がします。

文中、文学の場面で、内村が『源氏物語』を否定しているところが興味深い場面です。彼にとって、文学とは社会に還元されなければならないものであり、男性が幾人もの女性と関係するような『源氏物語』は受け入れがたいものだったのでしょう。では、内村は具体的にどんな文学が好きだったのか。内村の文学的趣向について、私は関心が湧いて来ました。いずれ、調べてみたいですね。

さて、明日は年末の挨拶まわりです。明日も冷えそうですね。皆様も暖かくして、風邪などひかぬようお過ごしください。

充実した1年間の仕事

2018-12-27 21:41:13 | 仕事
今日は晴れて日差しが暖かかったものの、風がびゅうびゅうと強く吹く1日でした。今日は来客あり、締め切りの仕事がありでバタバタとし、あっという間に終業時刻となりました。私は勤務形態の関係で、ひと足先に今日が御用納め。長いような、短いような1年間でした。

今年の仕事を振り返ると、前半不調、後半好調だったかもしれません。これまでの私の立場が変わって、美術館の運営に広く関わるようになり、それに加えて新しい企画展の準備を同時並行で進めなくてはならず、これまで感じたことのないプレッシャーのなかで仕事をしていました。けれど、美術館スタッフの皆さんに助けてもらいながら、ここまで仕事の山をひとつひとつ乗り切ることができました。心から感謝をしています。後半、ようやく周りを見渡せる余裕が出てきて、今日に至ります。今年は仕事を通して、特にたくさんの作家や学芸員の方と知り合う機会に恵まれたほか、研究論文の内容や展覧会の文章でもお褒めの言葉を頂くことができ、本当にとても充実した1年間でした。

長い期間、自律神経の乱れから来る不調も、ここにきてようやく回復。健康であるということが、どれだけ幸せなことなのかを知るために必要な5年間だったのでしょう。私の場合、自律神経の乱れを回復させるために試したことは、日々ゆっくり動くこと、日々物事に感謝すること、ときどき思い切り息を吸って深呼吸をすることなどです。このほか、本を買って、いろいろ回復に向けて試してみたのが複合的に効いたのかもしれません。このことについてもありがたいことでした。

明日から年末年始のお休みがいよいよ始まります。心身ともに気力みなぎるよう、ゆっくり体を休めていきたいと思います。それでは、今夜はおやすみなさい。

年末に読むもの

2018-12-26 20:30:56 | 仕事
今日は曇り空の1日でした。日差しの少ない日の朝はさすがに寒いですが、今日は仕事で動き回ることが多く、体はぽかぽかに。日頃はデスクワークが多いのですが、体を動かす仕事があると気持ちが良いですね。

仕事帰りに古本屋へ立ち寄り、年末に読む本を3冊買ってきました。

いずれも岩波文庫で、まずは谷崎潤一郎の『蓼喰う虫』。挿画を洋画家の小出楢重が手がけていますので、これは面白いと思い買ってきました。谷崎を読むのは、10年近く前に読んだ『鍵』以来で、確か棟方志功デザインの装幀が特徴のものでした。それからしばらく縁がなくて敬遠気味でしたが、久しぶりに今回は楽しんでみたいものです。

次は、『日暮硯』で、こちらは帯によると信州松代藩の財政を回復させた恩田木工の筆録とのこと。私は江戸時代の財政に興味があって、これまで二宮金次郎や山田方谷らに関する本を読んでいたのですが、恩田木工の本はは初めてかもしれない、と思って買いました。きわめて薄い本ですが、内容の濃さを期待したいです。

最後は、アンデルセンの『絵のない絵本』です。モーパッサンと悩みましたが、心持ちを温かくしたいのと、短編で読みやすそうなので購入しました。また、絵のない絵本、という不思議なタイトルにも惹かれました。

古本屋には講談社学術文庫の岡倉天心の著作が2冊あり、かなり悩みましたが、前の所有者の書き込みがかなりあって、中身に集中するのが難しそうだったので見送りました。また縁があれば購入したいです。

私の中では、少しずつ年末年始に向けた取り組みが始まりました。明日の晩は年賀状の作成を予定しています。それから大掃除となるでしょう。しばらく忙しい毎日が続きそうです。

クリスマスプレゼント

2018-12-25 21:08:08 | その他
今日も雲ひとつない素敵な青空が広がりました。クリスマス、いい日和になりましたね。

今日は仕事が休みだったので、妻とともにショッピングセンターに出かけました。平日でしたが、クリスマスということもあって、ずいぶん大勢の人であふれていました。たくさんの人が幸せそうな顔をしていて、みんなクリスマスを満喫していたよう。私も元気をもらえました。

さて、家に帰ってから、妻よりクリスマスプレゼントがありました。中身は図書券です。私は仕事柄、本を買い込むほうなので、とてもありがたいプレゼントでした。これから年末年始を迎え、本を読む時間もたくさん取れそうなので、本をじっくり選んで買いたいと思っています。

明日からまた仕事、といっても今年も残りわずかですが、気を抜かず、最後までしっかり取り組みたいと思います。それでは、おやすみなさい。

今年の仕事の進め方

2018-12-24 21:47:39 | 仕事
昨日の願いが叶ったのか、今日はとても良い天気となりました。いまは夜空に綺麗な星が浮かんでいます。寒い時期にも関わらず、この3連休にはたくさんお客様にお越しいただくことができました。本当にありがたいことです。

今日の午前中は収蔵庫整理をし、午後は来年度の展覧会の準備をしていました。集中してこなしていたせいか、あっという間に時間は過ぎていき、今日の仕事も無事に終了。

振り返ってみれば、今年は仕事の仕方、というよりも心構えを変えた1年でした。これまで仕事の進め方について、私は新人のときからビジネス書を読んで、効率的なやり方を模索して来ました。限られた時間の中で、どうやって高い効果を上げられるのか。私はグズグズしてのろまな性分ですので、それは大きな課題でした。それから、ビジネス書のやり方は少しずつ効果を上げて、年齢を重ねていくにつれて、仕事をさくさくこなせるようになりました。でも、こまったことが出て来ました。それは、だんだん館内のスタッフにも自分のような仕事の速さを要求するようになってしまい、相手の仕事が遅いと苛立つようになってしまったことです。もちろん、怒鳴り声をあげるようなことはしませんでしたが、ともに美術館を盛り上げていこうと協力する仲間たちに対して、あってはならない考えでした。

このような考えはいけない、と感じた今年の秋、私はビジネス書を読むのをやめ、ただ2つのことだけを念頭に置くようにしました。それは、仕事をひとつひとつ心を込めて丁寧にこなしていくこと。もうひとつは、どんなときも笑顔で仕事をすること、です。誰のために美術館で仕事をするのか。自分自身のため、ではなく、お客様のためです。お客様に美術館を喜んでいただくには、展覧会の内容はもちろんのこと、お迎えする美術館のスタッフの雰囲気も良くないといけないでしょう。それで以上の2つを実践することにしたのです。それから、不思議なことに、とても美術館にとって良いことばかりが起こるようになり、考えを改めて良かったと思っています。ビジネス書が決して悪いわけではないのですが、ある程度の数を読みこなしたら、それを土台に自分の頭で考えて、自分にあった理想的な仕事の方法を考え出すと良いのかもしれませんね。

この歳になっても、まだまだ社会人として勉強することが山ほどあります。今年も仕事を通して多くのことを学びました。今年の出勤日も残すところ、あと少しとなりました。今年も最後までしっかり仕事をこなしていきたいと思います。

師走ののんびりした雰囲気

2018-12-23 19:28:14 | 絵葉書
今日は久しぶりに曇り空、ときどきぽつりぽつりと雨がふる1日となりました。このところ、ずっと晴れの日が続いていましたので、またにはこんな日も必要ですよね。

師走も暮れ近くとなり、最近は街の中もなんとなくのんびりした雰囲気が流れています。今年の私の仕事はある程度メドがつきましたので、来年の仕事をできるだけ前倒しで進めています。仕事には追われるな、常に追っていろ、と新人のときに上司から言われたことが忘れられません。仕事を前倒しで進めていれば、気持ちにも余裕を持って取り組むことができ、精神的にもずいぶん楽になります。ときどき自分のキャパシティを超える仕事も舞い込みますが、それはひとまず深呼吸してから、仕事を細かく分解して冷静に進める。それでどうにか乗りこなせています。

今日は依頼されていた原稿を執筆する仕事をこなしました。文章を書く仕事は楽しくてたまりません。たとえ、考えがまとまっていなくても、机に向かって手を動かしていると、なぜか少しずつまとまっていくもの。どうも頭のなかで考えすぎるより、なんでもいいから手を動かしていたほうがひらめきやすいようです。おかげで、原稿は7割程度仕上がり、順調に進んでいます。うれしいことです。

明日はクリスマス・イヴですね。明日は晴れて、夜空の星が見られますように。

さくら市ミュージアム「青木義雄と内村鑑三」展を観る

2018-12-22 21:14:09 | 展覧会感想
今日も冬晴れ、日中は暖かくてコートもいらないほどでした。感覚として、今年の冬は暖かい日が多いような気がしています。暖冬なのかもしれませんね。

最近、内村鑑三の『代表的日本人』を読んでいたこともあり、先日、遠出をして、栃木県さくら市のさくら市ミュージアムで開催している「青木義雄と内村鑑三」展を見て来ました。青木は明治初年生まれの地元さくら市の事業者で、若いときに内村の講演を聞いたことで私淑するようになり、以後、内村と沢山の手紙のやり取りをして親交を温めたほか、彼を栃木県に案内したり、自分の子供の名前の名付け親になってもらうなど、青木にとって内村の存在はなくてはならないもののようになっていったようです。

青木は内村を通して、キリスト教を信仰するようになったよう。展示会場には、青木が所蔵していた聖書がありましたが、使い込まれていて、赤線がものすごく引いてありました。ビジネスをするうえでの心の弱みを、キリスト教や内村に支えてもらっていたのでしょう。以前、NHKドラマに「ハゲタカ」というのがあって、IT企業のトップは毎日不安でたまらなくてオフィスに神棚を設けるケースが多いという場面があったかと記憶していますが、ビジネスでトップに立つ人は必要以上にプレッシャーを感じ、心がくじけそうになることも多々あるのかもしれません。

展覧会では、消費的人間ではなく製作的人間になれ、という熱い内村のメッセージなどもあり、青木との交流を通して、人間、内村鑑三を理解する助けになるような内容でした。自分が読んでいる本とリンクして、展覧会を観ると理解度が全く違います。予習、という、大げさなものでなくても、少しだけでも知識を身につけてから展覧会に行くとさらに深く楽しめるかもしれませんね。