学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

公募展+アルファ

2018-06-12 19:20:56 | その他
昨日、ブログで美術団体の公募展の若手作家離れのことについて書いたのだけれど、そのあと、自分だったらどんなことをやって若手作家を呼び込むだろうか、と一寸考えていました。

もし私が美術団体に所属していたら…公募展の仕組み自体を改革するのではなく、美術団体として新しいチャレンジをする。それには、地域で広まっているアートフェスティバルを利用しない手はないかなと。いま、市町村はどこも地方創生の課題をクリアするのに四苦八苦している状態。そこと美術団体がうまく結びつかないでしょうか。

例えば、市町村ならどこでもいいというわけではもちろんなく、美術団体結成の中心となった作家の故郷に絞る。そこの市町村と組んで、アートフェスティバルを開催するのです。アートフェスティバルには実行委員会が必要だけれど、もう母体となる美術団体はあるわけだから、そこに地元の人にも入ってもらえば時間はかからずに結成できる。あとは旧校舎、街中の空き店舗などを利用して、美術団体の作品を展示し、地元の人たちとも協力しながら進めていけばいい。ノウハウは他のアートフェスティバルから学べますし。

また、美術団体は、地域で販売している物産のパッケージを手がけたり、街中を美的な空間に変えるためのアドバイザーとして活躍してもいいでしょう。市町村のまちづくりに美術団体が加われば、どれだけ魅力的な街に生まれ変わるのか、想像するだけで楽しいですね。もちろん、地元の人たちの理解がないと進まないでしょうが、このような協力関係があってもいいのかな、と妄想してみます。

こんな活動をしている美術団体の公募展なら、若手作家は来る…かな? 公募展+アルファの部分で、どんな価値をつけるのかが大切なのかもしれません。そもそもいずれの美術団体もが、既存の美術の概念を打ち破ろうと熱い想いで結成されたはず。であれば、活動においても、これまでの常識を打ち破る美術団体が出てもいいのかなあ、と考えてみました。深い現状も知らずに、言いたい放題を書いてしまいましたが、私の妄想ですので、一笑に付して下さいませ…。

美術団体による公募展

2018-06-11 12:09:47 | その他
私の地元には美術団体があって、毎年公募展を開催しています。私も展覧会を見に行くのですが、主催者の方に話を伺うと、高齢化が進み、若手作家が入会してこないことが悩みになっているようでした。少子化の影響が出ているのかな、と思っていたのですが、どうもそれだけではなさそう。

6月9日の日経新聞朝刊文化欄に「公募展変われるか 若手離れに危機感」との特集記事がありました。それを読むと、地方の美術団体というよりも、日本全体の美術団体で若手離れが進んでいるとのこと。

美術団体に所属し、公募展に出品するメリットは、自分の作品の客観的な評価が得られ、さらに作品が受賞となれば作家としてのハクがつく。また、団体を通して、様々な作家と交流が結べ、その中から創作活動の何らかの示唆を受けることもあるでしょう。

しかし、今の若手作家はもはやそうしたことはメリットとして感じなくなっているよう。記事にもあるように「お金を出してまで公募展に出品するメリットが分からない」の一言に尽きるのかもしれない。つまりは、評価をして欲しいのは作家からではなく、自分の作品を買ってくださる一般のお客様であろうし、作家との交流もSNSでできる。さらに美術団体に所属すれば、立場や評価が上がるにつれて会費は高くなり、責任も重くなる。そうしたものを背負うよりも、自分の自由に創作活動を展開していったほうがいいだろうと。

どちらの選択がいいのかは一概には言えないけれど、美術団体による公募展が岐路に立っていることは間違いなさそうです。美術団体も様々な取り組みを実施しているようですが、今後どうなっていくのか、気になるところです。

レイモン・サヴィニャック

2018-06-05 20:54:47 | 展覧会感想
20世紀を代表するデザイナーにレイモン・サヴィニャックがいます。フランスに生まれ、主にポスターの世界で一世を風靡した作家です。

現在、栃木県の宇都宮美術館で、彼の展覧会が開催されているので見てきました。今から9年ほど前、たまたま岩手県立美術館へ行ったときにサヴィニャック展が開催されていて、それを見てから大のお気に入りの作家になりました。サヴィニャックのまとまった展覧会を見るのはそれ以来なので、とても楽しみ!

サヴィニャックのポスターの特徴は、まず手書きが基本であること。そして、企業名やその企業がどんな製品を提供しているのかが明快であること。そして造形も色もシンプルであること。主にフランスの企業のポスターを手がけていますが、展覧会では、日本のサントリーや森永、豊島園のポスターも展示されていました。日本ともゆかりがあったんですね。

また、展覧会で嬉しいのは、ポスターの原画も展示されていること。サヴィニャックの原画が印刷されるとどう変わるのか、比較して楽しむこともできます。サヴィニャックは当然、自分の絵が印刷されることを前提で作っていますから、印刷の刷り上がりをイメージして作品を作ったことは間違いないのでしょう。比較すると…不思議なことに原画よりも印刷されたポスターのほうが、色、輪郭線などのバランスが取れて、さらに原画の粗さが消えてくっきりしていい。サヴィニャックの計算がズバリ当たっているということなのですね。

展覧会は6月17日までだそう。ぜひ、オススメの展覧会です。

自由ノートをつくる

2018-06-04 20:54:40 | その他
私が日課としているもの。それは日の終わりにノートへ自由なことを書き込むこと。今日あった出来事、良かったこと、悪かったこと、今考えていること、今後やってみたいことなどノート(スケッチブック)に自由に書く。スケッチブックだから、色ペンも使えるし、場合によってはイラストも描いたりする。こうすることで、自分の思考が視覚的にわかり、ノートに書き出して行くことで整理されていくような気がしています。忘備録にもなりますしね。

小学生の頃、教科書を忘れても、決して忘れなかったのが自由帳。自分の好きなことをどんどん書いて楽しみました。中学生になり、勉強だの、部活だので、自由帳とはさようなら。以来、自由帳の存在すら、忘れていました。今年になって、ちょっと人生がつまらないな、って感じた時に、子供の頃をひたすら思い出す時間をとりました。子供の楽しかった思い出を箇条書きにしていく。もう忘れていた思い出がどんどん出てきて、楽しくなってきました。そのときに思い出した1つが自由帳だったわけです。

もしかして大人になっても自由帳は楽しめるかも!と思い自由ノートをつけ始めた次第です。過去は振り返らない、とよく自己啓発本には書いてありますが、必ずしもそれがいいとは限らない。自由ノートのおかげなのか、近頃なんとなく調子もいい(笑)現状を打破をするには、過去を振り返ることも大切なのかも、と思うわけなのでした。

文学館の展示

2018-06-01 20:58:42 | その他
私は近代の詩人萩原朔太郎が好きで、ときどき詩集を本棚から取り出しては音読して楽しんでいます。以前は、毎朝萩原の詩を暗唱してから仕事に出勤していた時期もありましたが、さすがに今はそこまではやらない(笑)

さて、萩原の故郷群馬県前橋市に前橋文学館があって、彼の作品や資料を見ることができます。私のお気に入りの文学館で、よく行くところでもあります。その文学館の常設展がリニューアルしたとの記事が、今朝の日経新聞に出ていました。なんでも大型の書棚を設けて萩原の研究書を楽しめるようになったり、萩原作品の朗読をタブレットで聴けるようになったとのこと。

一般的に文学館の展示はかなり工夫が必要、と知り合いで別の文学館に勤務する学芸員から話を聞いたことがありました。博物館や美術館と違ってみて楽しむ、というより、読んで楽しむものだから、作家の本を読んでいない人がわかるようにするにはどうしたらいいのか頭を悩ませるのだそう。そうした意味では、前橋文学館の改革は読み、そして聴くのポイントを押さえていて面白い試みではないかとは思います。

今度ぜひリニューアルした前橋文学館に行ってみたいですね!!